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プロローグ 入学
ーー神秘十字線を持つ者は生命の危機に晒されると神に護られるーー
入学したての春彦は、窓際の席から外を眺めた。
桜が咲き誇る、春。
4階から見える景色はそこそこのものだなと感じていた。
……もう、中学の時のように陰口を叩かれることもない、よね。
近くでペンが落ちる音が聞こえた。
机の下に潜ったペンを拾い上げ持ち主に返す。
傍から見れば一般の高校生と変わりない。
改めて春彦は窓の外に目をやった。
空は見渡す限り、青。
……でも、この体質はこの3年間じゃ、治らなさそうだな。
そう思って春彦は深いため息をついた。
この時、春彦はこの先に起こる出来事なんて考えてもいなかった。