天使の加護③
「最悪だ……」
そこに気づけなかった自分の愚かさを改めて、心から悔いた。
「今回の依頼は、危険な魔物が生息している可能性が高いため、冒険者のパーティー限定になっております。吟遊詩人二人で、森に行くのは自殺行為に近いと思われます」
受付の女の人が申し訳なさそうに、そう説明する。
自殺行為。
まあ、厳密には、俺は天使の生まれ変わりな上に、魔物は実質、俺たち天使の支配下に置かれている。
だから、危険に晒される可能性は低いのだけど、さすがにそれを口にすることはできなかった。
「それって、冒険者の人たちと一緒でもダメなのかな?」
「冒険者に同行して、依頼を受けることもできます。でも、今回の依頼は、冒険者のパーティーのみになっております」
食い下がるものの、受付の女の人の答えは無情だった。
俺たちが冒険者のパーティーに同行すれば、冒険者限定の依頼を受けることも不可能ではないみたいだ。
だが、今回の依頼は、冒険者のパーティーしか受けることができないのだろう。
「瘴気に犯された森を救ってほしい……か。森の奥に生息しているのが、ただの魔物なら同行しても、問題はあまりねえんだろうな」
割り込むように、冒険者のローゼンさんが言葉を口にした。
それはまるで、森の奥には『ただの魔物』ではない魔物がいるような口振りだった。
危険な魔物。
どんな魔物が森に生息しているというのだろう。
なにはともあれ、謎はますます、深まるばかりだった。
「まあ、心配すんなよ。この依頼、オレたち、『ドミニカ』のパーティーが受けることになったから」
「ええっ!? ローゼンさんたちが!!」
予想外の展開に、俺はぱちくりと目を見開いた。
「なあに、驚いてんだよ。冒険者が依頼を受けるのは普通だと思うんだが」
ローゼンさんがもっともな意見を口にする。
「いや、その、瘴気を浄化するのは難しいと聞いたことがあるので……」
「よく知ってるな」
「その……別の街の冒険者ギルドで聞いたことがあったんです」
そのことは最初から知っていたけれど、あえて訂正する必要もないかと思って、それで通すことにした。
「瘴気を祓うことができるのは浄化魔法だけだ。オレたちには、その使い手はいねえ」
「なら、どうして――」
ローゼンさんの話に思わず、俺は食い気味に尋ねてしまう。
「今回の依頼で、オレたちに課せられたのは『瘴気に犯された森を救ってほしい』だ。森を救う手段は、何も瘴気を祓うことだけじゃねえ」
「あ……」
ローゼンさんの指摘に、俺はようやく、そのことに気づく。
ローゼンさんは、Aランクパーティー、『ドミニカ』のリーダーだ。
凄腕の冒険者であるローゼンさんたちなら、たとえ、瘴気を祓うことができなくても、森を救うことができるのかもしれない。
ローゼンさんの真剣な眼差しは、それを伝えているように感じた。




