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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幽霊が見える子

作者: 永月

 私には、幽霊が見える。

 幽霊と言っても、みんなお友達なので怖くない。

 今日は、可愛い女の子が来たみたい。


「たーだいまー! 我がマイホーム!」

 

 ……と、言っても返事はない。

 それも当然、引っ越したばかりの部屋ですから。

 今日からひとり暮らしです。

 

「さーて、さっき買った大福でも食べ……」

 

 ふと、顔を上げると、部屋の角に小さな女の子がいた。

 

「あれ……新築だよね? ここ?」

 

 もしかして……幽霊?

 じっと、こちらを凝視している。

 

「こ、こんにちは~? 今日からここに住むレイコです。……な、仲良くしてね——」

「ち、近寄るな!!」

 

 ものすごく警戒されてる……。


「こ、怖くないよ~ほら、猫じゃらしだよ~」

「バ、バカにしてるのか?!」


 幽霊ちゃんは警戒を解かず、部屋の角に身を置いた。

 ど、どうしようかな……?

 

 すこし頭の中で思考を巡らせる。

 

 ……そうだ!

 すぐに台所で"あれ"の準備を始める。

 

「……?」

 

 幽霊ちゃんは、じっと私を観察している。

 この匂いが気になるのでしょう。

 

「ふふん、今日のごはんは、カレーです!!」

 

 そう、餌付けである。

 

「……」

 

 物欲しそうな顔で、食卓に置かれたカレーを見つめている。

 

「んーお腹空いたなぁ~。二人分しかないけど、両方食べちゃおっかな~」


 おびき出すために、すこし挑発してみる。

 

「……(グ~)」

 

 幽霊ちゃんのお腹の鳴る音が聞こえた。

 

「別に、追い出したりしないんだからさ、一緒に食べよ?」

「えっと……頂きます」

 

 諦めた様子で食べ始めた。

 

「ねぇ、あなたどこから来たの?」

「な、馴れ馴れしくしないで下さい。誰が教えるもんですか」

「じゃあ、名前くらい教えてよ」

「……メイです」

「よろしくね、メイちゃん!」

 

 メイちゃんの頭を当たり前のようになでる。

 なでなで。


「だから……気安く触らないで下さい!!」

 

 触ったことにキレて、カレーを投げてきました。

 なんてことをしてくれるのでしょう?



 次の日



「ただいま——って、なんじゃこりゃあああああ!!」


 家に帰ると、家具が部屋中をぐるぐると宙に舞っていた。

 これって……ポルターガイスト!?


「メイちゃんなにしてんの!? 早く止めて!」


 きっとメイちゃんのせいに違いない——


「な、なんですかこれぇ!?!?」


 メイちゃんはビビり散らかしていました。

 どうやらメイちゃんのせいではないようです。


「メイちゃんのせいじゃないの!? どういうこと!?」

「き、貴様! 私のテリトリーで暴れるとはいい度胸ではないですか?! 絶対に許しません!」


 そういうと、メイちゃんは部屋中の家具を、飛び回る家具に向かって投げつけました。


「ちょっと待ってメイちゃん! その電子レンジは高かったから投げないで!」

「とどめです! 必殺——」


 ——と、何か決め台詞を言う瞬間に。


「ぶへぇっ!?」


 メイちゃんの額に飛び回る家具が当たってしまいました。

 ついでに、私の電子レンジにも当たりました。


 メイちゃんがバタンッ……と倒れたところで、ポルターガイストも止まりました。

 なんだったんでしょうか。

 メイちゃんが無意識で起こしてしまった……とか?


