転生令嬢、叫ぶ(2)
ゆるゆる頑張る令嬢、第二章開幕です!
一応第二章で完結させる予定です。
「どういうことなの!!!」
公爵家のある一室で令嬢が叫んだ。
「お嬢様!どうされましたか!?」
「い、いえ、なんでもないの、気にしないで。」
「お嬢様が叫んだら誰だって気にしますよ!」
「ほ、本当になんでもないの。し、仕事に戻って良いから!」
「…わかりました。後で教えてくださいね。」
侍女が業務に戻ったあと、彼女は心の中でさらに叫ぶ。
(ま、まさか…この世界は…この世界は…)
(『どりーみんっ♪スクールラヴァーズ♪』の世界じゃない…!しかも…しかも!私…!)
(主人公じゃないのおおおおお!!!)
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「それで、お嬢様は前世の記憶とやらを思い出したと…」
「そうよ!」
「因みに…お嬢様のお名前は分かりますか?…今のですよ?」
「当然よ!この私こそ!マイメリー公爵家が長女!!リズ・ラ・マイメリーよ!!!」
「ああ、良かった。一応熱も計っておきますね。」
「別に熱でおかしくなったわけではないわよ!」
「そうですね、お嬢様は熱じゃなくてもおかしいですしね。」
「わ、私そんなにおかしくないわよ!」
「隣国の王子の顔面にパイを投げつける令嬢はまともではないです。」
「あ、あれはあちらが悪いんでしょう!我が国を侮辱したのですから!」
「ええ、それは分かりますが、さすがに顔面にパイは無いです。」
「ま、まあ、そうよね。お父様とお母様にも『もったいない!』って怒られてしまったし。」
「そういう問題ではないとは思いますが…」
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「それで、前世の記憶とやらを思い出したお嬢様はこれからどうするのです?…まさか、『ラブラブ学園 にゅージェネレーション♪』みたいに婚約者のいる方にアプローチをかけるつもりですか!」
「そんなことするわけ無いでしょ!婚約者略奪なんて後が恐いじゃないの!!!」
「出来ないと言わないところがお嬢様らしいですね。」
「当然よ!この私がモテないわけ無いもの!」
「その割にはお嬢様には婚約者がいませんけどね。」
「し、仕方ないでしょ…パイ投げ以来誰からも申し出が来ないのよ…だから!」
リズはすくっと立ち上がり、宣言する。
「私は学園で婚約者を見つけるわ!それで、お父様とお母様みたいにイチャイチャラブラブしてやりますわ!!!オーッホッホッホ!!!」
リズは内心驚いていた。
(ゲームと同じ発言しちゃった…もしかしたらゲームのような展開が起こるかもしれない…だから!)
リズは密かに決意した。
(バッドエンドだけは避けなければ…!)
『どりーみんっ♪スクールラヴァーズ♪』には数多くの分岐がある。
主人公の能力、攻略対象の親愛度だけでなく、攻略対象同士の友好度や親愛度のバランスによって結末が変わってくる。
あまり波が多いストーリーではないものの、豊富なシナリオとスチルがこの作品の魅力である。
このゲーム、ほとんどのシナリオはノーマルエンド以上であるが、ビターエンドやバッドエンドが僅かに存在する。
ビターエンドは、攻略出来なかったがゆえに離ればなれになったり、別の道を進むことで将来未婚で過ごすことになるなど、切ないくらいの終わり方である。
しかし、バッドエンドは違う。追放ならまだましな方、場合によっては攻略対象や主人公の命が危ぶまれる終わり方もあるのだ。
とは言え、まともに生きていればこのような展開にはならないのだが…
(一度やらかしているからなあ…)
相手に過失があったとはいえ、隣国の王子にパイをぶん投げたリズは必要以上にビビっていた…
(と、とにかく!頑張るわよ!)
もう一度、リズは決意をするのであった。
次へ続く!
まさかのエリーゼの娘も転生者…!これはどうなるのか…!バッドエンドは回避できるのか…!




