スローライフを目指して②
世界は幾度となく、危機を迎えていた。
度々、人間として転生し、『天使覚醒』の日に天使の力と記憶を取り戻した上で、世界を蹂躙する脅威の存在。
そして、数多の奇跡を起こし、絶望を与える存在。
茜色の羽の天使、ミカエル。
空色の羽の天使、ザナフェル。
二人が覚醒後、日々、濃くなる瘴気と増加する魔物。
だけど、ネーア王国を始め、主要な都市は俺たち天使の加護による結界によって守られている。
それでも小さな街や農村は時々、瘴気の影響や魔物被害を受けることがあった。
動揺、恐怖、悲鳴に突き動かされて。
沸き立つ熱狂はいつまでもやむことなく、ネーア王国の街中に鳴り響いていた。
そんな渾然一体となった人々の中で、俺たちだけが場違いな行動を取っている。
俺と母さんは人々の間を縫うようにして、ひたすら街の外へと歩みを進めていた。
ようやく人混みを抜けた俺たちは、がらんとした街路に出た。
通りの左右に連なる店は、すべて戸がしまり、人影はほとんどない。
背後の熱狂が、嘘みたいな空虚さだ。
そういえば、母さんはどこに向かっているんだろうか?
街の外に向かえば、門番がいる。
ミカエル兄様のことだ。
既に、伝達が行き届いているだろう。
魔力検査で、ザナフェルの生まれ変わりを見分けようとしてくるはずだ。
俺は、この魔力検査をどうにかして切り抜ける必要がある。
「ステータスオープン」
俺はこっそりとステータスを確認する。
天使の力を取り戻したからか、すべての属性魔法とスキルのレベルがマックスになっていた。
「……うーん。どうしたらいいんだろう」
ステータス画面を眺めながら、俺はこれからのことを思い悩む。
膨大な魔力とあらゆる能力。
ステータスはもはや、隠蔽魔法で隠すしかないだろう。
本当なら、転移魔法を使えばいいんだけど……。
ミカエル兄様がいる、このネーア王国で行うのは危険すぎる。
即座に察知されて、包囲されるのが関の山だ。
少なくとも、この国から脱出してから使うのが最善手だろう。
だったら、別の方法を駆使して逃れるしかない。
そんな事を考えながら歩き——十数分ほどしてたどり着いた先は、思わぬ場所であった。
「えっ? ギルド……」
冒険者と呼ばれる者達が集う場所——ギルド。
そこは、冒険に関わる、すべてのことができる場所であった。
ダンジョンで得た物品を売ること、買うこと。
依頼を出すこと、受けること。
すべて、ギルドが担っている。
ギルドと呼ばれる建物は、特に広い作りになっており、人がごった返していた。
「……すごい盛況だな。このギルド」
外は閑散としていたので、もっと寂れているのかと思っていた。
だけど、実際は多くの人たちで溢れている。
だから、個人的には驚きだった。




