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それでも懐かしい記憶⑤

「それにしても、誰がこんなことを……」


胸に寄せた手に、心臓の鼓動が強く打ちつけている。

ルリア様たちと別れた後、俺たちは部屋に戻って、今後のことを考えていた。


これからどうするのか――。


その答えはもう見えていた。

アナスタシア様たちを陥れようとした者を捜さなくてはいけない。

先程のルリア様の笑顔を見て、真っ先に思った。


「でも、今まで会ったことがある人たちの中には闇魔法の使い手はいなかったはずだ。恐らく、まだ、俺たちが会ったことがない人物が施したんだろう……」


俺は記憶を辿るように視線を彷徨わせた。


「ねえ、ライル。一度、アナスタシア様とお話してみたらどう?」

「そうだな」


母さんが持ちかけた提案に、俺は表情を和らげる。

グランジ家の人たちの仕業なのか、それとも別の者の仕業なのか。

いずれにしろ、アナスタシア様に話を聞かなくては何も分からない。


「弱気になっても仕方ないよな。俺たちにも、できることがあるはずだ」


そう思い至った俺たちは翌日、アナスタシア様の部屋を訪ねることにした。






「お初にお目にかかります。吟遊詩人のアイリス・フェインと申します」

「息子のライル・フェインです」


母さんの挨拶に相まって、俺はぺこりと頭を下げた。


「ルリアから、話を伺っていますわ。お二人のおかげで、すっかり快方に向かっています。心から感謝しますわ」

「その……俺たちの演奏が、アナスタシア様の癒しになって良かったです」

「もったいないお言葉です」


俺と母さんの返答に、アナスタシア様は穏やかな佇まいで微笑んでいた。

随分、顔色は良さそうだ。

体調は順調に回復していっているのだろう。


「ルリアとジオが言っていましたわ。お二人の演奏には、特別な力があるって……。世界中の人たちを幸せにすることができるって……!」

「あ、あれは偶然の産物のようなもので……」


思わぬ大胆発言に、俺はたじたじになる。

俺たちの演奏がだいぶ、過大評価されているみたいだ。

変な噂が流れないように、ジオさんたちには今回の演奏のことを口止めしてもらっている。

ミカエル兄様のこともあるけれど、アナスタシア様たちを陥れようとした者に知られるのは危険極まりないと思ったからだ。

ただ、ルリア様のお父様には隠し事は通じないようで、俺たちの演奏のことは既に耳に入ってしまっているらしい。


離れた場所にいる相手と、意思疎通を図る方法はいくつかある。


ルリア様のお父様は恐らく、通信魔法やその方面に精通したスキルを持っているのだろう。


「あの……話は変わるのですが、ご病気のことでお聞きしたいことがあります」


俺は少し考えてから口を開いた。


「病気のこと……?」


俺の言葉に、アナスタシア様は不思議そうに首をかしげる。


今回の件を目論んだ者――。


アナスタシア様たちを害そうとする者がいる以上、いつまでもそのことを曖昧にはしておけない。

大切な人たちが苦しむのをもはや、見て見ぬふりはできなかった。

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