「……あ、電子レンジ壊れている」


 しばらくして。


「————っは!? レイコ、あのポンコツポルターガイストは!?」


 気絶していたメイちゃんが目を覚ましました。


「どっか行っちゃったよ」


 ついでに私の電子レンジも。


「ほら、メイちゃん。額に擦り傷できてるよ。消毒するから動かないでね?」

「うっ、痛いのは嫌です……」


 消毒液の入ったボトルとガーゼをメイちゃんの額に近づける。


「痛いのは一瞬だから……っあ」


 誤って、大量の消毒液をメイちゃんの額にぶちまけました。


「いっったああぁぁぁ!!」

「わああああああ!! メイちゃん、目! 目、洗って!!」


 目に入ったかもしれないので、急いで顔全体を水で洗わせる。


「な、なにするんですか!? 全然一瞬の痛みじゃないじゃないですか!!」

「ご、ごめんごめん!」

「水で洗ったら消毒の意味がないです。もう一度やりましょう。今度こそお願いしますよ」

「うん! 任せて、二度も間違いは犯さな——っあ」

「ぎゃあああああぁぁっ!!!」


 またぶちまけてしまいました。

 当然のことながら、メイちゃんはブチ切れていました。



 次の日



「ただいまー」

「おかえりです、レイコ」


 迎え入れてくれるメイちゃん。

 しかし、珍しいものを抱えています。


「……あれ? そこにいるの——ネコ?」

「ん? ホワイトスフィンクス一世のことですか?」


 うん。そっちの名前の方が断然気になる。


「私のペットです」

「昨日までいなかった気がするけど」


 この子も幽霊なのかな?


「可愛い~なでさせてもらおう」

「気をつけてくださいよ。逃げると面倒——」


 メイちゃんが言い終わる前に、ネコは窓から飛び出した。


「あああぁ!? スフィンクス一世が!?」

「ヤバい! 捕まえないと!?」


 すぐに家を飛び出し、ネコを追いかけた。


「待てえ!」

「待つのです! ホワイトシャンクス!」


 なんか名前変わってない?

 赤髪の人入ってますよ?


「ほら、猫じゃらしです! ホワイト二世!」


 やっぱり名前変わってるね?

 ホワイトしか合ってないよ?


「……ってまずい! そっちは交差点! 戻ってきてネコちゃ——」


 その瞬間。

 ネコは交差点を飛び出した。

 直後、やってきたトラックに轢かれてしまった。


「あ……」


 メイちゃんの顔が曇る。

 やってしまった。

 まだ幼い子に、この光景は辛すぎる。

 どうすれば……。


「にゃーん?」

「……あれ?」


 いつの間にか、後ろにさっきのネコがいた。

 この子、幽霊でした。


「なんだびっくりした~轢かれたかと思ったよ!」

「心配させないでください、ホワイトモフモフ」


 うん、もうホワイトちゃんでいいや。



 次の日



「たーだいまー……ってあれ? 何かいい匂いがする」


 ふと、台所を見るとメイちゃんが何か作っていた。


「お帰りです」

「この匂い……もしかしてカレー?」

「そうです」

「もしかして……私のために?」

「あ……いや、別に! レシピ通りの量で作った方がやりやすかっただけです。……な、なんですかその目は!」


 よく見ると、手先にたくさん絆創膏が貼ってあった。

 慣れない料理をしてくれたのだろう。


「メイちゃん~!!」

「な、なんですか!? いきなり抱きつかないでください!」

「いや~なんか感動しちゃって」


 我が子がいたら、こんな気分になるのだろう。いやもう、うちの子ということにしよう。


 なでなで。


「き、気安く撫でないでください! 料理の邪魔です! 離れてください!!」


 いやぁ、うちの子は世界一可愛いです。


 しばらくして。

 カレーが出来上がり、二人で食卓を囲む。

 

「……どうですか?」


 一口食べたところで、メイちゃんが不安そうに感想を求めてくる。

 

「世界一美味い……」


 当然の回答。

 じゃがいもや人参のサイズは不均等な……

 愛情たっぷりのカレーです。


「……そうですか」


 メイちゃんはほっとした様子。

 すこし微笑んでるように見えた。


 

