スローライフを謳歌したい③
「明日は、これまでの調査内容を纏めるつもりだ」
そう前置きして、スタン様はとつとつと語る。
「それが終わり次第、森の調査を開始しようと思っている。君たちはそれまで、ゆっくり休んでくれ。たまには、息抜きも必要だろう」
「ありがとうございます」
スタン様の言葉に、俺と母さんは表情を綻ばせる。
調査内容が纏まるまではお休みか。
とにかく、明日は街に繰り出して、のんびりしよう。
そして、瘴気をすべて祓うために、人目のない場所で浄化魔法を使おう。
俺は強く、決意を固めるのだった。
リンクス領の領都は、多くの人たちが行き交う地であった。
市場には様々な色とりどりの野菜、果物、肉や魚が売られている。
さらに珍しい品揃えのお店や屋台なんかもあったりして、屋台周辺では香ばしい匂いが漂っていた。
「いろいろなものがあるな」
物珍しさから、俺は目を輝かせて周囲に視線を向ける。
食材はとても豊富で、珍しい品物も売っていて面白い。
お店には、いろいろなものが置いてあり、少しだけだが貴重な品物も置いているみたいだ。
お値段も、他のものより高いので、嗜好品扱いなのかもしれない。
領都は王都と変わらないほど、活気に溢れていて、多くの人たちで賑わっていた。
「いいな、これ!」
「ライル」
そんな賑わいの中を歩き、興味深い品物が売っているお店を覗いていたら、母さんから声をかけられた。
前から歩いてきた人にぶつかりそうになっていたらしい。
「それにしても、ほんとに賑やかね。街の広場で、演奏会をするのも良さそう」
「母さん。街を訪れると、いつもそう言って、小さな演奏会をするよな」
俺の言葉に、母さんは怪訝そうな顔を浮かべたが、そう的外れではないと思う。
街で楽しむこと。
いくつか選択肢はあったけれど、俺たちの場合、音楽が常に有力候補となっていた。
「ライルも、街の広場で演奏会をしたいと話していたでしょう」
言われて見れば、確かにそうだ。
リンクス領に着く前、馬車の中で母さんと一緒に演奏会の話をしていた気がする。
グランジ家の人たちや騎士さんたちは、俺たちの演奏を楽しんでくれた。
あの時と同じように、領都の人たちも俺たちの演奏を楽しんでくれたらいいな。
そう思っていたら、いつの間にか、街の広場にたどり着いた。
周りを見渡すと、多くの人たちが広場を訪れている。
その中には、俺たちと同じように芸をする人たちもいて賑わっていた。
そして、様々な屋台もあり――。
「あれ……?」
そこには偶然にも知った顔がいた。




