小さな演奏会②
「ライルも、演奏会、楽しんでいたでしょう」
言われて見れば、確かにそうだ。
母さんと一緒に、めいいっぱい、演奏会を楽しんでいた気がする。
いつも新しいことが始まる時は嬉しかった。
新しい街に着いた時。
街の広場で、演奏会をする時。
見知らぬお店に訪れた時、わくわくドキドキした。
そんなふうに、グランジ家の人たちも、俺たちの演奏を楽しんでくれたらいいな。
そう思っていたけれど。
たどり着いた先に広がっていた景色に、俺は圧倒されていた。
何故なら、そこは公爵家という名にふさわしい大きな屋敷だったからだ。
「すごい……!」
目に映る光景、その全てが新鮮でつい、好奇心旺盛な反応をしてしまう。
「吟遊詩人様、ようこそおいでくださいました。私、グランジ家で執事を務めております、ジオと申します。ルリアお嬢様が、器楽室でお待ちかねです」
さらに執事のジオさんに招かれたのは、桁違いに広い器楽室だった。
今までいろいろな場所で演奏したけれど、こんなに広い器楽室を訪れたのは初めてだ。
きょろきょろと物珍しさから、俺は目を輝かせて周囲に視線を向けていたけれど。
「ライル」
母さんの声に、俺は改めて、ここに来た目的を思い出す。
目の前には、幼い少女と執事のジオさんが立っていた。
「初めまして、これからルリアお嬢様のために、演奏するために参りました。吟遊詩人のアイリス・フェインと申します」
「息子のライル・フェインです」
母さんの挨拶に相まって、俺はぺこりと頭を下げた。
「以後、お見知りおきを」
「……は、はじめまして、ルリア・グランジです。よ……よろしくおねがいいたします……」
母さんの言葉に、ルリア様はドレスの裾をつかんで丁重に一礼した。
可憐なルリア様は4歳。
綺麗に手入れされた真紅の髪と、ぱっちりとした大きな緑の瞳のご令嬢だ。
ただ、生まれつき病弱な体質らしい。
ジオさんに支えられながらも、ときおり、苦しそうにしている。
「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いしますね。ルリア様」
母さんは恭しく返事をした。
穏やかなひとときが流れたその時――。
ルリア様は俺の持っているハープを見て、ぱあっと目を輝かせる。
「ハープを……ひけるのですか? すごいです。ひいてみてほしいです」
「えっ?」
思わぬ催促に、俺は目をぱちくりと見開いた。
まさか、俺の持っているハープが着目されるとは思わなかったのだ。
母さんは、そんな俺たちのやり取りを見て微笑む。
「ライル、演奏はお願いね」
「あ……、うん」
俺と母さんは顔を見合わせて笑う。




