恋のようなものじゃなく④
「相変わらず、その反応、かわゆす…………」
その青年は興奮して思わず、声がもれ出ていた。
しかも、慌てふためいたり、わめき散らしたりと、その美しい姿にふさわしくない奇行を繰り返している。
その言動に、纏う空気に、どこか既視感があった。
「ああ~。これからは憑依の魔法で呼び寄せれば、いつでもザナフェルと一緒にいられるのだな!」
「うわあっ! なんで、ミカエル兄様がここにーー!!」
目の前に立っている青年が、ヴェルディ第一王子だと悟った俺は、ひたすら絶叫するしかなかった。
「……いや、そもそも、なんだ、これ!? めちゃくちゃ豪華なドレス?」
透き通るような細い腕に、見るからに高級そうなライトグリーン色のドレス。
胸元には繊細な刺繍が施されている。
裾にいくにしたがって色味が薄くなっており、そのグラテーションがとても美しかった。
しかも、何度見返しても、それを着ているのは自分自身だった。
「こ、これって、まさか!?」
俺の頭の中の混乱は最高潮に達していた。
「もちろん、憑依の魔法だよ。『ザナフェル様を宿す準備は万端』……って、リリアーナは快く、了承してくれたんだよね」
「うぐっ……」
その説明で、今どういう状況なのか、思い至った。
つまり、今回も、ミカエル兄様は『憑依の魔法』を使って、今世の妹、リリアーナ王女に、俺の意識を憑依させたのだろう。
その絶望的な答えに、俺の胸中は混迷をきわめていた。
「うわあっ……!」
慌てて、部屋にあった鏡を覗き込むと、そこに映っていたのは愛らしい王女の姿だった。
「やっぱり、リリアーナ王女……!?」
何度、鏡を見返しても、今の自分の姿がリリアーナ王女であることは変わらない。
「相変わらず、ミカエル兄様は呼び寄せ方が強引すぎる……」
呆然とつぶやきながら、俺は頭を抱えてうずくまった。
ミカエル兄様の魔法は、本当に突発的すぎる……。
これじゃ、対策の立てようがない。
悶々と悩んでいると、ミカエル兄様は思いもよらないことをのたまった。
「本来なら、兄弟でデートをすることはできないのだが、身体が別人なら問題ない」
「めちゃくちゃ、問題がありすぎるーー!!」
ミカエル兄様の驚きの発言に、俺は目を丸くするけれど。
「……って、デート?」
そこで、ミカエル兄様の発言に違和感を覚えた。
「そう、デート」
ミカエル兄様は俺の頬に触れ、思案するように撫でる。
そして、耳元に顔を近づけて内緒話をするように小声で囁いた。
「お忍びで、街に繰り出そう」
「街に?」
「いわば、夜のデートだ。二人で存分に楽しもう」
俺だけに聞こえる声で応えると、ミカエル兄様は含みのある視線を送った。




