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恋のようなものじゃなく⑤

これまでの前世の出来事ですっかり鍛えられてしまったミカエル兄様の精神は、夜のデートくらいでは動じなくなってしまったらしい。


「ザナフェル、かわゆす……!」


明るい金色の髪をした青年が、にこにこと綺麗な笑みを浮かべている。

今も冷静に、目の前の俺を観察していた。


「ううっ……」


街を出歩くのに、美しく着飾った姿のままでは目立ってしまう。

ミカエル兄様に促されるまま、俺は変装して街に繰り出していた。


「激レアものの癒し。……まさに国宝級のかわいさ。これはネーア王国の歴史上、かってない出来事だ」


ミカエル兄様がめちゃくちゃ褒め称えている俺の姿は、まるで貴族の令嬢のようで少し気恥ずかしい。


「これは、誰もが胸キュンしてしまう。気を引き締めなくてば……!」


警戒するように隣を歩いているミカエル兄様は一見、貴族の令息のようだった。

服装は、とても身なりが良く見える。

誰が見ても、庶民とは思わないだろう。


「それにしても、夜遅くに街を出歩くことになるなんて……」


街に出向く話になった時、もっと大騒ぎになると思っていた。

なにしろ、ミカエル兄様とリリアーナ王女は王族だ。

しかも、こんな夜遅くにお忍びで出歩くという。

さすがに無理だと思っていた。

だが今、ネーア王国を実質的に支配しているのはミカエル兄様だ。

俺の疑問をよそに、あれよあれよという間に、夜のデートの話は進んでいってしまった。


「結局、お忍びは無理だったけれど、護衛付きで、夜のデートが決行されることになってしまったんだよな」


王子と王女の街巡り、警護はかなり厳重だろう。

本来なら夜に出歩くのは危険すぎるが、俺たちには関係ない。

なにしろ、天使である俺たちに勝てるような存在はいないのだから。

狂暴なドラゴンでさえ、一捻りだ。


「でも、こうしてミカエル兄様と並んで、街を歩くのは不思議な気分だな」


路地を通り過ぎて、行き慣れた広場へと向かう。

母さんと一緒に、小さな演奏会をしている広場。

夜に行くのは新鮮で、少しだけ胸が高鳴るのを感じた。


「ザナフェルは、この辺りに詳しそうだね」

「それは……」


どう答えたらいいのか分からず、俺は言葉尻をにごしてしまう。


「言いたくないなら、それでもいい。ザナフェルと、こうしてそばにいられることが何よりも重要で大事だから」

「ううっ……」


ミカエル兄様が言い足すと、俺は面喰ったように言葉に詰まった。

悪役天使として名高いミカエル兄様だけど、俺に対してはすごく優しいんだよな。

前世でも、俺に危害を加えようとしていた者たちから救ってくれたし、身を呈して守ってくれた。

もっとも、危害を加えようとした者たちの生死は不明だけど。

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