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天使の加護①

ネーア王国の街並みは賑やかだ。

翌日、人混みに溢れた通りの中を、俺たちは軽やかな足取りで進んでいた。


「これから、どうしたらいいんだろうな……」


俺は夢うつつな気持ちでぽつりとつぶやく。

母さんに昨夜のことを相談したけれど、はっきりとした答えは出なかった。


ルリア様たちを巻き込むわけにはいかない。

それでも、ルリア様たちに何も言わずに立ち去るのも忍びなくて。


結局、しばらくの間、俺たちはグランジ家に滞在することにした。

俺はその間、主にルリア様のハープの先生をしているけれど。

時には空き時間に、母さんと一緒にギルドに行って情報収集をしていた。


『ライルせんせい。わたしも、ギルドにいきたいです……』


その度に、ルリア様から一緒に行きたいとせがまれることがあった。

公爵家のご令嬢、ルリア様と護衛が付き添った並々ならぬ顔ぶれ。

さすがにひときわ目立つし、注目の的になるので断っている。


ルリア様のハープの先生。


始めは、その言葉にいまいちピンと来なかったけど、今となってはかけがえのないものに思えて仕方がない。

あの時、ルリア様とジオさんに誘ってもらえて本当に良かったと思っている。

街を転々していく旅も楽しみが満載だったけれど、屋敷での日々もまた、異なる喜びに満ちていることだろう。


「そういえば……」


俺はふと、あることに気づく。

俺たち家族は二人とも、音楽を嗜むというのが肝要だ。

たまに、街の広場で母さんの歌に合わせて、ハープを演奏したりしたこともあったけれど。

その時は、誰も天使の加護持ちにはならなかった。

どうやら、俺が心の底から、『天使の奇跡の加護』を与えたいと思った人にしか、加護は付与されないみたいだ。

そういうところは、前世と変わらないようで安心する。


「母さん、ギルドに寄ってもいい?」

「ギルドに?」


思いがけない提案だったのか、母さんは不思議そうに首をかしげた。


「この間、ギルドに行った時、俺の魔法でできそうな依頼を見つけたんだ」

「えっ? ライルの魔法で……?」


俺がそう切り出すと、母さんは大きく目を見開いた。


「……うん。瘴気に犯された森を救いたいんだ」


俺は噛みしめるようにうなずく。

ギルドはいつ来ても盛況だ。

多くの冒険者たちが集っている。

だが、今は魔力検査の影響で、容易に街を出入りすることができなくなっている。

今も、ギルドではネーア王国以外の国に関する依頼がずらりと残っていた。

その中に、『瘴気に犯された森を救ってほしい』というものがあった。


「神聖魔法の一つ、浄化魔法。瘴気を祓うことができる魔法だ。でも、それを使えるのは、俺たち天使と一部の限られた人間だけ」


瘴気は、俺たち天使が生み出してしまったもの。

なら、それを浄化するのも、俺たち天使の役目だと思った。

幸せと不幸せは隣り合わせ。

今世の幸せは、前世の罪の上に成り立っているのだから。

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