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陰キャな僕は義妹を寝取ることに決めた。  作者: リンゴと蜂ミッツ
第1章 陰キャな兄とギャルな妹
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第20話 満月さんは字が汚い

 カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 10万字を目指して(完結目指して)頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

 カーテンの隙間から差し込む朝陽で目が覚めた。

 金曜日に降り始めた雨は土曜日になっても止むことはなく、けっきょく日曜日―――今日の朝方まで降り続いたみたいだ。僕の耳にはしっかりと雨音の残滓がこびりついている。


「雨、止んだんだ」


 両手を頭の上で組み、大きく背伸びをした。

 平日より少し遅い時間に起き出し、そのまま1階へ下りて脱衣所へ。


 ドアを開け中に入ると家族の誰かがシャワーを浴びていた。

 昨日の夕食時に父さんが、「日曜出勤だ」とぼやいていたのを思い出す。

 だから扉の向こうでシャワーを浴びているのが父さんだと思い込んでしまった訳で。


 鏡の前、寝ぼけ(まなこ)で歯を磨く。

 なんとなく周囲へ視線を巡らせば、床の上に脱ぎ散らかされたTシャツとショートパンツ!? それに女性ものの下着が目に止まる。

 そのまま視線を上げれば、棚の上には着替えの服とここにも女性ものの下着が‥‥‥。


 ―――ヤバい!


 視覚情報から導き出された答えは、「いますぐ逃げろ」だ。

 慌てて脱衣所を出ようとしたところで、突然浴室の扉が開いた。


「兄貴、シャンプー取って」


 濡れた髪をそのままに、妹が開いた扉の間からぬっと顔だけをのぞかせた。

 本人は隠しているつもりなんだろうけど、扉には半透明のパネルがはまっていて、そこにはぼやけた裸のシルエットが―――。


「―――れ、(れん)さん!? ちょ、ちょっと待って、いったん扉を閉めてくれないか~~~」


 普段は意識しないようにしていても、柔らかなラインを描く女性らしいシルエットを見た途端、僕の心臓がドキリと跳ねる。


「なんで? 早く取ってよ。可愛い妹が風邪引いてもいいわけ?」


「と、父さんが入ってるのかと勘違いして‥‥‥」


 動揺を隠せない僕は、咄嗟に言い訳を口にした。

 ただ、すぐに後悔する。こういう場面で慌てた態度を見せれば、それはつまり格好の餌ということだ。

 妹は口の端をニッと持ち上げ、僕を揶揄う時に見せる小悪魔的な表情を浮かべた。


「ふ~~~ん、兄貴、正直に言ってみ。ホントは妹の下着をガン見して興奮しました、って」


「ば、違うって―――! そ、そ、そういう言い方、に、兄ちゃんにするんじゃない! 父さんが今日は仕事だって言ってたから‥‥‥」


「怪しい‥‥‥!? じゃあ、なんでそんなエロい目でこっち見んだよ」


 頬を赤く染めた妹が半透明のパネル越しに腕をクロスさせ両胸を隠すような仕草を見せた。 

 そして伏し目がちに、「‥‥‥アニキの変態」と呟く。


「うぁわ―――! ち、違うって―――見えて、見えてないから!」


 いたたまれなくなった僕は悲鳴を上げて脱衣所を飛び出した。   



 妹に揶揄われた後、部屋に戻って出かける準備を済ませた。

 選んでもらった服に袖を通し、ワックスを使って髪型を整える。満月さんにもらった香水は身だしなみ程度に少量だけ。


 今日は井上さんとの約束の日―――お礼がしたいと言われて、昼食を奢ってもらうことになっていた。

 最初は遠慮する気持ちが大きかったけど、今では誘ってもらってよかったと思っている。


 と、言うのも―――金曜日のファミレスでの出来事が頭の中で繰り返し再生され‥‥‥土曜日は何もする気が起きなかった。だから今日の約束は気晴らしに丁度よかったと思えたんだ。