——————



 私は森の中の小さな一軒家で暮らしていた。

 ひとけの少ない、寂しい場所。

 お父さんは、私に大きな愛情を持って、育ててくれた。


 でも。


 私にはお母さんがいない。

 生まれた時に亡くなったってお父さんから聞かされた。

 家に居ても、面白いことなんてない。

 だから、森の中で遊ぶ方が、ずっと楽しかった。自然と外に出ることが多くなった。


 ある日、いつも通り外に遊びに行った。


「外に行くのかい? 気をつけて行くんだよ」

「分かってるよ~」


 私には、お父さんしかいなかった。

 外に行くときはいつも声をかけてくれた。


 お父さんは除霊師という幽霊を退治する人だ。

 それがお父さんのお仕事。


 だから、お父さんを殺そうとする幽霊はたくさんいた。

 

 その日の帰り、玄関先でお父さんが真剣な顔で立っていた。

 私が帰るや否や、お父さんが口を開いた。


「メイ、この家に幽霊がいるかもしれない」

「え、倒してないの?」

「どこかに隠れている。お父さんから離れるなよ」

「う、うん」


 驚いた。

 家で幽霊が出たことはなかったから。

 一体どこから来たの?


「さっきまで居なかったのだが……急に入り込んだみたいだ」


 急に入り込んだ?

 私を迎える時に、入り込んだのかな?


 「……?」


 なんだろう?

 

 さっきから体が重い。

 何だか変だ。

 幽霊の仕業?


 いや……あれ?


「メイ、後ろから気配を感じたら直ぐに——」

「しめたのだ!!」


 ドスッ——


 突然、体が軽くなったと思うと。

 幽霊から打ち出された貫手が、お父さんの体を貫いていた。

 

「——え?」


 鋭い爪が、腹を深く抉っていた。

 誰が見ても、致命傷であるとわかるほどに。


「はっはっは! バカなのだ! バカなのだ! まさか子供の体に隠れていたら見逃すとは!」


 口角を吊り上げて、幽霊は愉快そうに笑った。

 私に取り憑いて、お父さんを殺すタイミングを伺っていたのだ。


「っが……クソ……」

「お父……さん?」


 お父さんが倒れた。

 いつも負けることなんてなかったお父さんが……。


「目障りだったぜ! ようやく暴れられるのだ!」


 どうしよう……。

 お父さんが……。

 

 お父さんの息がだんだん弱々しくなっていく。


「今、終わらせてやるのだ」


 待って。

 行っちゃダメ。

 行かないで。


 誰か……。

 助けて……。

 

『メイ?』

「……え?」


 気のせいだろうか?

 声が……聞こえる。


『メイ。大丈夫』


 気のせいじゃない。

 誰かが語りかけてくる。

 どこか懐かしい様な……安心する声だ。


『お母さんが……あなたを守ってあげる』


 お母さんだ。

 会ったことないけど、きっとそうなんだ。


「お母さん……」

『なあに?』

「……お父さんを……助けて!」


 泣きそうになる声を堪えて、そう願った。


「終わりなのだ。くたばれ!」


 幽霊がお父さんに手を出す前に、私の背後から大きな何かが幽霊に襲いかかった。


「——にゃ!? 何者!」

「メイを……泣かせるなああああああ!!!」


 その何かは、幽霊に馬乗りになるようにとびかかった。


「人間の幽霊か!? 舐めやがって、先にお前を——」

「——っ!!」


 幽霊が視線を逸らした。

 

