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新たな地へ⑤

慌しく最後の準備をする冒険者や公爵家の護衛騎士の人たちの雰囲気が、緊張感をはらんでいたからだ。


「ダナー商会が利用していた隠し通路か。何だか、緊張するな」

「そうね」


その緊張感が、俺と母さんにも伝染する。

そんな不安を置いて、スタン様たちは隠し通路の入り口へと入っていく。

隠し通路は広い。

なにしろ、秘匿されていた通路で、しかもダナー商会が秘密裏に利用していた場所だ。

だが、スタン様は準備にぬかりはなかった。

これまでの五年間、この広大な隠し通路について、調べていたらしい。

約一時間の道程を進み、俺たちは街の外に到着した。


「ほんとに街の外に出られた。すごいな……」


あれほど苦労した魔力検査という名の検問。

それが、こうもあっさりとすり抜けられるなんて、思ってもいなかった。

スタン様から聞いた話では、街からリンクス領までは少し距離があるので、馬車で移動するらしい。


「アイリス様、ライル様、お待たせいたしました。馬車の準備ができましたのでこちらへ」


俺たちが乗る予定の馬車のそばには、従者らしい男性が立っていた。

どうやら、この馬車に、俺と母さんが乗るみたいだ。

特別扱いに緊張しつつ、周りを見回すと、そろそろ準備も完了したようで、それぞれ待機している人が多くなってきていた。


「どうぞ」


恭しく礼をする男性に案内され、俺たちは馬車の乗り口まで移動する。

馬車に乗り込むと、思ったよりも広い。

座席にはクッションや毛布が置いてあり、快適に過ごせるように心配りしてもらっていることが窺えた。

腰を下ろすと、やがて、馬車の扉が閉められる。

しばらくして全ての準備が整ったのか、馬車が動き出した。

リンクス領までは約三日、かかるらしい。

しばらく、馬車の中に静かな空気が流れる。

コトコトと地面を蹴る馬の蹄と、車輪の音だけが響いていた。

到着するまでの間、母さんと会話をしつつ、探査サーチの魔法で周囲の状況を調べてみることにした。






道中で、通り道にある街の宿に泊まりながら、リンクス領に着いたのは三日後の夕方頃だった。

馬車の窓から外を見ると、遠くにそびえ立つお城と、お城から麓にかけてある街、そして、それらを取り囲む城壁が見えた。

目的地であるリンクス領の領都だ。


「すごいな……!」

「ええ」


俺と母さんが目に映る景色に感動している間にも、馬車は進む。

既に先触れをしてあったおかげなのか、城門で止められることもなかった。

そのまま、領主様が住むお城まで進むことができた。

通りすがりに見えた街は、どこか落ち着いた雰囲気だった。

近くの森に魔物が出て、主要産業にも影響が出ているはずだ。

だから、暗い雰囲気を想像していたけれど、街の人たちの表情は思っていたよりも明るかった。

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