新たな地へ⑥
「やっぱり、この街にも、冒険者ギルドがあるからなのかな」
そんなことを考えていると、お城の入り口に到着したようだ。
俺たちの乗った馬車が停止した。
俺は深呼吸をして、これからの行程に気合いを入れる。
ダナー商会の足跡を求めて。
ここからは、慎重に事を運ばなくてはいけない。
馬車から降りると、お城の玄関前には使用人の人たちが並び、その中心に上品な衣装を着た男性が立っているのが見えた。
あの人が領主様だろうか?
そう考えている間にも、スタン様は既に男性と挨拶を交わしていた。
母さんに先導され、俺はその人の前まで進み出る。
足を止めた母さんの隣に立つと、五十代くらいの男性が口を開いた。
「ようこそ、お越しくださいました。私がこの地を治めております、ヴァイル・リンクスでございます」
「吟遊詩人のアイリス・フェインと申します。しばらくお世話になります」
「息子のライル・フェインです」
母さんの挨拶に相まって、俺はぺこりと頭を下げた。
「長旅でお疲れでしょう。先にお部屋にご案内しますので、諸々の話は少しお休みになられた後にしましょう」
「お気遣い、ありがとうございます」
簡単な挨拶が終わった後は、すぐに部屋に案内してくれることになった。
森の現状については、少し休憩した後に話してくれるらしい。
どうやら、長旅で疲れているだろうからと、気を使ってくれたみたいだ。
侍女さんに案内された部屋は、日当たりの良さそうな、広い部屋だった。
「こちらのお部屋をお使いください」
「ありがとうございます」
俺たちを案内をしてくれた後は、侍女さんはすぐに部屋から退出していった。
忙しなく動き回って、すごく忙しそうだ。
彼女を見送った後、俺は早速、部屋に備え付けられていたソファーに座った。
「はあっ……。緊張した……」
俺はぐったりと背もたれにもたれかかった。
王宮でリリアーナ王女として過ごした時も緊張したけれど、今回はさらに気持ちが引き締まったような気がする。
「これから先、いろいろありそうだけど、とりあえず……」
「一息ついたわね」
俺が言いたかった言葉を、母さんが穏やかに紡いだ。
俺たちの役目は、安全な場所で、みんなを支援すること。
森の調査が始まっても、俺たちはこのまま、この場に残ることになるだろう。
ただ、彼らが森に出発する前に、演奏で支援することになりそうだ。
森の調査が行われている間、俺たちは瘴気を浄化するために、街に繰り出そうと思っている。
まずは、元凶の瘴気を浄化する。
その後、街で行うこと。
いくつか選択肢はあったけれど、俺たちの場合、音楽が常に有力候補となっていた。
幼い頃から聞いていた母さんの歌。
それは俺たち家族を繋ぐ、大切なファクターの一つだったからだ。
街の広場で、演奏会をして。
ルリア様へのお土産を買って。
あとは、ローゼンさんたちのことも気になるし、冒険者ギルドにも足を運ばないとな。




