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陰キャな僕は義妹を寝取ることに決めた。  作者: リンゴと蜂ミッツ
第1章 陰キャな兄とギャルな妹
6/57

第5話 義妹が危険です。

 カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 10万字を目指して(完結目指して)頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

 火曜日の朝。

 テーブルの椅子に座り朝食のパンをかじっていると、隣の妹が僕の足を蹴ってきた。

 父さんはすでに出勤し、家にいるのは最後に戸締りする母さんと僕たち兄妹だけ。


「うん‥‥‥!?」


「昨日の放課後」


 妹の声は小さくてキッチンに立っている母さんには届かないだろう。

 

「図書室にいたけど」


「委員の仕事はない日だろ」


「―――うっ!? げぇほぉ、ごほぉごほぉ‥‥‥」


 妹の鋭い指摘に頬張ったパンが喉の奥に詰まりそうになって盛大に咽てしまう。

 脳裏に昨日の情けない自分の姿が蘇る。

 

 尻尾をまいて王子様の前から逃げ出した。まっすぐ帰宅する気持ちになれず最終下校時間まで当番じゃないのに図書室で時間を潰していた。


「あら、あら、落ち着いて食べないと」


 化粧をしてカッコいいパンツスーツ姿の母さんが、キッチンから顔を覗けて心配そうに声を掛けてきた。


「ちょっと咽ただけだから、げほぉ」


「兄貴、落ち着いて食べろ」

 

 この状況を作った張本人が、ジト目を向けながら僕の背中を擦ってくれた。


「ごほぉ―――も、もう大丈夫だから‥‥‥図書室に用事があったんだよ」


「当番じゃないのに?」


 妹は何が言いたいのだろうか? 質問の意図がわからなかった。

 もしかしたら昨日の恥ずかしい場面を見られていた!? その可能性は低いと思う。

 だって妹は僕と同じ帰宅部で、あの時間帯には学校にいないはず。


 適当な言い訳を探していると、妹は興味を失ったかのように「ふ~ん。ま、別にいいけど」と言ってあっさりと引き下がった。

 そして早々に朝食を済ませると、教科書がぱんぱんに詰まった重いカバンを僕の肩にクリーンヒットさせそのまま玄関へ。


「痛っ―――!? な、なんだよ」

 

 最近、妹の兄に対する扱いが雑になっている気がする。

 なんで帰りが遅かった理由を知りたがるんだろうか? 朝から不機嫌な理由にまったく心当たりがなかった。

 

 それにもう1つ不可解なことが。妹はなんで僕の委員会活動のスケジュールを把握しているんだろうか‥‥‥? 謎が深まるばかりだ。


「一緒に登校すればいいのに」


「‥‥‥」


 玄関で妹を見送った母さんが、朝食を済ませた僕の近くでポツリと零した。

 あえて聞こえなかったふりをする。


 今朝はあんまり悠長にしている時間はない。

 唇の先を尖らせて先に家を出た妹。

 今日はその背中を追いかける必要がある。


「行ってきます」


「車に気をつけるのよ」


 学校の準備を終えると、慌てて靴を履いて外に出た。

 最近まで柔らかかった日差しは、夏に向かって段々と厳しいものへと変化している。

 少し歩いただけで汗が滲んだ。季節の移り変わりを肌で感じることができる空模様―――。


 妹と駅への道程は一緒じゃないのに、同じ時刻の電車に乗る。

 母さんの言葉は、仲のいい兄妹なら尚更のこと。自分でもよくわかっていた。でも今更、僕の方から「一緒に登校しよう」なんて言えやしない。

 

 電車を降りるとボトルネックの改札手前で妹の背中を見失った。

 正門へと至る道を急いでいると、緩やかな上り坂の途中で長身の背中を見つけることができた。


 まだまだ週の前半、学校を目指す制服の流れからは気怠い雰囲気が感じられた。

 嫌みなくらいにブレザーがよく似合っている背中を目にすると、昨日の情けなかった自分―――妹のことを守りたいと強く願いながら、土壇場で逃げ出してしまった自分を思い出して胸が苦しくなった。

