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それでも懐かしい記憶③

「ライル、やれるだけやってみましょう」

「……母さん」


幼い頃からずっと、俺は何度も母さんの力強さに救われてきた。

何があっても、母さんは俺の味方だった。

父さんは幼い頃に亡くなってしまったけど、母さんからの愛情を一身に受けて旅をする毎日が楽しくてたまらなかった。


自分の前世が、天使ザナフェル。

ミカエル兄様とともに、この世界を支配してきた超常の存在。


そして今までの前世では、ろくでもない人生を歩んできた俺だけど。

今世で、こんなにも大切だと思える家族に出会えたことは、きっと奇跡のようなものだろう。


「分かりました。俺たちの演奏で癒せるのなら、喜んでお力にならせていただきます」

「アイリス様、ライル様、ありがとうございます。心から感謝します」


俺が決意を込めて言うと、ジオさんは涙ぐんで微笑んだ。

何だか、不思議な気持ちだ。

前世では嫌われるのが普通だったから、こんなにも自然に頼ってもらえるのがすごく新鮮で嬉しい。

とめどなく弾む胸をおさえて、俺は深呼吸をひとつする。


「母さん、精一杯、演奏しよう!」

「ええ」


俺の言葉に、母さんは嬉しさ全開の顔で微笑んだ。

寄せられる信頼の大きさに、ちょっとだけ怯んでしまうけど、どうにか持ち直す。

今はルリア様のお母様――アナスタシア様を救うことが先決だ。


「こちらです」


ジオさんに案内されて、アナスタシア様の部屋に入る。

すると、俺たちを取り巻く周囲の空気が変わった。

アナスタシア様はひどくやつれて、顔色が悪い。

病でどんどん、衰弱していっているようだ。

もはや、一刻の猶予もないかもしれない。


「鑑定……」


母さんがジオさんに容態のことを聞いているうちに、俺はこっそりとステータスを確認する。


************


アナスタシア・グランジ


公爵夫人


HP:150/460


MP:21/194




魔法: 火属性魔法 Lv.8

    風属性魔法 Lv.5


状態:毒物反応あり


************


毒物……病気じゃないのか。

『毒物反応あり』にそっと触れてみると、さらに詳しい情報が開示された。


************


毒物反応あり


闇属性魔法によって生成された、強力な毒。

闇の力によって、少しずつ心身を弱らせていく。


普通の解毒薬では、効果はない。

神聖魔法により解毒可能。


************


天使の力を取り戻したことで、すべての属性魔法とスキルを使えるようになっている。

神聖魔法は王宮でも使っているし、俺の力ならこの毒を解毒できるはずだ。


「悪しき闇を解毒せよ――アンチドート」


体の奥から、じんわりと温かいものが溢れてきて、それが全身に広がっていった。

それと同時に、アナスタシア様の表情が次第に穏やかなものになっていく。

どうやら、治癒できたようだ。

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