プロローグ
短編になるんじゃないかなと。
おっぱいは世界を救うんだぞ!
そう言われたのは、5月のゴールデンウィークが終わった頃だっただろうか。
僕の名前は、多田正。
僕は大学を無事に卒業した。
しかし、就活は上手くいかなかったんだ。
やりたい事がない、とまでは言わないけど、できる事が多いとは思わない。
そんな僕には積極的に就活する気力もなく、ただ就活用のパンフレットや、会社説明会の紙を机の上に積み上げるだけの生活で大学四年目を終えた。
その結果、5月のゴールデンウィークを無下に過ごし、ダラダラと実家で過ごす日々だった。
大学卒業と同時に四年間アルバイトしていた居酒屋も辞め、学生ニートから、ホンモノニートへと進化した僕だが、さすがに親にどなされゴールデンウィーク最終日に就職活動するようにと、家の外に出されてしまった。
近くのコンビニで時間を潰すにも、今は5月の真っ昼間。今年も猛暑が続くとかで、すでに5月からとてつもなく暑い。
コンビニまで行くにも、行く気力もない。
ここは田舎とも言えないが、田舎ではないと言い切れないくらいの町だ。
コンビニなど徒歩で15分圏内にすらない。30分も歩けば1個はあるかな。
歩いて行くには暑すぎた。
梅雨など来ないのではないか、そう思えるほど空は快晴。しかし、僕の心は曇天。
それでも、まだカラッと暑いこの時期は過ごしやすい。この日差しがなければ、だが。
仕方ないと、徒歩5分くらいの近所に住む父親の弟、ケンおじさんの家へと向かう。
ケンおじさんは昔からよく遊んでくれた。
僕の父親とは10歳も離れてる上、 僕は割と早くに生まれた。父親が26歳の時の子供だからだ。
その時、ケンおじさんは高校生。
まさに親戚のおじさんという立ち位置を生かし、僕を色々な遊び場に連れて行ってくれたし、様々なイタズラを教えてくれた。
今ではアラフォーのちゃらんぽらんなおじさんになってしまったが、未だに面倒見はいい。
そんなおじさんなら、今のこの僕を太陽から守ってくれるくらいの事はしてくれるだろう。
しかし、ケンおじさんの回答は意外なものだった。
「おい、たっちゃん聞いたぞ?お母さん困らせてるらしいな。だが、安心しろ。新しいバイト先ならすぐ紹介出来るぞ?」
そう言うと、家の中には入れてくれず、外へ連れ出される。暑い、暑すぎるんだ、やめてくれ
。
「ケンおじさん、バイトってどんなところ?」
今やアルバイトなんてやらされる事はどこでも似たようなもんだ。時給が良くないとやる意味もない。
「そうだな、レジしてるだけで時給2000円ってとこかな」
「なにそれ、地獄のように人くるアルバイトとかじゃないの?」
「そうでもないんじゃないか? なにせ、あの駅前にある店だしな、最近長年勤めてた人が辞めて人が見つからないんだってよ。お願いできないか、たっちゃん」
こんな微妙な田舎だとも田舎じゃないとも言えない町の駅だ。そこまで大量の人なんか来ないだろう。
「マジで? なら就職するまでの繋ぎでもいいならやりたいな」
「その言葉を待ってた! はい、これその店の行き方と目印の地図な。明日伺いますって伝えとくわ。おじさんのお友達だからな」
ヒャッホーと叫びながら、無理やり握らせた紙を残し、嵐のように去って行った。
去り際に、やけにニヤニヤしてたので嫌な予感がする。
「ハメられたか? もしかしなくても」
その言葉は予言となり、次の日に降りかかる事になるのだった。
次の日、指定されたお店へ行くと。
それは、アダルトショップ、だった。
「ケンおじさん、僕はあなたを恨みます」
アダルトショップの前で立ち尽くすしかなくなってしまった。
読んでいただきありがとうございます。