瑛美と紗貴(10)
あらすじ:私紗貴!瑛美の主治医である正井先生から話を聞くよ。
「これまでと、これから…?」
紗貴が呟くように言うと、正井はゆっくり頷き、紗貴と健斗に話し出した。
「まず、瑛美ちゃんが昔からこの病気で何度も入院していたのは知っているよね?」
正井の言葉に2人は頷いた。正井は話を続ける。
「そして、まだ完治していない…むしろ、少しずつ進行していっていることも…」
「でも、中学に上がってからは入院の数は減っていましたよね?」
健斗の言葉に、正井は答える。
「そうだね。ただ、それは入院するより通院の方が瑛美ちゃんにとって良いと思ったからだ。」
「ど、どうして…?」
「君達と過ごす時間が必要だと思ったからだ。」
「えっ…」
「病は気から、と言う言葉があるよね?病気を克服するには前向きな気持ちが必要なんだ。…絶対に病気が治るって訳ではないけどね。…瑛美ちゃんが小学校に通っていた頃…ずっと気持ちが沈んでいた様子だったのが、ある日を境に、昔の…明るい頃の瑛美ちゃんに戻っていたんだ。」
正井はそう言うと、紗貴をじっと見た。
「君のお陰だよ、紗貴ちゃん。君が、瑛美ちゃんの心を救ってくれたんだ。」
「そうね!紗貴がいなかったら、私はもっと早い時期に生きるのを諦めていたわね!」
「え、瑛美…」
「それにね、私は健斗にも感謝しているの。」
「お、俺にも?」
「ええ。私達が一緒に遊ぶとき、なんだかんだ理由をつけて様子を見たり、外出に付き合ったりしてくれたでしょ?それに…周りにひどいことを言われた時に、真っ先に守ってくれたりして…私、いや、私達を守ってくれてありがとう、健斗。」
「お、おう…面と向かって言われると恥ずかしいな…」
「そうだね…紗貴ちゃん達が瑛美ちゃんの心を守ってくれたから、瑛美ちゃんは今まで頑張ってこれたんだ。しかし、もう通院で対応出来る段階を過ぎてしまった…」
正井の言葉に、場は静まり返る。
「先生!」
健斗は立ち上がり、正井に尋ねる。
「俺達は何をすれば良いですか?俺達に出来ることなら何でもします!」
正井は健斗と紗貴を見て、ゆっくり答える。
「君達は…今まで通り、瑛美ちゃんを支えてほしい。これは私個人のわがままでもあるのだけれども…」
正井の言葉に、2人は目を見合わせる。
「そ、それだけですか?」
「えっ?」
健斗の発言に正井は困惑した。
「いや…君達の行動を制限してしまうような発言をしたと思って、だから…」
そう言う正井に、健斗はあっけらかんと答える。
「制限だなんて…先生、俺達は瑛美が大切な存在だから一緒にいるんです。」
「そうですよ!私達は好きで瑛美と一緒にいるんですから!なんかこう…その…えっと…とにかく!大丈夫です!」
「いや、語彙力。」
健斗と紗貴の言葉に、正井の顔に笑みがこぼれる。
「ふふふ…ごめんね、2人とも。ありがとう。私も瑛美ちゃんが生きられるように精一杯頑張るよ。」
正井はそう言うと2人に微笑んだ。
紗貴は瑛美の方へ向き、話しかける。
「瑛美、私はあなたをいっぱい楽しませるからね!…だから、頑張ってね。」
「うん…ありがとう。紗貴。」
そう言って2人は抱き合った。2人の頬に涙が伝う。
「ふー…これって彼氏である俺の役割じゃないの?まあ、良いけど。」
そう言って頭を抱える健斗を見て、正井は少しおろおろしつつも、優しい眼差しで見守るのであった…
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ーーー3年後ーーー
「瑛美!見て!あともう少し!」
「本当ね。凄いじゃない、紗貴。」
瑛美の病室に来ていた紗貴は、ゲームを病室のテレビに繋いで、画面を見せる。
画面には99%の文字が映し出されていた。
「あと1ルートなんだ!一緒にやろう!」
「良いね、それ。」
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「や…や…やったあああああ!」
病室に歓喜の声が響き渡る。ついに『どりーみんっ♪スクールラヴァーズ♪』が完全に攻略されたのだ。
「…終わったわね。」
「うん!付き合ってくれてありがとう!瑛美!大好き!」
「…ええ、私も好きよ。紗貴。」
2人は抱き合って喜びあった。
長い時間をかけてようやく終わったゲームについて、2人は面会時間が終わるまで、語り続けるのであった…
その1週間後、佐柄 瑛美は短い生涯を終えた。
次へ続く
ごめんなさい、ノーコメントです。