 

 もうすでにトラウマになりかけていた。積極的に人と関わり合いを持ちたくない理由の1つだ。

 誰かと親しくなったり関係を持てば、それだけ煩わしいことが増える。そうは言っても、こんな考えを持つ自分のことはいつまでたっても好きになれないでいた。


 普段の僕なら心を乱す要因にうまく蓋をして無難に学校生活を送る。だけど脳裏に浮かぶのは向日葵のような眩しい妹の笑顔で。

 だから、彼女が涙を流す場面を少しでも想像すると、いても立ってもいられなかった。


 シスコンだと周りから揶揄われてもいい。

 今日は肩を並べて歩く2人の間に()()()()割って入るつもりだ。その後のことは考えてない。

 

 少なくとも妹と王子様の関係は明らかになるはず。タバコの件もあるし、付き合っているのなら兄として言わなければならないことがある。


 王子様の背中から隣を歩く妹に視線を移した。のだけど、隣の女子は艶やかな長い黒髪を後ろで束ねていて清楚系の背中は‥‥‥ギャルな見た目の妹ではなかった。


 ほっとする反面、妹とは違う女子生徒と一緒に登校する王子様に強い反感を覚えてしまう。

 これはモテない陰キャのやっかみなんかじゃない。


 妹という存在がありながら他の女子生徒に手を出すなんて。

 超絶可愛い妹の兄として複雑な心境だった。


 昨日のタバコの件といい、やっぱりあの王子様には裏の顔があるんだ。

 とっかえひっかえ複数の女子に手を出す浮気な男。そんな印象だった。世間ではクズと呼ぶ。


 だからあんな男のことを、兄として断じて妹の彼氏と認めるわけにはいかない。

 そう強く思ったんだけど――――放課後、僕が考えている以上のもっと醜い王子様の本性を知ることになった。


 

 あっという間に放課後を迎えた。

 図書委員の仕事があったので最終下校時間を少し過ぎてから正門を出た。

 するとそこには王子様の姿があった。


 踵を返して門柱の陰に隠れ顔だけ出す。

 制服姿の王子様は、派手な私服の同年代と思われる男子と話をしていた。


 ―――この学校の生徒じゃなさそうだけど


 その男子の近くには大きなオートバイが止められていた。


「で、どうよ。王子様―――」


「その王子様って呼ぶのはやめろ!」


「そう怒るなって。中学の頃のおまえを知ってる奴からすれば、とんだお笑いだぜ」


「ふん、こっちは忙しいんだ、本題に戻るぞ。新入生でいいのを見つけた」


「ホントか!? どれくらいだ?」


「期待していい。約束だからな、お前好みで気に入ると思う。2学期までには俺が仕込んで、まあ内容次第じゃ途中でお前にもヤラせてやる」


「楽しみだぜ」


 2人の会話の内容からすぐに頭に浮かんできたものは、悲しみに暮れる妹の姿だった。

 王子様の雰囲気は学校で見かける人気者のそれではなくて、顔には険があった。見かけない男子もどことなく悪そうで、そう考えるとやっぱり今の話は聞いてはいけない部類のもので――――。

 門柱の陰に潜んだ体がいつの間にか激しく震えていた。


 ―――ブルルルォオオオン!


 顔を引っ込めるとオートバイのエンジン音が辺りに響いた。そのまま遠ざかる。

 しばらくして門柱の陰から再び顔だけ出してみれば、すでに王子様の姿もなくなっていた。


(れん)が、危ない‥‥‥」


 その場にしゃがみ込んで頭を抱えた。

 嫌な考えが頭に居座って体の震えは一向に収まらなかった。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも2話以上(毎日が理想(無理です))の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。

 今日はもう1話投稿予定です。(あくまで予定)

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