プロローグ
僕は自分より顔のいいやつが嫌いだ。
ついでに言えば、僕よりちやほやされるやつも嫌い。
あと頭のいいやつも好きじゃないし、運動神経がいいやつもそう。
もっといえば、自分より上だと断言できるようなやつは基本皆好きじゃない。
ひどい考え方をしていると思う人もいるかもしれないけど、人間なんてこんなもんだと僕は思う。
「ん、あ……」
だってそうじゃん。結局、誰だって自分が一番可愛いんだ。
ちやほやされたいしもてはやされたい。誰もが持ってる当たり前の感情が、僕こと御門伊織は普通の人より少しだけ強かった。
だから自分が一番ちやほやされて、なにをやっても許される世界があったらなぁ、なんてことを考えたことは、一度や二度じゃない。
「ちゅ、れろ……」
そしてそんな世界に実際に行くことが出来たとしたら。
好き勝手やるのは当然のことで、そんな当然のことを僕はやった。
ただそれだけ。それだけだったのに。
「う、あ……」
僕は今、ある人物から《《オシオキ》》を受けている真っ最中だった。
「ちょ、もう、やめ、て。やめろよ、みな、せ……!」
何度も何度もキスをされ、息も絶え絶えで少し苦しい。
いい加減限界だった僕は、相手を無理矢理引き剝がした。
すると当然のことなのだけど、ほんの一瞬前まで唇を重ね合わせていた相手の顔が、目の前の視界に入ってしまう。
――――綺麗だ。
何度も見てきたはずなのに、そんなことを思ってしまったのは、そいつの顔が悔しさを覚えるほどに整ったものだったからだろうか。
七瀬白亜。僕の通う高校で一番有名で、誰よりも優秀な女の子。
そんな優等生のはずの七瀬は、僕と長い間キスをしていた唇を小さく開く。
「ダメ、ですよ。伊織くん」
「っ……」
「これはオシオキなんですから。私がいいというまで、唇を離しちゃダメなんです」
そう言いながら、七瀬はまた僕に顔を近づけてくる。
本当に、見れば見るほど整った顔だ。ムカつく。だけど逆らえない。
「クッソ……むぐぅ」
文句の一つでも言ってやろうと思い、僅かに開いた口に舌をねじ込まれる。
僕の初めてを奪いやがった時から、こいつはいつもこんな感じだ。
(ほんと、なんでこうなったんだよ……僕はただ、この世界で好きに好き勝手したかっただけなのにぃ……)
僕はなんでこんなことになったのかを、七瀬のキスを強制的に受け入れさせられながら、半ば現実逃避のように思い出し始めるのだった。
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