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TWINS  作者: 夢愛*
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始まり

双子の成長を楽しんでくだされば幸いです。

「誠ー!早くしないと遅れちゃうよー!」


双子の妹、悠が玄関口で叫ぶ。


焦る様子もなく髪の毛の寝癖らしきものをつつきながら現れた双子の兄、誠は、優しげな笑みでそれを制した。


「大丈夫だよ。今日は早めに悠を起こしたし、僕たちが通う高校の始業時間は中学より15分遅い8時45分だから。焦らなくても平気」


そう言いながら靴を履く誠。


「高校楽しみー!未羽とも同じ高校だし、同じクラスとかだったらどうしよー!」


「斉藤さんも芸能科でしょ。同じクラスだよ」


「あ、そっか」


この双子は、神田誠(かんだまこと)神田悠(かんだはるか)といい、7歳のときに大手芸能プロダクションであるオーディンプロダクションからスカウトを受け、子役として芸能界に入った。


ほどなくして、同じ外画映画の吹き替えでレギュラーを担当し、その映画が今も尚続く人気作品のため、声優としての仕事が増えた。


悠が言った『未羽』とは、同じくオーディンプロダクションで人気のアイドル女優をしている斉藤未羽(さいとうみはね)である。


同い年でよく事務所で会うことから、大親友となり、悠とはユニット『Tiara』を組んでいる。


「光代も同じ芸能科だから、仲良し4人組が同じクラスになるな」


そう言って笑う誠は、どこまでも爽やかで、声優ながらに手広く雑誌に載るのも頷ける。


「誠…相変わらず爽やか…!」


「ありがと、悠」


そう言って誠は悠の頭をポンポンと撫でる。


この双子はシスコンにブラコンだ。


まぁ、仲良し、と表現したほうがいいのかもしれないが。


近所に芸能科のある高校があり、迷わずその高校への進学を選んだふたりは、無事にその高校に合格し、今日入学するというところなのだ。


温厚で爽やかな兄の誠に対し、元気で明るい悠は、アンバランス加減も人気で、事務所から双子のユニットでデビューしないか、という話も出ているくらいだ。


電車も使わず、徒歩で向かえるその高校の名前は高城学園といい、普通科と芸能科に別れている。


先程、誠が言った『光代』とは、同じくオーディンプロダクションで人気俳優と歌手を兼ねてやっている東光代(あずまこうだい)という人物である。


誠の親友だが爽やかではなく、所謂今時の高校生らしく明るくはしゃぐことが大好きな男の子である。勉強が苦手で、芸能科の入試がなければ高校進学も危うかったと本人は言う。


誠とは「ギャラリー」というユニットを組んでいる。


『高城学園』という文字が見えてきたところで、悠が誠の隣を離れて走り出した。


誠の視界にも、斉藤未羽の姿は入っていたため、妹を追うことはしなかった。


「未羽ー!おはようー!」


「悠ー!おはよう!」


元気なコンビのため、声は周囲に筒抜けだ。


だがそんなことはいつものことだ。


と、遠くから眺めていると、突然膝カックンを食らって倒れそうになる誠。


振り向けば、いたずらそうに笑う光代がいた。


「光代。おはよう」


「おっはよー!誠!」


男女それぞれに別れて校内に入り、とりあえず無意味なクラス分けを確認してから教室に入る。


あまりテレビで見かけるような大物はいないようだった。


逆にオーディンプロダクションの人気者が揃っているものだから、遠巻きにこそこそと言われ、目立っているような4人。


同じ芸能科でなぜこのような扱いを…と誠は頭を痛めた。


他の3人は、悪く言えば単細胞のため、特に気にしている様子もなく、3人の性格が羨ましくなった。





「悠!今日誠と遊びに行くんだけどさ、悠も混ざんね?」


先程、この悠の双子の兄であり俺の親友でもある誠と遊ぶ約束を取り付けた俺は、中学時代から片想いを続けている悠に声をかけた。


正直、心臓はバクバクだ。


「え?誠も来るの?」


不思議そうな表情でそう聞かれ、「あぁ。さっき約束した」と言ったら、「野球部の見学したいって言ってたけどなぁ…。ま、いっか。未羽、どうする?」と返ってきた。


悠は未羽と約束している様子だ。


「私は構わないよ。誠くんいるならラッキーかも」


「未羽はほんとに誠好きだね」


そう。未羽は誠に片想い中だ。


未羽も俺が悠に片想いしていることは知っているはずだ。


そんな話をしたことがないけれど。


「じゃあどこ行くか決めとくわー」


「わかった」


そう言ってにっこりと笑う悠が可愛くて、胸がキュンとした。


入学式のこの日、4人とも仕事が入っておらず、揃って遊べるなんて楽しみで仕方ない。


「まーこと!どこ行くよ?」


誠の席に来てそう聞くと、「悠と斉藤さんも来るって?」と問われた。


「おう。ふたりとも来るらしいぜ」


「珍しく4人で遊べるのか…。近所だしうちはどう?」


誠の申し出に、悠の部屋を連想してしまった。


いや、入ったことなんてないんだけど。


「いいのか?」


「親が会いたがってるんだよ。光代と斉藤さんに。ユニット組んで仕事してるだろ?だから気になってるみたいで」


「へぇ~…。いいな、誠ん家!つーか悠ん家!?」


「ほんとはそこが気になるだけだろ」


そう言って柔らかく笑う誠。


「いいじゃねぇか」


拗ねて言うと、「機嫌直せよ。悠の中学卒業記念写真集あげるから」と言って、バッグから『神田悠 中学卒業記念写真集』と書かれた冊子が出てきた。


「発売するのは知ってたけど…買う気だったわ!サンキュー!」


そう言って兄貴から写真集をもらう辺り、俺は悠が好きすぎるんだと思うんだ。


巻頭と悠の笑顔が可愛くて写真集を抱きしめる。


「光代、悠を汚すのはやめてくれないか」


怒気を含んだ声で誠が言ったのがわかり、「わりぃわりぃ」と苦笑いを返した。





東くんの提案で4人で遊ぶことになった私たちは、悠と誠くんの家にお邪魔していた。


お母様にごあいさつしたのは、実は初めてだったり…。


誠くんの部屋で悠と東くんが話しているのを遠くに聞く。


私今、誠くんの部屋にいるんですけど…!