 お父さんは構えた。

 視線が外れた、その一瞬を逃さず——


「っは!? テメェエエエエエ!!!!」


 お父さんは渾身の一閃を浴びせた。


「ぎゃああああああ!!!」


 幽霊は大きな断末魔をあげながら、塵になって、消えていった。

 助かった……でも。


「お父さん!!」

「メイ……」


 お父さんは、力なく床に倒れていた。

 床が血で広げるほど、血を流してしまった。


「すまない、メイ」


 その言葉から、もう助からないと悟ってしまった。

 でも、私は受け入れられなかった。


「諦めちゃダメだよ!!」


 私は泣きながら、出血を止めようとした。

 でも、全然止まらなかった。


「う、うぅ……」


 もうだめだ。

 そう思った時、お母さんは囁いた。


『メイ、お父さんとお別れしたくない?』


 生まれてから、私にはお父さんしかいなかった。

 まだ、お父さんと一緒に居たかった。


「お別れなんて……嫌だよ……」


 涙ながらに、そう答えた。


『分かった』


『メイ、お母さんの言う通りにしてね』



——————


 

 メイちゃんと暮らして、暫く経った。


「ただいま……」


 その日、私は調子が良くなかった。


「おかえり……? 今日は元気が無いですね?」

「いやあ、そんなことないよ?」

「嘘ですね。バレバレですよ?」


 やっぱりわかっちゃいます?

 でも、あんまり言いたくないなぁ。


「……ふん」


 こっちを見つめながら、隣に座ってきた。


「な、撫でてあげるので元気だしてください」


 メイちゃんが私をなでてきました。

 恥ずかしいのか、すこし頬を赤らめています。

 

 あのメイちゃんがこんなにスキンシップをしてくれるとは。

 思わず胸が高鳴りました。


「——メイちゃん~!」

「なっ、いきなり抱きつかないでください!」


 なんて良い子なんでしょう?

 しばらくの間、頭をスリスリ擦り付けました。

 数分、抱きついて落ち着いた。


「もう嫌なことは吹き飛びました! レイコ、ごはんでも作ります!」

「変な人です……」


 メイちゃんのおかげで、嫌なことは忘れました。

 忘れる事ができたのです。

 

 ——彼が来るまで。

 

 ルンルンな気分で、私はご飯を作っていた。

 ふとした時、家のチャイムが鳴りました。

 

「あら、誰だろう?」


 それは、唐突に訪れました。


「はーい、どちらさ——」

「——よう?」


 そこにはナイフを持った、見知った男性がいたのです。

 それは、私が今日振った相手でした。


 ブスッ——


 視界が揺れて、腹のあたりがじわりと染まりました。

 ドアを開けた瞬間、私は彼に刺されていました。


「——っ……!?」

「久しぶり? 楽しかったか? 人の恋心を弄びやがってよ!?」

「——ナイ……フ?」


 お腹に刺さったナイフを見て、目を見開いた。

 刃が、肉を裂いて奥へと沈んでいった。

 体に異物が入り込んだような不快感が、じわじわと広がる。


「——うっ……あ゛……」


 崩れ落ちたように尻もちをつきました。

 私は流血を抑えるように、お腹を押さえながら後ずさった。


「どこ行くんだよ? もう逃がさねぇぞ?」


 彼が近づいてくる。

 強烈な殺意を感じる。


「やめ……て……!」

「……やめて? 俺のことは簡単に振ったくせに」


 弱弱しく、私は懇願した。

 あの様子だと、もう何を言っても届きそうにない。


 付き合った経緯は、2ヶ月ほど前、突然告白されたことから。

 断る理由もなかったので、付き合いました。

 

 ですが彼は、性格に難がありました。


「なんで振ったんだよ……。なぁ!?」

 

 強烈な愛情の執着。

 恋に疎い私は理解できず、メイちゃんのこともあり、別れることにしたのです。


「……」

「答えてくれねぇのかよ」


 私が返事もできずにいると、彼はふっと諦めたような表情を見せた。


「もうどういいや。お前を殺して、俺も死ぬ」


 視界の端に、呆然と立ち尽くすメイちゃんの姿が映った。

 ごめんね、メイちゃん。

 せっかく家族になれたと思ったのに。


 もう、ダメみたいです。


「——死ね」


 刃先が呼吸に触れるほど、彼のナイフが近づく。


「……れろ」


 ぽつりと、声が聞こえました。

 この声は。

 ……メイちゃん?


