リズの前世
あらすじ:私リズ!ついにお父様の前世を突き止めてやりましたわ!…何故わかったかって?秘密ですわ!
リズの言葉に動揺するケンドリックを見て、リズは思った。
(私の推理は完璧だったみたいね!)
実際のところ、エリーゼに前世の記憶があることは突き止めていないので、ギリギリ完璧ではないが、それでもかなりの推理力ではあると言える。
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リズは前世の記憶を完全には思い出しておらず、ゲームの内容とその周辺の記憶のみ保持している。
リズは前世を90歳まで生きていたが、ゲームを完全クリアしてからの記憶は彼女にはない。
彼女は、中学生の時にこのゲームを始めたが、完全クリアをしたのは大学を卒業した後であった…
つまり、彼女には中学から大学までの記憶しか無い。
リズの前世は元々乙女ゲームにはそこまで興味がなかった。しかし、ふとしたきっかけで始めたのがこのゲームである。
彼女はハマりにハマった。ストーリー自体はいたってシンプル、しかしそれを補うかのように大量のストーリーとスチルが隠されていた。
その隠し要素が彼女を燃え上がらせた。
ゲーマー気質だった彼女は学生時代をこのゲームに捧げた。途中、ある事情により出来ないときもあったが、ひたすらルート攻略とスチル集めに勤しんだ。
数年かけて、全てのストーリーとスチルを獲得した彼女は喜びに打ちひしがれた。リズの前世の記憶はそこで止まっている。
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「なぜ…なぜ分かったんだい?」
「その質問をするということは、私の質問に対する返答は『はい』と言うことですわね。」
ケンドリックは頷く。
リズは、ケンドリックの反応を見て微笑んだ。
リズは少し誇らしげな様子で話し出す。
「まず、転生者である根拠は先ほど話しましたね?実を言いますと、『あなた』を特定できたのはお父様が転生者であると確定してからですわ。」
「…あの僅かな時間で突き止めたのかい?」
「ええ、確定した瞬間、私の記憶にあったお父様に対する出来事をつなぎ合わせることで、特定いたしました。」
リズは指を突き立てて話し始める。
「まず1つ目はお父様の寝言ですわ!」
「ね、寝言!?」
「ええ、マキシーが産まれた後、お父様はたまにうなされるようになりましたの。その時に『サキ』、『エイミ』という寝言を聞くようになりました。」
ケンドリックは冷や汗を垂らした。その言葉に心当たりがあるからだ。
リズは続ける。
「当時は何も思いませんでしたが、今思えば、あれは人の名前…しかも日本人の名前を発していたのですね。そして私、その内の1人に心当たりがありますの。」
ケンドリックは驚愕した。
(私の中ではリズの前世が何者なのかはある程度絞れた…が…1人?リズは間違いなく1人と言った…つまり…!)
(リズは前世を完全には思い出していない…?)
ケンドリックはリズを見た。姿はリズのままだが、身振り手振りがいつもと違う。
(…わかった。彼女が『誰』なのか…!)
リズは突き立てた指を2本にして話をする。
「2つ目、これで私は確信しました。」
リズはケンドリックを指差し、話す。
「お父様のその癖、何か考え事をするときに右手の人差し指と中指で唇を挟む癖…!これをする人間は前世を含めて1人しか見たことありませんの。」
「…じゃあ、私が2人目って訳だね。」
ケンドリックはしらばっくれた。無駄だとは彼自身も理解している。
リズは笑った。いつものリズでは絶対にしないような、いたずらっ子のような笑みで。
リズの姿をした彼女が口を開く。
「その、無駄なしらばっくれも変わってないね。」
『彼女』の言葉にケンドリックは溜め息をつく。
「まさか…こんな形で再会するとはな…」
「私も、会えるとは思っていなかったよ。」
彼女はニヤリと笑った。
「久し振りだね。お兄ちゃん♪」
須藤 紗貴
これがリズの前世の名前である。
次へ続く!
次回は会話が多めになります。




