第11話 パンドラの箱 その5
カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。
最近、ブクマが付きません。チラ‥‥‥
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放課後。
迷惑をかけてしまった井上さんは帰り際にわざわざ僕の席まで来てくれて、「気にしてないから」と声を掛けてくれた。
コンドームの箱を学校に持ってきて軽蔑されてもおかしくないのに―――井上さんの優しさでちょっとだけ救われた気持ちになった。
彼女は部活とのことでそのまま教室で別れた。
図書委員の活動のない僕は職員室で例の箱を受け取ってから帰宅することに。
そそくさと昇降口から校舎の外へ出ると少し傾いた日差しが思いのほか強かった。遠くの空に視線をやれば入道雲だろうか、もくもくと立ち上がる真っ白い大きな壁が見えた。
もうすぐ梅雨が明けるのかも、そんな予感がした。
結局、生徒指導室で片桐先生に注意されてから教室へ戻った僕と井上さんは、興味津々といった複数のクラスメイトに取り囲まれ、芸能人みたく質問攻めに遭ってしまい‥‥‥。
「2人は付き合ってるのか?」
「いつから?」
「なんで箱? そんなに使う?」
そんな遠慮のない言葉が浴びせられた。
僕は井上さんを庇いながら、努めて冷静に振る舞って事実を繰り返しクラスメイトたちに伝えた。
その結果―――僕たちは付き合っていないということ、例の箱と井上さんは全くの無関係であること、そして高校2年生デビューを果たしここ最近色気づいた僕の持ち物だったということ、でなんとか話は落ち着いた訳で。
なんだか今日1日で僕の評価が爆下がりしたように感じる。もともと低いのであまり気にする必要はないけど。
でも、特に一部の女子の視線が冷たくなったのは間違いない。
受験を控えみんな勉強を頑張っている中で、1人場違いな奴だって思われているのだろう。
勉強と恋愛。器用に両立させ青春を謳歌するなんてことは物語の中の主人公だけの特権なんだ。現実では誰もが夢見て足掻いて‥‥‥。
今日は図書委員の活動がない日。
正門に向かって歩きだそうとしたところで、突然後ろから呼び止められた。
「おい、郁人」
「あっ」
声だけで誰だかわかった。条件反射なのか慌てて振り返ればそこには義妹の実兄の姿があった。
ちょっと前まで赤の他人で、最近になって身内の距離感になった人。
「恋を知らないか? 俺たちの卒業試合まで時間がないってのに、ちょくちょく練習をサボりやがって」
「あの~連絡取ってみましょうか」
「お前、図書委員はどうした?」
「今日はありません」
「なるほど‥‥あいつの行動パターンが見えてきた。恋のやつ―――」
ブツブツ言てる武波先輩。僕も大体わかってしまった。
そうなのだ。妹は僕の委員会活動がない日は部活をサボり、活動のある日は剣道部に顔を出す。そして土日は気まぐれで練習に参加していた。
部活動に取り組む姿勢としては不真面目としか言いようがないけれど、人数合わせの助っ人という存在なので他の部員からは文句が出てないらしい。
それにしても僕の予定に合わせて部活をしているなんて、武波先輩に対して申し訳ない気持ちで一杯になる。
「すみません。ちゃんと言っときますから」
「素振りしろって伝えといてくれ。あと、妹を泣かせたら許さん」
剣道場で対峙した日からこっち、武波先輩と僕の関係は妹を中心に良好なものになっていた。ただ、事あるごとに兄としてのセリフを聞かされる僕は‥‥‥その度に嫌な汗をかいてしまう。
「―――はい」
聞こえるように返事をすれば、武波先輩は納得したように「よし」と小さく頷いてから体育館の方へ歩き出した。
眉間に皺を寄せてはいたけど、練習をサボる妹に対してそんなに怒ってはいなさそうだった。
離れていく武波先輩がふと立ち止まった。
振り返ってから、「避妊は大切だが学校では止めとけ」と捨て台詞のように言ってから再び歩きだす。
―――えっ!? もしかして例の箱の件‥‥‥変な噂が校内に広まってる!?
僕は武波先輩の背中を見送りながらその場で頭を抱えた。
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