プロローグ?
「はぁ……」
解らない。
どうして日本人である俺が英語の単語を学ばねばならないのか。
現在英単語の小テスト中なのである。
俺の名前は「百瀬 将」英語が大嫌いだが、おおよそ「理科」と呼べるものなら模試で全国トップクラスに入れるくらい出来る(数学嫌いだけど)。
おかげで偏差値60越えの都立に入れた。
なぜ理科がそんなに出来るかは後で説明しよう。
部活は小学生のころからやっている剣道部に入っている。
只今高校一年の6月頃。
これから暑くなっていくだろうと言うこの時期に未だに慣れないブレザーを着込んで目の前のA4サイズのプリントをぼーっと眺める。
当然英語が苦手な俺が解答している訳なので空欄ばかりだ。
すると突耳元で幼い女の子の声がする。
「(2)ばんの答はじゅうようなだよ」
当然空耳などではない。
「いつも言ってるけどそれは悪いことなんだぞ。」
と小声で返す。
まぁ知ってしまったなら仕方がない。
(2)は…「重要」っと。
「結局しょうもかんにんぐしてるじゃん。」
「不可抗力だ」
はたから見れば一人でぶつぶつ言っているおかしな奴に見えるだろう。
だが俺は昔からおかしなものが見える。
別に霊感が強くてお化けが見えるというわけでは無い。
むしろもっと変なものだ。
何を隠そう、なんと俺は妖精が見える。
ちょっとまってくれ
別になにか法に触れるよなお薬を吸っているわけでは無いし、精神疾患を患っているわけでも無い。
俺はいたって健康だ。
保育園に通っていた頃ちょっとした事故があり、それ以来小さな女の子の姿をした妖精(自称)が話かけてくるようになった。
そして初めて見えるようになったのが今も目の前にいる「シー」だ。
自称風の神の姉だそうで、詳しい事はいつも聞きそびれてしまうが昔喧嘩した拍子に
「風の神様の姉貴のくせになんも出来ないんだろ」
とののしったら、
「この世界じゃなきゃ出来るもん」
とか言って泣かせてしまった事がある。
あの時ほど焦った事は無いだろう。
そしてこの一言により俺はこの妖精の正体を暴くために、たくさんの本を読み、インターネットを駆使して調べてみたがどれも空振り(おかげで理科が出来るようになったが)。
結局は謎のままであるのだ。
『き~ん、こ~ん、か~ん、こ~ん』
げっ、ほとんど埋めないででテストが終わっちまった。
まあ時間があっても答えられんがな。
『じゃあ、後ろの人回収してきて』
と先生の声がする。
いつも思うが一番いい席ってのは後ろから二番目だとおもうんだよね。
そしてくじ運もとい、シーの力をもってすれば「これいとやさし」なわけですよ。
…使い方あってたっけ?
「また将は妖精と話してたの?あれはたから見たら変な人だよ。」
揺れる薄茶色のポニーテール。眉の色と同じことから地毛という事がうかがえる。
彼女は幼馴染の「柚子島亜衣」だ。
同じ剣道部に所属している。
全体的にスレンダーで肌の色は眩いばかりの白。身長は170㎝と女子にしては高身長。
しかも整った顔立ち…
毎日こうして顔を合わせることができると思うと、お勉強のできる彼女と同じ高校に行きたいがために真日頑張ってお勉強した甲斐がある。
そして彼女と同じ学校に通おうと思ったのにはもう一つ理由がある。
実は彼女も妖精が見えるらしいのだ。
理由はおそらく保育園の時のあの事故が原因だろう。
さらに驚くことに彼女にも妖精が引っ付いていて名前は『甕速日神』と言い、言いにくいから『みっくん』と呼んでいる。
ちなみに調べてみたら日本の火の神様だったりする。すごい臆病だけど。
シーもみっくんも不思議な生き物だ。
そんなわけで唯一の理解者である亜衣と同じ学校に通えたのは、ラッキーだった。
そういえば言いたいことがあったんだ。
「所で今日の部活休んで予備の竹刀買いに行きたいんだけど」
「どうして?大会はまだ先でしょ?」
「昨日の稽古の途中で割れたんだよ」
「ふ~んなら私も行く。」
「別にかまわないけどなんも面白くないよ」
「わかってるよ。それくらい」
竹刀を買いに行く。
まさか何気ない日常に終止符を打つ事になるとは…
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