小さな演奏会⑤
「そういえば、お二人はこれからどうなされるのですか?」
「まだ、何も決まっていなくて……」
ジオさんの問いかけに、俺は躊躇うように答える。
「これは個人的な提案なのですが、もしよろしければ、この屋敷で住み込みで働きませんか?」
「いいんですか!?」
ジオさんの提案に、俺はがばっと身を乗り出した。
「ただ、私たちと同じ使用人の部屋になりますが」
「ありがとうございます。助かります」
「お心づかい、感謝します」
それを聞いた俺と母さんは、ぱあっと表情を華やかせた。
ミカエル兄様に場所が知られている――宿屋に戻るわけにはいかない。
だからと言って、別の場所が安全とは限らない。
今後、泊まるところが決まらなくて、八方塞がりの状態だった。
だからこそ、差し伸べられた救いの手に、俺たちは感極まってしまった。
「こちらです」
「ありがとうございます」
ジオさんに案内されたのは、使用人に割り当てられた部屋の一角だった。
広々とした二部屋で、一介の吟遊詩人である俺たちには破格の待遇だ。
それだけ、ルリア様の令嬢教育に、力を入れているってことなのかもしれない。
恐らく、この場所も、ミカエル兄様には知られているだろう。
それでも、俺はこの街に滞在している間は、この場所にいたいと思った。
「ここが、ライルせんせいの部屋……」
ルリア様は、俺の隣にぴったりとくっついていた。
何故だか、懐かれてしまったようだ。
「ルリア様は、ライル様のことが気に入られたようですね」
ジオさんの説明に、俺は思わず、目を白黒させる。
ど、どういうこと?
俺、ただ、ハープを奏でただけですけれど……!?
そこで、はたと思い当たる。
ザナフェルとして覚醒したことで、ハープの音色には魔力がこもっていた。
この音色を聞いた者に、『天使の奇跡』という加護を与えてしまう可能性があった。
もし、その加護をルリア様に授けてしまったとしたら、加護を与えた俺に惹かれてしまう可能性はなくはない。
「そろそろ、参りましょう、ルリア様」
「……うん」
付き添っていたメイドに呼ばれて、ルリア様は悲しげにしぶしぶ立ち去っていった。
うーん。
やっぱり、懐かれてしまったようだ。
疑問はさておき、心当たりは一つだけだ。
「この場合、問題はルリア様に与えてしまった加護だよな」
別れ際、鑑定でこっそり確認してみたけれど、どうやら、本当にルリア様に加護を与えてしまったみたいだ。
ルリア様のステータス内容を改めて、思い出す。
************
ルリア・グランジ
公爵家の令嬢
HP:50/100
MP:1/52
魔法: 火属性魔法 Lv.1
状態:良好
加護:天使ザナフェルの加護 new
ありとあらゆる厄災から守ってくれる
どんな病や怪我も、たちどころに治ってしまう
************
どんな病や怪我も、たちどころに。
ルリア様の様子を見る限り、生まれつきの病にも効果があるみたいだ。




