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4.レイア・スタルトスという不運

騎士風の女性がやって来た。

金髪のポニーテールを揺らし、扉と俺を見比べる瞳も揺らし。


まさにヒロイン。

きっとアレだ。


チートスキル持ちの俺と張り合う、超強い現地人だ。

互いに強さを認め合い、それからいい感じの雰囲気になって……。


ハイ卒業。

アザした!


「どうぞー。冒険者登録ですよね?登録証ならいくらでもありますよー」


もはや無料のポケットティッシュ状態。

冒険者って簡単になれるんだな。


「あ、ああ。スキルの鑑定はいいのか?」


「んまあ、一応やっときますかあ!」


一応仕事だし、本人も協力してくれるというのだ。断る理由はないだろう。

鑑定板の上に置かれた手には、努力の跡があった。

分厚い皮膚と、ゴツゴツした指。


あんだよ。努力家ね?そのパティーンね?


俺はアレよ。

女の子っぽい見た目じゃなきゃヤダとか、指が細くて手が小さい子じゃなきゃ嫌!みたいなゴミ思考の男とは違うから!


君のその手は、見ないようにするぜッ!


「……終わったが、どうだろうか」


「はいはい。見てみますねー。ふむふむふん?」


「私は、剣に生きる女だ。スキルだけでなく――」


ゴニョゴニョと何か言ってるが、彼女のスキルは意外なものだった。


――――――――――――――――


一般スキル

【徒手格闘術】


特殊スキル

【処女の祈り】


種族スキル

――


神託スキル

――


――――――――――――――――


まず、騎士風の見た目をしてて、本人も「剣に生きる女だ」とカッコつけているが、スキルは【徒手格闘術】とな?

名称的には、素手の戦闘スキルじゃないのか?

まあ、それはいいや。

問題というか、一番興味をそそられるのが【処女の祈り】だ。


あんだこれ?


一応俺のスキルには【童貞】なんてのはなかった。

あったとしても、何に使うんだって話だ。


「あのー、お名前は?あ、俺は佐藤純一(サトウジュンイチ)です。ジュンと呼んでください」


「私はレイア・スタルトスだ。では冒険者登録完了ということで――」


「ちょいちょいちょい」


焦りなさんなよ。

なんかにおうぞ?

これを突かなければならないという、神のお言葉的なものが聞こえるぜ。


「【処女の祈り】ってスキルなんですがね?どういったものなんですか?」


「……ただの治癒系スキルだ。問題があるのか?」


「ほう?」


処女の祈りねえ。処女が祈るんだろ?

だから効果が表れるってんだろ?


ほう?

ほう。


なんだ同志じゃないか。


たぶんお前、いい奴だろ。


「問題はまったくないです。ただ一つ!レイアさんに聞きたい!」


「な、なんだ」


「彼氏はいないですよね?」


「……いたらどうなんだ?まさか、冒険者になれないとでも?」


「ええ無理です。我々ビリガン冒険者ギルドは彼氏彼女とかいう浮ついた存在にうつつを抜かし仕事を仕事とも思わない連中のせいでここまで寂れてしまいました。分かりますね?言ってる意味分かりますよねッ!?」


「……そういうことか。ああもちろんだ!私は結婚するまで操を立てると誓っている。彼氏彼女とかいうそんな浮ついたものに時間を割く暇はない。そんな物があれば剣を振るいたいッ!分かってくれるよな?」


「……ちっ」


「え?今……ちっ、て」


「まあいいっすよ。はい。冒険者おめっとー」


「ど、どうしたジュン」


あんだよ。

彼氏いらない宣言ですか。

操を立てるだ?てめえいつの時代に生まれたんだ!


別にいいさ。そういう信条があるのは、俺も否定したくはない。

だけど!俺が主人公で、お前はヒロインだろうがっ!

ここってハーレムのない世界線なの?


おいおい勘弁してくれよー。

どこぞのラノベみたく、転生者ハーレム作らせてくれよー。

俺は召喚されただけですよ?その違いだけでイジメてんのん?

ありえねって神よ!


転生も転移も、ほぼ同じでしょうがッ!


「……ところでだな、そのー。アレはどうしたらいい?」


「あん?ああ。扉っすか?適当に避けといてくださいよぉぉ。俺は今、精神統一で忙しいんで!」


「あ、ああ。すまない。何か気に障ることを言ったなら」


「今度は下の方を触って欲しいもんですよ。まったく」


「下?床が何かあるのか?」


「……もういいから!扉どかしちゃって!」


おとぼけドジっ子属性の騎士風美女ですか?

キャラ詰め込みすぎて、太ももがパンパンになっちゃってんじゃないの?


