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それでも懐かしい記憶①

「これで瘴気の方は多分、大丈夫だと思う。だけど、森に生息する危険な魔物……心配だな」

「……ライル」


思ったことをそのまま口にしていたからか、母さんが口を挟んできた。


「きっと、大丈夫よ。ローゼンさんたちを信じましょう」

「……母さん」


俺はでも、と怖気つきそうになる心を叱咤する。

無理とためらっているうちに、世界は進んでしまう。

俺の知らないうちに、別の道に迷い込んでしまうかもしれない。

だったら、目の前にある未来に一か八か、飛び込んでみるしかない。


「そうだな。くよくよしても仕方ない。ローゼンさんたちを信じよう……!」


演奏を終えた後に見た、ローゼンさんは明るい表情で生き生きとしていた。

昨日よりも今日、そして今日よりも明日はもっと良い日になると未来を信じている、そんな顔だ。

だったら、俺たちもその未来を信じるだけだ。

終わりを迎える今日のその先に、新しい道が続いていると、俺たちも信じているから。






「ライルせんせい、アイリスさま、おかえりなさい!」

「お帰りなさいませ」


グランジ家の屋敷に戻ると、ルリア様とジオさんが出迎えてくれた。


「ただいま、ルリア様」

「ライルせんせい、わたしもギルドについていきたかったです」


俺がそう言うと、ルリア様は少しふてくされたように俺の隣にぴったりとくっついた。

相変わらず、懐かれてしまっているみたいだ。


「あたらしいことにちょうせんしてみたかったです」

「そうなんだな」


夕食までの間、俺はルリア様の気が晴れるまで話に耳を傾ける。

二人の脳裏を、豊かな街の味覚がいくつもよぎった。


「わたし、ほんとにライルせんせいがだいじでだいすきだから」


ルリア様は藁にもすがる思いで言い募っていた。


「ライルせんせいたちが、やしきにきてくれたおかげで、であえてほんとにうれしいです」

「ルリア様、ありがとうございます」


ルリア様が嬉しそうに笑っている。

ただそれだけの出来事が、俺の身体を温かなやる気で満たしてくれた。


「俺たちも、ルリア様たちと出会えてすごく幸せです」

「ライルせんせい。わたし、これからも、ライルせんせいたちのそばにいたいです……!」

 

瞬く瞳に映るのは、ルリア様のどこまでも優しくて柔らかな微笑みだった。

グランジ家で暮らし始めてから、毎日が楽しくて、温かくて幸せで……。

だからこそ、その日々が失われるのが怖かった。

たくさんの不安があったけれど……。


ルリア様が、俺たちと出会えたことを喜んでくれた。


その事実は途方もなく、俺の心を温めた。

世界の輪郭がきらめいて、温かい光で満ちていく。

ルリア様の笑顔こそが、俺たちにとっての特効薬だ。

ミカエル兄様のことは気がかりだけど。

できれば、もう少し、このままで……。

そう思っていると、ジオさんが話に加わってきた。

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