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4話 僕に乱暴する気なの……?エロ同人みたいに!

 その後、ホームルームを迎えた僕はなにごともなく普通に授業を受けて午前が終わった。

 ちょっとポカミスはあったけど、この分だと何事もなく今日も時間が過ぎそうだ、なんて思っていたのが大間違いであったことを、僕はすぐに思い知ることになる。


「ねぇねぇ、御門。ちょっといい?」


 迎えた昼休み。

 昼飯を買いに行こうと廊下に出た僕は、とある女子に捕まった。

 その顔には覚えがあった。確か隣のクラスの、花田って言ったかな。

 素行が悪いことで有名で、悪い意味で名前が知れ渡っている、所謂ギャル系の不良女子。

 ニヤニヤとした笑みを浮かべるその顔は、お世辞にも好感が持てるとは言いづらい。


「えっと、花田さんだよね、僕に何の用かな?」


 一応愛想笑いで取り繕ってみるけど、こういういかにも性格悪いですって子はやっぱり苦手だ。

 そりゃ僕だって性格は良くない自覚はあるし、基本的に女子は嫌いじゃないけど、それでもお近づきになりたくないタイプっていうのはどうしたって存在する。

 僕にとっては花田がそれで、出来れば関わりたくないというのが本音だった。


「おー、ウチのこと知ってたんだ。なら話が早いじゃん。助かるー」


「えっと、僕これから御飯買いに行くところだったから、出来ればなにかあるなら後にしてもらえるかなーって……」


 僕が自分の名前を知っていたことが嬉しかったのか、にやけた笑みを一層深める花田。

 そのいかにも悪巧みしてますという顔に悪い予感しかせず、言外に急いでるということを伝えてこの場をさっさと切り抜けるつもりだったんだけど、そうは問屋が卸さなかったらしい。


「そういうなよ、御門ぉ。お前にとっても悪い話じゃないんだからさぁ」


「いや、だから僕急いで……」


「飯なんて後でいいだろ。ほら、これ見てもそう言えるのかよぉ」


 そう言いながら花田は一歩僕に踏み出すと、手に持っていたスマホをこちらに向けて突き出してくる。


「あ、これ……」


「そ、よく撮れてるだろ。お前のしゃ・し・ん」


 そこには朝、僕が制服のボタンを外した時に見せてしまったシャツの写真が、ハッキリ映し出されていた。


「えと、これって……」


「いやぁ、マジ感謝だわ。さっきの休み時間にうちのクラスに遊びに来たやつが嬉しそうにはしゃいでたもんだからさぁ。なにかと思ってみてみたらこれだもんよ。頼んだら快く送ってくれたし、持つべきものは友達だよなぁ」


 いや、それ明らかに強引に画像送らせてるじゃん……。

 まぁどう考えても盗撮写真を見せびらかしにいくほうもいくほうだけど。

 でもこれ言っちゃうと、教室で脱いじゃった僕が一番あれってことになるし、あまり深く考えたくないなぁ。あれは完全に過ちどころか黒歴史だし。


「はぁー、最悪……」


「そうだよなぁ、お前にとっては最悪だろうけど、まぁ運が悪かったと思って諦めるんだね」


「あぁ。うん、そうするよ。言われなくてももうしないけど。じゃ僕はこれで……」


 へこんだ気分のまま立ち去ろうとした途端、腕をガッと掴まれる。


「おい、どこ行くんだよ」


「え、いや、どこって、昼ご飯を買いに……」


「はぁ? そんなのいいだろ。てかさ、話の流れでわかんね? お前今、それどころじゃねーんだけど。ウチは今、お前の下着姿の写真持ってんだよ。この意味、普通わかるだろ?」


 言いながら再度見せつけるようにスマホを振る花田。

 普通って言われてもなにが言いたいのかさっぱり分からない。自分のシャツ姿なんて見せられてもなんの面白みもないし、ただ僕ってやっぱり可愛いなって思うだけだが?


「意味って言われてもなぁ。まぁある意味レアな写真だと思うから大事にしておけばいいんじゃない? 僕は特に気にしないよ」


「お、そう? じゃあこれから日課のオカズとして使わせて……って、そうじゃねーだろ! あのなぁ、こんな写真普通恥ずかしいだろ! 消せって顔青ざめて、そっからウチがその代わりに取り引き要求するのが流れなんだよ! なにボケかましてんだおい!」


 怒り心頭と言った様子で一気にまくしててくる花田。

 そこまで言われて僕もようやく合点がいった。


(あぁ、なるほど。ここって貞操逆転世界だもんね。男子からしたら、シャツとはいえ下着の写真撮られたら、普通は恥ずかしがるものなのかぁ)


 あっちじゃ男子のシャツ姿になんて1円の価値すらないもんなぁ。

 向こうの世界とはあまりにも勝手が違うから気付かなかった。慣れたつもりではあったけど、こういう細かいところで常識というか認識が食い違うあたり、やはり自分は異世界にいるんだなと実感する。


「へへ、その顔、ようやく分かったみたいだな。それじゃあ……」


 僕が思案する顔を見せたせいか、花田はどうやら僕が危機感を覚えたと思ったらしい。

 再び下卑た笑みを浮かべ、再度口を開きかけたのだが、


「貴方たち、いったいなにを騒いでいるんですか?」


 小さな、だけどハッキリと通る声が、僕らの間に割って入った。


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