ケンドリックの仮説
あらすじ:私リズ!お父様が執務室に向かっていったわ!何か考え事があるみたい…?
ケンドリックは執務室で唸っている。
「話を聞く限り…可能性は高いのだが…うーん…でも、そんな上手い話はそうそう無いだろうし…」
ケンドリックは悩んでいた。エリーゼとの会話中に持った違和感についてだ。
(エリーゼは入院中に友達とゲームをしていた...そして全部クリアをしてからの記憶はない…と)
この時点でケンドリックはエリーゼの前世を特定していた...が、
(状況を聞く限り、ほぼ間違いなくエリーゼの前世は【彼女】だ。ただ、エリーゼもリズも【彼女】についての記憶がないから、確信とまでは至れない。)
「何かきっかけがあれば良いんだけどな…」
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須藤 健斗には想い人がいた。
彼女の名前は 佐柄 瑛美、健斗の妹である紗貴とは幼少期からの友人だ。
瑛美は幼少期の頃は明るく社交的な少女であったが、小学生の時期にかかった病気のせいで入退院を繰り返していた影響で、次第に明るさが失われていき、退院をしても部屋に篭りがちになってしまった。
それを紗貴が救ってくれた。紗貴は無理に外に出そうとせず、部屋の中で楽しくなれるように様々な遊びに付き合ってくれた。それもあって瑛美は少しずつ外に出るようになり、中学生の頃には生来の明るい性格に戻っていった…
2歳年上の健斗は紗貴と共に瑛美を支えていった。そうした中で、健斗と瑛美は少しずつ惹かれていった。
しかし、高校生なった瑛美は、病気により再び入院、その後1度は退院するものの、病状が悪化し再び入院、その後短い人生を終えることになった…
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(そもそも、このゲーム自体特別有名なわけではない、その上全部クリアをするのにとてつもない時間がかかる。つまり、クリアをした人間は限られていくわけだ。)
ケンドリックはそこから考えた。ただでさえクリアをした人が少ないゲーム、そのゲームを病院でクリアした人はいないだろう…健斗の妹とその親友を除いて...
つまり、状況だけで言えばほぼ確定なのだ。ただ、本人たちが覚えていないので証明しようがない。
「うーん…どうしようか…」
ケンドリックは考えた。
考えて…考えて…考えるのを止めた。
「後回しにしよう。今証明出来たからといって何か変わるわけでもないし…何より、先ずはリズが無事に卒業することが大事だ。」
そう、転生者とはいえまだリズは中等部生、きょうだいも、まだまだ学生なので親としてやることは多い。
「せめて、リズが卒業するまで待った方が良いかもしれない。」
そう思ったケンドリックは、彼女たちの前世については一旦保留することにした。
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ーーーブリーク国立学園ーーー
(な、な、何…?これ何?どういう状況?)
今は昼休み、リズは友人と食堂で昼食をとる予定だったが…
(何故イーヒルト公爵令息が目の前にいるのよ!!!)
リズの前にいるのはタイラー・ラ・イーヒルト公爵令息、なんと初対面である。
(か、顔が良い…!って!【紗貴】が出てる!落ち着きなさい!)
リズは笑顔を崩さないようにしているが、心の中は大騒動であった。
タイラーが口を開く。
「リズ嬢…お久し振りですね。」
「えっ?」
「実は昔、この国で行われたパーティーでお会いしているんですよ。…貴女は覚えていなかったようですが…」
「も、申し訳ありません。」
「いえ、謝らなくて良いのですよ。お互いにまだ幼い子供でしたし…それ以降は全くお会いしてませんから。」
「そ、そうだったのですね。…いいえ、それでも!1度でもお会いした相手を忘れるなんて失礼でしたわ!」
「いえ、本当に大丈夫です…!…あ、ではこうしましょう。」
タイラーは席を立ち、リズの側へ行き、手を差し出す。
「リズ嬢、もしよろしければ、私と街を回ってくれませんか?」
次へ続く!
さて、イーヒルト公爵令息は何を考えているのでしょうか…?




