恋のようなものじゃなく②
「鑑定……」
俺はこっそりと、ルリア様のステータスを確認する。
改めて目を凝らしてみても、以前、見た時と変わらない。
ルリア様は、『天使ザナフェルの加護』を持っていることになっていた。
「ここは慎重に……」
俺は誰にもバレないように、ルリア様のステータスに対して隠蔽魔法を使う。
……よし。
これで周りの人間は、ルリア様が『天使ザナフェルの加護』を持っていることに気づかないはずだ。
これなら、もう大丈夫だろう。
すぐに王宮から使者がやってきたりと、ルリア様に危害が及ぶこともない。
ただ、唯一の気がかりはミカエル兄様だ。
ミカエル兄様はとにかく万能で、規格外すぎる。
その上、俺の加護のことも知っている。
俺の位置を察知した時、加護を持っているルリア様の存在も知られてしまう可能性があった。
しかし、悶々と勘案しても、これ以上の対策はおもいつかない。
ルリア様たちと別れた後、俺たちはひとまず、部屋に戻ることにした。
「もう一つの問題は、魔力検査だよな」
俺は改めて、今後のことを考える。
グランジ家の使用人さんは、住み込みの人と通いの人がいて、俺たちは前者。
普段は母さんと一緒に、ルリア様のハープのレッスンをしている。
そして、空き時間に広場で演奏したり、ギルドに行って情報収集をしていた。
冒険者のローゼンさんの話では今も、魔力検査の騒動が落ち着く目処は立っていないらしい。
だからといって、魔力検査を受けずに、ネーア王国から出る方法は思いつかなかった。
「なにしろ、ミカエル兄様はとにかく万能で、規格外すぎる」
その言葉の意味するところを身に沁みて理解する。
あれから『憑依の魔法』を使って、今世の妹、リリアーナ王女に、俺の意識を憑依させてくることはなかった。
だからといって、安全かといえば、そうでもない。
いつ何時に、『憑依の魔法』を使ってくるのか分からないのがミカエル兄様だ。
『お兄ちゃんは今世も、ザナフェルのことをめちゃくちゃ愛しています。ザナフェルがなかなか会いに来てくれないから、『憑依の魔法』でその魂を呼び寄せてしまったよ~』
不意に今世のミカエル兄様――ネーア王国の第一王子、ヴェルディ様の顔が浮かんできて、盛大にため息をついてしまった。
あの現象以降、ミカエル兄様にはしばらく会っていない。
つまり、また、ミカエル兄様に呼び寄せられる可能性が非常に強かった。
「憑依の魔法……。俺という天使の魂を宿したことで、リリアーナ王女は魔法を使えるようになった。国全体に結界を張るという、聖王女としての責務を果たすことができた」
俺はそこで重大なことに気づく。
「だけど、今は魔法は使えない。また、聖王女としてふさわしくないと虐げられていないだろうか……」
「……ライル」
思ったことをそのまま口にしていたからか、母さんが口を挟んできた。




