ケンドリックの前世
あらすじ:私リズ!お父様も私と同じ転生者だったわ!もしかしたら、もっと転生者がいるのかもしれないわね!
リズ、エリーゼ、ケンドリックには前世の記憶がある。
そして、思い出した時期はバラバラではあるものの、3人ともこの世界が『どりーみんっ♪スクールラヴァーズ♪』の世界であることも理解している。
しかし、リズとエリーゼは前世の記憶全てを思い出したわけではない。
リズもエリーゼも、ゲームに関わる期間の記憶のみ保持している。
少し前、エリーゼはルーチェに「ゲームの記憶と、どのように命を落としたかを思い出した」と言っていたが、8割正解で2割が間違いである。
命を落とした原因は覚えているが、命を落とす周辺の記憶は彼女に無い。
ケンドリックは前世の記憶を全て保持している。
須藤 健斗 これが彼の前世の名前である。
彼が前世の記憶を思い出したのは幼少期、そのときにはまだゲーム周辺の記憶しかなかった。
彼が前世の記憶を全て思い出したのは、リズの弟で4人目の子供であるマキシーが誕生した瞬間である。
彼は思った。これで自分の役割に一段落着いたのだと。
ケンドリック、いや健斗は89歳でこの世を去っている。
おそらく、最初から全ての記憶が戻っていたら、エリーゼとは結婚しなかったであろう。年齢のこともあるが、彼には前世で愛を誓った相手がいたからだ。彼女を差し置いてエリーゼを愛することはできないから、記憶が全て戻らなかったと彼は推測している。
もちろん、今世ではエリーゼのことを愛している。ケンドリックとして生きた今までの積み重ねのお陰だ。『彼女』のことは忘れることは出来ないが、『彼女』はあくまで『健斗』が愛した女性、彼は今、ケンドリック・ラ・マイメリーである。
そう割りきれるのも彼が長く生きてきたお陰であろう。
そのため、彼が動揺するのはあまり無い。エリーゼが予想外の行動をしたときくらいである。
しかし…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(今、リズは何と言った?…ルーチェ…は違う、彼女は口が固い、現にリュミーは驚いている。となるとエリーゼ…もなんだかんだで口は固い方だ。つまり…)
ケンドリックはリズを見る。リズは後ろに立つリュミーと、彼女たちの友人であるメイルに向かって笑顔を向ける。いわゆるドヤ顔だ。
(恐らくリズ自身が転生してきた証明のために我が家に招待したのだろう。)
ケンドリックは頭を抱えて溜め息をついた。
(まさかリズも転生者とは…!親子で転生してきたとか、とんでもない確率だな…)
「オーッホッホッホ!!!無事に証明できましたわ!ではリュミー、メイル、申し訳ないのだけれども、私の部屋に戻ってくださる?私はお父様と、少しお話がありますの。」
2人は頷き、執務室から出ていった。
リズが私の方を向き、話し掛ける。
「ではお父様、いくつか聞きたいことがあります。」
「…ああ、出来る限り答えるよ。」
「まずは…記憶を思い出したのはいつですか?」
「幼少期の頃だよ。当時は実感はなかったが、勉強していく内に『この世界』を理解したんだ。」
「なるほど...では次に、私のバッドエンドルートを潰したのもお父様ですか?」
「半分正解。リズが命を落とすルートを潰したのは間違いなく私だ。ただ、他のバッドエンドルートはエリーゼだよ…無意識だけど。」
「さすがお母様ですわ!…そう!そのお母様を受け入れたのも、お父様が転生してきたからですわね!」
「あ、ああ、そうだよ…多分。」
ケンドリックは先ほどのリズの発言を聞いて確信した。
(リズはエリーゼが転生者だと気付いていない…?)
そう、リズはエリーゼが転生者だと言う可能性は完全に捨てていた。何故なら…
エリーゼの性格がゲーム内の物とほぼ同じだったからである!
とはいえこれは裏設定、ゲーム本編ではもっとお淑やかな夫人として描写されている。
ゲームのケンドリックはエリーゼの性格をあまり好ましく思っていなかった。そのため、エリーゼはお淑やかの皮を被ることにしたのである。リズはその裏設定を知っていたため、ケンドリックが転生したことでエリーゼの本来の性格を受け入れたと考えた。
逆にケンドリックは裏設定を知らなかったため、エリーゼは転生者であると目星を着けていたのであった…
ケンドリックは考える。
(エリーゼが転生者であると伝えるべきか…いや、止めておこう。混乱するだろうし、何より…)
(面白そう!)
「お父様、何を考えていらっしゃるのですか?」
「いや?リズが自力でこの考えに至れるとはと感心していたんだ。」
「そ、そうですか…では、最後の質問です。」
リズはニヤリと笑った。
「あなたの前世の名前は須藤 健斗ですか?」
次へ続く!
半分くらい説明になっちゃいましたね。