 それにしても、初対面なのに魔王のあの態度。思い返すだけで腹が立つし、自分自身が情けなくなる。

 妹はものすごく信頼を寄せてるみたいで―――相談って一体なんのことだろう? 陰キャの兄では役に立たない話なんだろうか。


 気がつけば思考の海に溺れてしまい電車の時間が迫っていた。


 1階へ下りると妹も出かける準備を整えていた。

 父さんは僕が起きる前にすでに仕事へ行ったみたいで、母さんも友達と買い物に行くと言って早い時間に珍しく出掛けてしまった。だから家には僕と妹の2人きり。


(れん)も出掛けるのか?」


 そう聞いてから、胸が苦しくなった。

 今日の妹の装いは普段よりも気合が入っているように見える。


 つけまつ毛が映えるギャルメイクと指先には真っ赤なネイル。

 両肩が丸見えのシャツとオーバーオールを着ていて、どこからどう見てもお洒落ギャル。

 だから相手は魔王なのでは、と疑ってしまう。


「兄貴、待ち合わせの場所は?」


「うん!? ああ、兄ちゃんは隣町の駅前」


「何時だっけ?」


「10時半だけど‥‥‥(れん)は何処へ出掛けるんだ?」


「どこって、パンケーキ食べに行くんでしょ」


「はっ―――!?」


 妹の言うパンケーキって、僕の約束と被るっていうか‥‥‥うん!?


「はっ!? じゃね~し。兄貴だけズルい。私も一緒に行くから」


「お、おい、どういうこと!? なんで(れん)も?」


「井上先輩に誘われたんでしょ? 時間に遅れるよ、はい出発~」


 なんで妹が一緒に来るんだ? それに、なんで井上さんとの約束を知っているんだ? もしかしたら井上さん経由だろうか!? いや絶対に違う。それなら事前に話があるはずで‥‥‥。


 たしか陰キャ仲間の宗助には話をした記憶はあったんだけど‥‥‥そう考えた時、頭の中に1人の女子生徒の顔が浮かんだ。


 と、そんなことより時間がない。ご馳走される身で遅れる訳にはいかない。とりあえず妹同伴で家を出ることにした。


 

 待ち合わせの場所と時間は、隣町の駅前広場に10時半。

 最寄り駅から電車に乗る。


 「なんで予定を知ってるんだ?」


 座席に座り電車が走り始めると当然の疑問を口にした。

 電車内は平日に比べてそこまで混み合ってはいなかったけど、同年代のカップルがやたらと目に止まった。  


 「それがね‥‥‥めちゃ美人な満月さん知ってる?」


 やっぱりと言うのか、妹の口から彼女の名前が飛び出したことに納得した。


「まあ、知ってるって言えば知ってるかな‥‥‥知り合いの知り合いっていうか」


 満月さんは陰キャ仲間の宗助の彼女で、その事実は非公式だ。学校では僕以外に誰もその事実を知らない。口を濁すと妹がジト目を向けてきた。


「なんか怪しい」


「そ、そうかな~」


「まあ、いいけど。でね、金曜日の昼休みに麻莉奈(まりな)と廊下を歩いてたわけ。そしたら前を歩いてた女子がこのメモ落としたの」


 そう言って妹が取り出したのは、どこにでもありそうなポケットサイズのメモ紙1枚。

 そこには何かが書かれていた。

 解読すると、『5月26日、2年の百崎と井上がパンケーキを食べに行く。もしかしてデートか?』だった。


「これは‥‥‥汚い字だ」


「‥‥‥でしょ。それで落としたよって声掛けたら、それが満月さんだったわけ。近くで見るとメチャ綺麗でさ、メモ渡そうとしたら自分のじゃないって断られて‥‥‥確かに満月さんが落としたところを見たんだけど。兄貴、大丈夫? クラスでイジメられてるとか?」


「な、ないない。存在感が薄いから相手にされてないけど」


「兄貴の悲しいエピソードを聞かされる妹の身になれ」


 そう言った後、妹が公衆の面前だというのにいきなり僕の脇腹をくすぐりにかかる。


「ちょ、やめろ!」


 なぜか妹のテンションが高かった。

 その手を振り払おうともがいていると、向かいの席に座る品の良さそうなおばあさんと目が合った。

 その顔には、『初々しいカップルね』と確かに書いてあった‥‥‥。


「周りに迷惑だから、止めろって」


「ふん、黙ってデートなんて絶対に許さんし」


「デートじゃないって。ほら、この前のオーダーミスのお礼だって」


「じゃあ私にも権利あんじゃん」


 なんだかんだと妹がウザ絡みをしてきた。

 まるで今日のことを話さなかった僕に対して罰でも与えるように。


 それにしても、恐ろしいのは満月さんだ。

 妹が僕の予定に同行している事実を踏まえれば―――メモは意図的に妹の前に落とされたと考えるのが妥当だろう。 

 

 妹の行動を目に見えない糸で操っている満月さんは一体何を企んでいるんだろうか? これも『寝取り計画』の一環だとでも‥‥‥。


 妹は怪しいメモについてあまり深くは考えてはいない。

 タイミングを見計らって問題のメモをポケットの中に押し込んだ。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも2話以上(毎日が理想(無理です))の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。


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