いや、それはそれでいいんだ。

健康的な体が、色んな意味で一番いいからな。


「よいしょ……あ!」


バギッ――。


「ジュ、ジュン。あのー、これって」


「……」


扉が壊れました。

板チョコみたく、パキッとね。

あー、俺にも分けてほしいよ。どこかの世界線では、高校時代の俺も、そんな青春があったのかもなー。


はあ。

どうやったら扉が割れるの?

まさか、シェリスと同じ怪力のキャラも持ってんの?


「そ、そんな目で見ないでくれ。べ、弁償するから!」


「もう、何も触らずそこに座っとってくださいよ。ギルマスは裏で取り込み中なもんで。聞こえるでしょう?ペットをしつけてるんです」


「あ、ああ。分かった。ペットにあんな鳴き声をさせるとは……ちょっと不安だな。厳しいお方なのか?」


「あーまあ、どうすかね。()()()を見たことがないし、見たくもないんで知らないっす」


「ジュンは職員だろう?」


「はい。1時間前ぐらいに職員になりましたね」


「そうか。大変だなあ、では失礼」


バギッ――。


「あでっ」


「……」


ソファの脚が折れたのかな?

レイアが転げ落ちたわけだが……こいつぁ、面倒くさそうな奴だ。


パーティを組む奴もしんどいだろうな。


あ。


そういやあのウサギ、パーティ組みたいとか抜かしてたな。


ふっふっふっ。いいよ。僕ちんが組ませてあげるおー。


「レイア?」


「あ、あの、これは……いくらだろうか」


「あー、後で聞いとく。それよりもさあ、パーティ組みたくない?」


「ああ!それは望むところだ。ひとりでは何かと不便なことが多い。冒険者と言えばパーティが醍醐味みたいな――」


「オッケー。仲間呼ぶわ。おーい!シェリス!アドミラ!」


アドミラは雑草茶が飲めないと知り、俺に罵詈雑言を吐きかけた後、外でシェリスとイチャイチャしていたはず。


ほーれ来た。


「なんだぴょん?」

「……もう騙されませんよぉ。ジュンさん!」


「お前たちの仲間が、そこにいるぜッ!」


視線を一身に浴びたレイアは、臆することなく立ち上がった。

堂々たる、まさに騎士といえる居様だ。


「レイア・スタルトスだ。二人共よろブハッ」


ソファから立ち上がり、シェリスたちの所まで3歩だ。

たったその距離をコケるって……。

よくここまで来たな。

道のりという意味でも、人生という意味でも。


「大丈夫かぴょん?」

「大丈夫ですかぁ?」


「あ、ああ。問題ない。よろしく」


気を取り直して立ち上がったレイアは、堂々たる……。

これであの態度を取れるのは、逆にすごいな。

ドジッて慣れると、あそこまで貫禄が出てくるのか。


ふむ。

関わらんとこ。

見た目はいいし、悪いやつではないはず。

だが、()()があるとは思えんし、俺の身にあのドジの災いが降りかかるのも避けたい。


「シェリス・マイザル。よろしくだぴょん」

「アドミラ・チェレーブロですぅ。よろしくぅ」


うむうむ。

シェリスもきっと感謝してるだろうな。

アイツにしてみれば、獲物が増えたわけだ。

早速手をスリスリしてやがる。

男なら犯罪だぞ?


……クソッ!


TSもありだったな!神よ、TSスキルくれ!ライナウッッ!


「なあジュン。ギルマスはいつ来るんだ?早めに謝罪をさせてほしいんだが」


「あー壊しまくったもんなー。そろそろ来るんじゃね?地震も変な鳴き声も止んだし」


「ああ、たしかに。調教が終わったのか……ふう、少し緊張するな」


「調教て……」


「あれ?違うのか?」


「いや、まあある意味合ってるなって、なんだアドミラ!文句か!」


俺はなーんにもしてないもんね!

変態を見るような目で見られる筋合いはないもんね!


「レイアさんはもう仲間ですぅ。ジュンさんは、余計なことしないでくださいねぇ」


「ああしない。任せろ!お前らとはもう関わらん!もっと清楚でクソエロいヒロインを、その辺に転がしてもらえるよう神に祈るわッ!」


「……終わってますねぇ。ねえ?ウサちゃん」


「うんぴょん!」


うんぴょんて。

無理しすぎて語呂が悪いぞシェリスよ。

辛そうだなー。キャラ崩壊の危機じゃねえのか?


ザマァみさらせ!

そのままキャラ崩壊して、ヒロイン候補から外れてしまえ!


ドタドタ――。


おっ?

ビリガン夫妻の()()が終わったようだ。


「悪い悪い。って、あん?人が増えて……ギルドがぶっ壊れてらあ」


「……す、すみません。私、が。あ、あなたは!」


ん?なんだ?昔に尻でもなで回されたか?


「腰振りビリガン!?」


「そんな有名なの?」

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