リズの記憶
あらすじ:私リズ!お父様が、私の前世について話していくわ!私は覚えていないけれども…お父様…いや、お兄ちゃんが持つ私の知らない記憶…少し怖いけど…聞きたい。
「私が保持していない記憶…」
リズはケンドリックを見る。視線を感じたケンドリックはリズに微笑み、口を開く。
「その前に、私とリズが共通して持っている記憶の話をしましょう。リュミーは多少把握していると思いますが、公爵とタイラー君は把握していないようなので…」
タイラーは2人の前世について話し出した。【日本】という国で生まれ育ったこと、そこでは【この世界】をモデルにしたような物語が作られていたこと、そしてその物語の主人公がリズであり、ケンドリックはリズが不幸な目に遭わないために行動していたことを…
ケンドリックの話を聞いたグレント公爵が、ケンドリックに話し掛ける。
「なるほど...だからワリッツァの件をいち早く察知できたのか…」
「実の息子であった私ですら1度も掴めなかった証拠を掴めたのも、その記憶のお陰なんですね。」
タイラーの言葉に、ケンドリックは苦笑いをしながら返す。
「何か…卑怯な技を使ったようで少し気が引けるんだけどね…」
「そんなことはありません!そのお陰で、私も兄も救われたのですから!感謝してもしきれません!」
「そう言ってもらえるとありがたいよ…それで、問題はこの後なのです。」
ケンドリックはリズをチラリと見て、再び話し始める。
「今、リズにはある記憶が欠落しております。…少し長くなるかもしれませんが、お聞きください。」
「リズの前世、須藤 紗貴とその親友だった、佐柄 瑛美という女性について…」
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ーーー日本、とある街ーーー
「瑛美ちゃんと遊ぶのつまらない。」
そう言われるのは何度目だろうか…
1人の少女は教室の隅で咳き込みながら思い出す。
小学校に入ってから身体が弱くなり、少し走っただけでもすぐに疲れ果ててしまう。
両親も先生も、「体力をつければ大丈夫!」と言うが、体力をつけるための運動ですら追い付かない。
病院に行っても原因がわからない。周りの大人は皆「外で遊べ」と言ってくる。でも遊んだら着いてこれずに「つまらない」と言われる。
何回も繰り返したこの流れ…少女はもう慣れてしまった。はじめのうちは流れていた涙も、もう出ない。
「ケホッ…もう、良いかな…」
「何が良いの?」
少女…佐柄 瑛美は声がする方へ顔を向けた。
見ると、快活そうな少女が瑛美を見て首をかしげている。
「あ、あなたは誰?」
「私?私は須藤 紗貴!先週この街に引っ越してきたんだ!…といっても、昔ここに住んでいたことがあるんだけどね?…あっ!」
紗貴は瑛美を見て、何かを思い出したように話し掛ける。
「もしかして、瑛美ちゃん?覚えてる?幼稚園で一緒だったよね?」
そう言われた瑛美は記憶を辿る。
(確かに、元気だった時に紗貴ちゃんって子と遊んだ記憶がある…でも…)
瑛美は再び俯く。それを見て、紗貴は不思議そうに瑛美に話し掛ける。
「瑛美ちゃん?どうしたの?お腹痛いの?」
心配そうに尋ねる紗貴に、瑛美はポツリポツリと話し出した。
「紗貴ちゃん…私ね、ちょっと前に病気になって…でも、病院に行っても何の病気かわからなくて…お父さんもお母さんも…外で遊べば元気になるって言うけど…元気に…なれなくて…っ…クラスの皆にも…つっ…つまらないって…!っ…」
気付けば、瑛美の目には涙が溢れていた。
もう、慣れたつもりだった。何を言われても涙は出ないと思っていた。
「瑛美ちゃん!」
瑛美の身体に、暖かい感触が伝わる。
紗貴が、瑛美を抱き締めていた。
紗貴は何も言わない。ただ、その優しい暖かさが、瑛美にとっては嬉しかった。
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「ご、ごめんね…服、濡らしちゃって…」
「良いの良いの!洗濯すれば大丈夫だから!洗濯するのはお母さんだけど!」
そう言った紗貴は、瑛美に手を伸ばす。
「瑛美ちゃん!遊ぼ!」
「紗貴ちゃん…でも私…」
「外で遊ぶだけが遊びじゃないよ!私の家においで!」
紗貴本人にとっては何気ない言葉
その言葉が、瑛美にとっては最大の救いになったことを、紗貴は知らない。
次へ続く!
回想が終わったと思ったらまた回想です。
この作品では結構大事な部分なので、少しお付き合いください。




