表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/50

小さな演奏会①

「うーん……」


まどろみから覚めて、俺は眠気を追い払うようにして目をこすった。

目を開けた時、俺は王宮ではなく、宿屋のベッドにいた。


『……ザナフェル、ごめんね。……今度は少しでも長く、リリアーナの身体にいられるように配慮するからね~』


先程、聞いたミカエル兄様の言葉が、微かに尾を引いて消える。

生々しい夢だった。

夢の余韻がまだ覚めやらない部屋は、いつもと変わらないようで、やはり違った。


「夢? いや、あの出来事は夢じゃない……」


言い知れない不安のせいで、全身汗でぐっしょりとぬれていた。


「ミカエル兄様が、憑依の魔法で、俺の魂を呼び寄せたんだ……」


理性よりも先に、直感が結論を出した。

魔力の残り香だけが身体中を纏っていた。

まだ、現状を消化しきれていない。

どこからが夢で、どこからが現か。

どれだけ考えても、今の状況に納得いく説明をつけることができなかった。

王宮での出来事は、非現実ワールドに片足突っ込んで、夢と現の境目がはっきりしない。

だけど、少なくとも、『ただ呼び寄せただけ』と終わらせるには不思議に満ちていた。


「……ということは、俺が、この宿屋にいることも知られているのかもしれないな」


予想はしていたけれど、改めて口にすると、その事実が重くのしかかる。


「とにかく、今日は依頼をこなそう。グランジ家に行って、演奏しなくちゃな。その後、ミカエル兄様の対処法を考えないと」


そう思い立つと、俺はグランジ家に行く準備をした。

母さんに事情を話した後、足早に宿屋を出る。

そして、気分一新。

これからの自分の道は、自分で照らそう。

もう、うつむくことはやめて。

新たな人生、生きたいように生きようと思った――。





ネーア王国の街並みは、独特な雰囲気で観光に訪れる者も多い。

人々の声が空の下に響く。

春の芽吹きのような温かさを。

胸中に感じられるのも、街が活気に溢れているからこそだろう。

もっとも、今は魔力検査の影響で、容易に街を出入りできなくなっている。

俺たちのように、騒動が落ち着くまでしばらく、街に滞在している者もいるみたいだ。


「賑やかね。依頼が終わったら、街の広場で、演奏会をするのも良さそう」

「母さん。街を訪れると、いつも小さな演奏会をするよな」


俺の言葉に、母さんは怪訝そうな顔を浮かべたが、そう的外れではないと思う。

街で楽しむこと。

いくつか選択肢はあったけれど、俺たちの場合、音楽が常に有力候補となっていた。

幼い頃から聞いていた母さんの歌。

それは俺たち家族を繋ぐ、大切なファクターの一つだったからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