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スローライフを謳歌したい④

「……ローゼンさん?」

「おっ。おまえら、何でここに?」


冒険者のローゼンさんが、屋台の近くにある椅子に腰を掛けて座っていた。


「ローゼンさんこそ、どうして……?」

「なあに。この近くに依頼で受けた、瘴気に犯された森があるんだよ」


俺の疑問に、ローゼンさんは苦笑して言う。


「おまえらこそ、どうしてここに?」

「それは……」


ローゼンさんの問いかけに、俺は言葉を詰まらせる。

グランジ家の当主、スタン様の付き添いで来た。

もっと言えば、ダナー商会の行方を突き止めるための助力になるために来たのだが、さすがにそこまで口にするのはまずいかもしれない。


「もしかして、言いにくいことか?」


顔に出てしまっていたのだろう。

ローゼンさんに呆気なく、見抜かれてしまっていた。


「……その、詳しくは話せないのですが、リンクス領には、グランジ公爵家の当主様の依頼を受けてやって来たんです」

「公爵家の当主様の依頼を受けてか。……なるほどな。確かに、それは来た理由を言いにくいだろうな」


合点がいったとばかりに、ローゼンさんが頷いていた。


「演奏の依頼か?」

「はい。ただ、その過程の途中でお休みをいただいたので、街でのんびりしようと思ったんです」


俺の説明に、ローゼンさんは空に目を向けて、考え込む仕草をする。


「グランジ公爵家の当主様か。『瘴気に犯された森を救ってほしい』。確か今回、ギルドに依頼をしたリンクス領の領主様とは懇意の間柄だったはずだ。もしかして、その経由で来たのか?」

「…………っ」


図星を突かれて、俺は言い淀む。

やっぱり、ローゼンさんは鋭いし、様々な情報に精通している。

迂闊なことを口走ると、俺の力のことを勘づかれてしまうかもしれない。


「あ、その……」


俺が必死に誤魔化そうとしていると、ローゼンさんは何か事情があるのだと悟ってくれたみたいだ。


「まあ、心配すんなよ。オレたちも似たような理由でここにいる。森の調査が本格的に始まるまでの間、お休みをいただいたから、街でゆったりしているんだ」


ローゼンさんはそう言って破顔する。


「おまえらの演奏、良かったもんな。また、聞かせてくれよ」


ローゼンさんはさも当たり前のように言う。


「はい」

「ありがとうございます」


俺と母さんは顔を見合わせて、安堵とともに喜びを分かち合う。

広場の中心で一礼すると、周囲の人たちが何事かと興味深そうに俺たちに視線を向けてきた。

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