「レイコから離れろ!!」

「……あ? 女の……ガキ?」


 もう駄目だろう。

 

 そう、思っていたのに。

 おかしなことが起きました。


 メイちゃんの背後から、大きな幽霊が現れたのです。

 その幽霊は、一瞬で彼の首をわしづかみにした。


「——っが!? なん……だ? こ……れ!??」


 彼は戸惑っていた。

 見えない何かに捕まれている。

 そんな非日常に。

 私だけにしか見えていない。

 幽霊の力に。


「なん……だ……テメェ!? なにを……しやがっ……た!?」


 首を絞められながら、彼は苦しげに叫んだ。

 メイちゃんの背後には、もう一人幽霊がいました。

 その幽霊はナイフを奪い、彼の心臓に静かに構えた。

 まるで『すぐに逝かせてやる』とでも言うように。


「なん……で、ナイフが!? ま、待て……やめ——」


 幽霊は、そのままナイフを彼に突き刺した。

 抵抗するような声を上げながら、彼はゆっくりと絶命しました。

 幽霊は彼の首を離した。

 ドサッと音を立てて倒れた。


「はぁっはぁっ……レイコ!?」


 メイちゃんが息を切らしながら、こちらに近寄ってきた。


「レイコ!? 傷をよく見せてください!」


 メイちゃんが腹部の傷を確認する。

 余程ひどいのか、ぞっとした顔をしていた。


「この傷……」

「あはは……救急車でも、もう無理かな」


 メイちゃんの様子から、もう助からない傷であると悟りました。


「メイちゃん……」


 徐々に頭がぼーっとしていく。

 視界がかすみ、意識が遠のいていった。

 

 ごめんね。と言おうとすると、声がした。

 

「……もう、これしかない」


 メイちゃんは何かを呟いていました。

 これしか……?

 なんのことでしょう?


 わけが分からず、メイちゃんの顔を見ました。


「レイコ」


 するとメイちゃんは、ナイフを構えていました。

 彼の様に、刃先をこちらに向けて。


「……ごめんなさい、レイコ。少しだけ我慢してください」


 涙を堪えながら、メイちゃんはナイフを構えた。

 そして、私の心臓に向けて、深く刺してきました。


「——え??」


 思わず、声が漏れた。

 

 腹部に金属の異物感がありました。

 殺意を孕んだ、迷いのない一刺しだった。


 どうして?

 なんで……?

 

 痛いよ……メイちゃん?

 痛くて、たまらない。


 お願い、放して……。

 なんで、メイちゃん?

 どうして……。



 

 どうして、そんな悲しい顔を——




 


------

 

 次の日


 新しい家に引っ越して、新たな生活が始まった。

 でも別に、変わったのは部屋だけ。

 いつもと同じ、幸せな日常です。


 

 私には、幽霊が見える。

 幽霊と言っても、みんな大切な家族なので怖くない。

 今日は、可愛い女の子が来たみたいだ。


 私にとってお姉ちゃんのような人。

 お母さんのような、暖かい人。

 一人でいた私を、迎えてくれた優しい人。


 私の——

 大切な家族。


「ただいまー!」

「お帰りです」


 いつものように、レイコが帰ってきた。


「聞いてよメイちゃん。今日学校にいったら、先生が無視するんだよ!? 酷くない!?」


 レイコが頬をぷくっと膨らませてやってきた。

 どうやら学校での出来事が不満らしい。

 

「それは……酷いですね」

「でしょ? まったく、酷いよね?」


 と、言いながら膝に頭をのせてくる。


「い、いきなり頭を乗せないでください!」

「えへへ、いいじゃん膝枕くらい」

「……まったく」


 またいつもの日常が帰ってきた。

 私の幸せな日々が。

 家族との時間が。

 

 


 

 いつしか、レイコは——私の家族になった。



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