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4.

「まさかのことですが、以前お渡しした羊皮紙をなくされた、などということではありませんよね?」

「………… てへぺろ」

すると、アルドは更にげんなりとした様子で深いため息をつく。

「お言葉の意味は分かりませんが、つまりはなくされたのですね」

「………… ごめん、どうしよう」

あの魔法陣の複雑な模様を正確に思い出すなど不可能に近い。あれ描くのに何時間かかったと思ってる。

「申し訳ありませんが王宮にアヤネ様の魔法陣の記録は残っていないでしょう」

「何で?」

すると、アルドはまたため息をつく。

うん、面倒なのは分かるけどそう頻繁につかなくたっていいんじゃないかな。うん!

そこからの話が長かったので、簡潔にまとめてみると。

魔王が倒されてから数ヶ月たったある日、魔法とか錬金術を管理する“魔法塔”と呼ばれる国の機関から私の魔法陣の記録が盗まれたらしい。魔王を倒す時に来なかったけど(アルドがここを強調してた)一応は初代勇者なので破棄されていなかったようだ。侵入者の痕跡は跡形もなく、追跡は諦められたらしい。どうせ来ることもないだろう、と高をくくっていたらしいけど、来ちゃったねー。さっきまで魔王倒す気満々だったからねー。


「つまり、私は帰れないと」

「残念ながら」

その笑みには、帰ってもらえなくて残念って意味もあるよなあ!?

「魔法陣の復元は早急に致します。ですが、勇者様であったアヤネ様の魔法陣は普通のとは違い、簡単にそちらの世界から召喚出来ないような複雑なものになっておりますので…… 1日2日では無理でしょう。早くて数ヶ月、遅くて1年といったところでしょうか」

アルドから聞いた絶望的な数字に思わずしゃがみ込んで頭を抱える。元々は私が悪かったといえ、それはないと言いたい。

「1年って…… 私17歳じゃん、高校2年生だよ…… 日本でどう説明すれば良いのよ」

「ご心配には及びません。例えこちらで1年立ったとしても、そちらの世界でアヤネ様が旅立ったすぐ後にも戻ることは出来ます」

時間指定が出来るのか。じゃあ、いっそのこと6歳に戻ってレグランドに召喚されないようにしたい。いや、でも身体は16歳の時のままなのか? それとも身体は6歳で頭脳は16歳なのか? やだ何それ、どこかの少年名探偵みたいでかっこいい。


「じゃあ、魔法陣が復元されるまで私はどうしたら良いの?」

もしかしたら、王様とか貴族側室になれとか言われちゃうんだろうか。美少女が異世界トリップした理由の王道だよね。

「美少女だから王様の側室とか__」

「ご自分で美少女など仰らないで下さい。残念ですがそれはありませんね。王がお気に召さない限り、身元不確かな少女を側室になど出来るわけがないでしょう。初代勇者様とはいえ」

「冗談だからマジレスしないでよぉ!」

アルドの真剣な切り返しに思わず涙目である。


「詳細なことが決まり次第は連絡致しますが、おそらくオテュール家の屋敷に滞在していただくことになるでしょう」

アルドが疲れた様子で言うが、何ですかそれ。一応貴族であろうアルドの屋敷って、内縁の妻みたいな? 愛妾みたいな? 容姿だけはいいけど性格的な面で恨んでますのでお断りですよ?

「本邸は人が多いのでアヤネ様も居ずらいでしょうし、王都にあるオテュール家の別邸を使って戴きます。使用人もごく少数に抑えますのでご安心を」

いやまあ、国のピンチに駆けつけなかった勇者だから面子が丸つぶれだし、変な視線を送られるのは当たり前だから、人は少ない方が良いんだけどさあ……!

その笑顔は、当にイライラしますね、ええ。

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