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天使の加護②

「だけど、魔力検査の影響で、容易に街を出入りすることはできない。何とかして、森を救う方法を考えないと……」

「方法はあるわよ」


思った以上に食いつかれてしまった。

俺がきょとんとすると、母さんは苦笑して、噛みしめるように声に出す。


「ライルは瘴気を祓うことができる魔法が使えるのでしょう。そして、加護を与えることができるのよね。だったら、瘴気を祓う加護とかを与えたりすることもできない?」

「瘴気を祓う加護……」


その発想はなかった。

俺が驚いていると、母さんは優しく俺の手を握った。


「ライル、一人で抱え込まないで。私たちがいつでもそばにいる」


言い淀むこともなく、ただ真っ直ぐに見つめる瞳が、母さんの意思が変わらないことを伝えている。


「あなたのいる場所が、私たちのいる場所だから」


母さんはそう言って、俺を優しく抱きしめてくれた。

……何故だろう。

こうして母さんを見ていると、まるで小さな箱の蓋を開いたように思い出が溢れ出してきた。

嬉しかったことも、悲しかったことも。

父さんを亡くして泣いた夜も、やることなすこと、うまくいかなくて落ち込んだ夜も、母さんが優しく抱きしめてくれた夜だってあった。

何時だって周りの人達に守られていたと知ったのは、広い世界を見た時だっただろう。


天使覚醒の日が訪れる前。


その頃は明日を恐れることも、過去を嘆くこともなく、幸せな今だけがあった。

だけど、今は……もう違う。

明日を恐れることも、過去を嘆くこともある。

それでも、母さんたちといれば、心が震える。

いつだって特別な時間をくれる人たちが、今も隣にいてくれているから。


「母さん。俺、瘴気を祓う加護を与えてみようと思っている」

「ライルなら、絶対にできるわよ」


母さんの導くような言葉が、自分の力が少しでも誰かの役に立ち、幸せにつながることを教えてくれる。


「まずは依頼を受けよう。その上で、魔力検査を受けずに、ネーア王国から出る方法を考えようと思っている」


これからどうしようかと答えを探してみると、それらはいとも簡単に生み出されてきた。


ネーア王国以外の国に関する依頼。

しかも、『瘴気に犯された森を救ってほしい』という、難易度の高い条件。


先を越される心配は少ないけれど、それでも念には念をだ。

誰かが依頼を受ける前に、俺たちで依頼を確保する。

その依頼に同行してくれる冒険者さんに瘴気を祓う加護を付与すれば、恐らく、森を救うことができるはずだ。

瞬く間に今後の方針が定まると、俺たちの足はギルドへと向かった。

しかし――。


「瘴気に犯された森を救ってほしい。リンクス領の領主からの依頼ですね」

「はい」


受付の女の人の確認に、母さんはしっかり頷いた。


「大変申し訳ございません。こちらは冒険者のみの依頼になります。冒険者ランクA以上の提示が必要になっております」

「ええっ!?」


想定外の受付の女の人の言葉に、俺は絶句する。

だが、考えてみれば、確かにそうだ。

瘴気に犯された森。

つまり、瘴気を糧にしている魔物も多く生息しているということだ。

討伐が発生するのだから、当然、冒険者限定の依頼になる。

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