《ガチャ》


「悠、お茶運ぶの手伝ってくれるかな?」


扉が開く音がしてそちらを見ると、誠くんが困った表情で悠にそう言った。


「はいはい」


そう言って悠は席を立つ。


部屋から出て行ってしまった双子に、残された客である私と東くん。


「未羽はさ、誠のこと好きだよな?」


「えっ!?なんで知ってるの!?」


悠にはともかく、東くんにはそんな話をしたことがない。


それなのに…どうして!?


「見てりゃわかるから。俺は悠が好きだけど」


そうサラッと言う東くんは、ドラマで見るような顔をしていて驚いた。


はしゃぐのが好きで、仕事から離れるとバカ騒ぎを起こすこの人が、真剣に悠への想いを打ち明けてくれたからだ。


「それは知ってたよ」


そう言って笑うと、「笑うな!」と顔を真っ赤に染めて怒鳴ってきた。


《ガチャ》


「お菓子と紅茶だよ~」


「待たせてごめんな」


そう言いながら、悠がお菓子の入ったバスケットを、誠くんが紅茶が乗ったお盆を持って入ってきた。


「待たせちゃったね」


そう言いながらバスケットを誠くんの部屋に置いてある綺麗なインテリア風のテーブルに置く。


それに続いて、黙って紅茶の乗ったお盆をそこに置いて、「よいしょ」と言いながら東くんと悠の隣に座る誠くん。


パッと目が合って、思わず逸らしてしまった。


「明日からもう仕事入ってるやつ手ぇ上げろー」


やる気のなさそうに東くんがそう言ったため、素直に手を上げると、4人とも手を上げていた。


「何の仕事?」


東くんが悠に聞く。


「明日はアニメ収録1本と雑誌の取材1本」


「誠は?」


「え?僕はギャラリーの取材だけだよ?忘れたの?」


そう言われて、鞄の中をガサゴソと漁り、手帳を広げて「あー!このギャラリーの仕事な!明日だったかぁー!」と頭をボリボリとかきむしりながら騒ぐ東くん。


「さすが光代、忘れてたんだね…。相方が誠でよかったねぇ…」


「こんな相方とユニットやってると"しっかりしなきゃ"って気になるよね」


と、誠くんが遠い目をしてそう言った。


「その他の仕事はないの?」


「バラエティーが1本入ってる」


「へぇ…。未羽は?」


「私はレコーディングが入ってるよ」


「そっかぁ」


私はアイドルで女優だから、曲も出していて、明日は新曲のレコーディングなのだ。


歌の練習しなきゃだ。


「まぁ高校は芸能科だし、授業中に仕事で抜けてもOKだから中学より楽だよね」


誠くんが言う。


「私ね!お仕事大好きだからそれ嬉しいよ、誠!」


満面の笑みで言う悠。


悠に裏表はない。


常に表だけだ。


だから私たちは仲良しでいられるのかもしれない。


「そっか。知ってるよ」


そう言って、爽やかな柔らかい笑顔で悠の頭をポンポンと撫でる誠くんの手は大きくて、とても自然だった。


悠に嫉妬、なんて恥ずかしいけど、けっこうしちゃったり…してます。




夕方、全員に社長から連絡が入り、オーディンプロダクションに向かうこととなった。


僕はよく爽やかだとか言われるけれど、悠のことになると別人になるんだってことは自覚がある。


親友の光代が悠に恋愛感情を持っていると知ったときは少しショックだったけれど、今は応援している。


悠はまだ光代の気持ちに気づいていないようだけれど、光代なら悠を絶対に幸せにしてくれる。


そう信じてる。


「公式プロフィール更新って…なんで前日とかに言っておいてくれないのかなぁ…」


ぼやく悠を小突く光代。


それを見て笑う斉藤さん。


僕らは仲良し4人組だ。


小学生の頃から変わらない。



オーディンプロダクションに到着し、身長を測り直す。


僕たちが子役から俳優に上がった段階でのプロフィール変更なのだろう。


中学生までは『子役』という括りでも変ではなかったが、高校生にもなれば『子役』ではないだろう。




神田誠(かんだまこと)

声優、俳優、歌手

ユニット"ギャラリー"

身長:185cm


神田悠(かんだはるか)

声優、女優、歌手

ユニット"Tiara"

身長:152cm』


東光代(あずまこうだい)

俳優、歌手

ユニット"ギャラリー"

身長:178cm』


斉藤未羽(さいとうみはね)

アイドル、女優

ユニット"Tiara"

身長:152cm』




このように新規プロフィールが完成した。


「未羽、身長一緒ー!」


「だねぇ」


そう言って手を取り合ってぴょんぴん飛んでいる妹とその親友を見て、思わず頬が綻ぶ。


「相変わらず背ぇ高いなぁ、誠」


そう光代に声をかけられて、「光代だって平均よりはずいぶん高いよ」と返すと、「自慢かぁ!?」と叫ばれたが流した。


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