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「で?これなんなんだよ?」
「押してみて!」
手に持ったそれをじっくり観察するが、どう見ても電気のスイッチだ。しかも最近のパネルタイプじゃなくて、学校のトイレとかの。こんなんが地球征服に繋がると思えないが、スイッチを押すことの抗いがたさはなんなのだろうか。
とはいえこいつのことだから、こんなに薄くても急に何かが飛びでる仕組みとかにしているかもしれない。注意して、気を抜かないようにしないと。
スイッチから目を逸らさないまま、ゆっくりと飛び出てる方を押す。
カチッ。
とっさに身構えるものの、何の変化も起こらない。
「…おい、押してもなんも起きねえじゃねーか」
時間差か?とまだ警戒はしつつ、友人の方を見る。
が、さっきまでいた場所にはいない。
きょろきょろと辺りを見回して、結構遠くにいるのを発見した。そして、あいつが何をさせたかったかに思い至った。
あいつはビデオカメラを構えて笑っていた。
つまり、何も起こらないスイッチを押してビビる俺を撮りたかったのだろう。
若干というか結構いらっとしながら近づく。
友人はまだ笑いながら構えていたビデオを降ろして、満面の笑みで「最高だったよ!」と言いやがった。
なんだこいつ殺してえ。
けれど無言で振り上げた右手は、行き場を失った。
「――というのは冗談だよ。爆破実行者君」
笑顔のまま、そいつが信じがたい言葉を放ったからだった。