実(みのる)と佳雄(よしお)
あらすじ:私リズ!私のお祖父様のお祖父様と曾お祖父様の前世のお話よ!
(少しキツい描写があります。ご注意ください。)
実と佳雄は兄弟である。
両親は2人が小学生の時に他界しており、中学生となった今では叔父夫婦と暮らしている。
叔父夫婦も従兄も優しく接してくれているが、その優しさが逆に2人には辛く感じてしまっていた。
そのため、2人はいつも一緒だった。年子ということもあり、余計に2人は固まって行動していた。
その日も、そうだった。
中学からの帰り道、兄である実は弟の佳雄に話し掛ける。
「俺、高校に入ったらバイトするんだ。少しでも叔父さん達の負担を減らしたくて。」
「実兄さん…よし、決めた!」
「?どうしたんだ?」
「俺もバイトするよ!兄さんだけに無理はさせない!叔父さん達は凄くいい人だけど...いや、だからこそ!俺達だけで生きていけるように頑張りたいんだ!」
「佳雄…ありがとう!俺達で頑張ろう!」
実が感謝を伝えると、佳雄はニカッと笑って駆け出した。
その時、実は信じられないものを見た。
(おい!あのトラック…!信号無視じゃねえか…!)
一つ向こうの信号を無視してきたトラックが、今佳雄が渡っている横断歩道に突っ込もうとしていた。
実の身体は勝手に動いていた。
(間に合え…!)
実が佳雄を突き飛ばした瞬間、実の身体は大きな衝撃と共に宙を舞った。
べちゃり、と音が鳴る。
薄れゆく意識のなかで実は思った。
(良かった…佳雄が無事で...)
もう身体の感覚は無い。もう間に合わないと実は自覚していた。
(後悔はある。もっとやりたいことはいっぱいあった。…でも、佳雄を助けることが出来た。それで十分だ。)
実の意識が完全に途切れる…
瞬間
周囲は炎に包まれた。
おそらくトラックか、事故に巻き込まれた車の燃料が漏れたのだろう。
実は最期の力を振り絞り佳雄を見る。
佳雄に炎が襲いかかる。
(止めろ!止めてくれ!神様…佳雄を、佳雄を助けてくれ!)
実の意識はそこで途絶えた。
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「…はっ!…はあっ!はあっ!…ゆ、夢か…?またなのか…」
グレント公爵家当主であるカイル・ラ・グレントは夜中に目を覚ました。
彼にはいわゆる「前世」の記憶がある。その事は誰にも言っていない。
「…誰にも言えない。というより、信じてもらえないだろう。」
カイルには妻と子がいたが、常に孤独を感じていた。
「佳雄…」
カイルは前世の記憶を取り戻してから、あの日の光景がずっと思い起こされていた。
「あの後は…どうなったんだ…佳雄、頼む…助かっていてくれ…!」
カイル、いや、実の後悔は佳雄の安否、それだけだった。
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「あなた、何を隠しているの?」
カイルはある日、妻であるエイミーに尋ねられた。
「か、隠しているって…そんなことはないよ。」
「嘘。最近、毎日うなされているじゃない。」
エイミーはカイルの目を見て尋ねる。
「『ヨシオ』って誰?」
カイルの心臓がドキリと音を立てた。カイルはエイミーに尋ねる。
「な、何故その名前を…!」
「あなたが苦しそうにその言葉を発していたのよ。内容から察するに、名前だとは思ったけど、この国では一度も聞いたことがないのよ。…!あ、あなた!?大丈夫なの!?」
「えっ?」
「こんなに青い顔をしているじゃない!」
「そ、そんなこと無いよ?」
「あるわよ!鏡を見なさい!」
カイルはエイミーと屋敷の衛兵に介抱されながら、自室へと戻った。
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「ごめんなさい...私があんなことを聞いたから...誰にだって触れられたくないものはありますのに…」
エイミーはカイルに謝る。
カイルは少しおどおどしながらエイミーに答える。
「も、問題ないよ!…触れられたくない訳じゃないんだ。ただ、信じてもらえないんじゃないかと思って…」
「信じてもらえない…ですか?」
「ああ、今から言う話は私にとって本当の話なんだが、普通では到底信じられない話なんだ。…でも、話すよ。」
カイルは一息付いて、再び話し始める。
「私の前世の弟、佳雄について。」
次へ続く!
過去編、多分もう1、2話くらい続きます。




