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陰キャな僕は義妹を寝取ることに決めた。  作者: リンゴと蜂ミッツ
第1章 陰キャな兄とギャルな妹
18/57

第17話 『寝取り計画』第4段階発動前夜

 カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 10万字を目指して(完結目指して)頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

 大きな不安と少しばかりの期待が入り混じった気持ちで教室のドアをくぐった。

 するとクラス中に僕を中心とした静寂の輪が広かった。


「‥‥‥‥‥‥」


 朝の喧騒を忘れてしまったかのように静まり返った教室。

 ノープランなら早退案件だ。でも高2デビューと馬鹿にされるのは織り込み済みで‥‥‥深呼吸して平常心を保つ。

 

 席に着きいつものようにカバンから教科書を出す。

 そして自然な感じで頭に手をやり乱れた髪を整えた。


「あれ、誰だ?」


「いや、知らんし」


「百崎の席に座ったぞ‥‥‥!?」


 周りから聞こえてくる雑音はとりあえず無視しようと考えていた。

 会話スキルが著しく低い僕には無視する以外の対策がないのが正直なところ。


「姉ちゃんからイケメンに変身したって聞いたけど、いやマジだった」

 

 雑音の中に美容室を紹介してくれたクラスメイトの声が混じっていた。

 横を向けば席の傍らに笑顔の池山くんが立っていた。


 本当はこっちから挨拶するべきなんだけど‥‥‥。

 こんな陰キャな男子に気さくに話しかけてくれる池山くんは良い奴だ。


「に、似合うかな‥‥‥?」


「ああ、まじイケてる。前髪あったから初めて顔をみた気がするわ。もともとの素材がいいんだな」


「そ、そんなことはないよ。お姉さんが上手く切ってくれたから」


 全体のボリュームが抑えられた頭髪は、少量のワックスを使用して()()()で柔らかく後方へ流している。

 前髪は左側がやや長く、少しだけ目に掛かっていた。


「ちょっと立ってくれ」


「えっ?」


 池山くんに言われてその場に立つと、いきなりスマホで撮影された。

 パシャ、パシャと撮影音が2回。その後、距離を取ってからパシャと1回。


「‥‥‥池山くん、どうして写真なんか」


「いきなり悪い。姉ちゃんに頼まれたんだ。制服姿の百崎(ももさき)の写真が欲しいんだって」


「僕の写真って‥‥‥」


 昨夜の妹といい陰キャな男子の写真なんか撮ってどうするんだろう。

 池山くんと話しているとみんな早々に興味を失って教室の中はいつも通りの喧騒を取り戻していた。

 

 正直もっと色々聞かれるかもって身構えてたんだけど、まったくそんなことにはならなくて‥‥‥現金なもので少しだけ寂しい気持ちになってしまった。

 

 と、教室がいつもの雰囲気に戻ったのも束の間、後ろの入り口付近でザワザワと人だかりができ再び雰囲気が一変した。

 

「きゃ~~~可愛いぃいいい」


「神スタイル~~~」


「―――えっ!? お兄ちゃん?」


「いいよ、いいよ。ほら教室に入っておいで」


 などという、女子の悲鳴交じりの黄色い声と、


「やべーマジか!? アイドル以上じゃね?」


「玉砕覚悟で」


「か、彼氏いんのか?」


 などという、男子の欲望に塗れた声が交差する。

 見れば後ろの出入り口に人が群がっていてその中心にはギャルな見た目の女子の姿があった。


「―――なっ‥‥‥!?」


 驚きであとに続く言葉を忘れてしまった。

 不安そうに彷徨っていた視線が僕を捉える。そして懐かしい響きで僕のことを呼んだんだ。


「お兄ちゃん!」

 

 妹は入学以来1度だって僕の教室に顔を出したことはなかった。

 小走りに近づいてくる妹。その手には何やら四角い包みが見えた。


(れん)、どうしたんだ?」


「忘れ物だよ、お兄ちゃん♪」


 慌てて立ち上がると、妹は四角い包みをこっちに差し出してきた。

 いつもと違う呼び方といい、謎の四角い包みといい、彼女の真意を図りかねる。

 瞳の中を覗き込めばそこには小悪魔的な表情とイコールを結ぶ妖しい光が宿っていた。


「お兄ちゃん―――!? 百崎の妹なのか?」


「知らんのか? 有名だぜ」


「今日から百崎のことをお兄さんと呼ぶわ」


「こんど百崎の家に遊び行こうぜ」


 などという、身勝手な男子の声が聞こえる。

 そんな中、首を傾げたあざとい仕草の妹はまるで周りに見せつけるようにして自分の腕を僕の腕に絡めてきた。


「―――お兄ちゃん♪ 今日は(れん)の手作り弁当が楽しみだって言ってたのに」


「て、手、手、作り弁当‥‥‥!?」


「持って行くのを忘れるなんて、おっちょこちょいなんだから、てへ♪」


 そう言った妹は自分の歯型が残る僕の腕の辺りに手を置いて、秘密の合図のように優しく握ってきた。


「‥‥‥‥‥‥!?」


「じゃあ、教室戻るね」


 片目をパチリとつむり、こっちへウインクを投げてきた我が妹。

 茫然とする僕を置いて後ろの入り口から教室を出て行こうとした。


 そして廊下に出る直前だった。ピタリと足を止めた彼女がゆっくりと横を向く。口元には小さな笑み。そう、僕にはわかったけど、あれは不敵な笑み。

 妹の視線の先を辿ればそこには―――。


「あ~井上先輩だ。この前はどうも」


「妹さん―――(れん)ちゃんって呼んでもいい?」


「もちろんです」


 妹の顔は笑っているのに、兄としての直感が違うと告げていた。


「お兄さんにお弁当作るなんて優しいね」


「そうでもないですよ。たまに(れん)のが食べたいってうるさくて」

 

 真っ赤な嘘だった。

 そんなことを言った記憶も無ければ、妹は1度たりとも弁当を作ってくれたことなんてない。


「へ~意外だよ。百崎くんそういうこと言うんだ」


「家の中と外では全然性格が違うっていうか―――こういうタイプは嫌われますよね。陰キャで重度のシスコン。ホントに私がいないと全然ダメなんですよ」


「ぐふっ」


 クラスのみんなが注目する中、純粋な僕のハートは妹の虚言を纏う鋭利な刃物で抉られる。


「ううん。百崎くんは優しいし意外と隠れファンがいるかもね。それに今朝はすごくカッコいいと思うよ」


「あ、それ、雰囲気だけです。井上先輩は騙されないでくださいね」


「そ、そうなんだ‥‥‥」


「そうなんです。じゃあ私これで―――」


 突然教室にやってきた妹は、兄である僕のことをディスるだけディスって嵐のように去って行った。

 それも頼んでもいない弁当を置いて‥‥‥。

 妹の背中を見送る井上さんは苦笑いを浮かべていた。



 昼休み。

 場所はいわずもがな(非常階段の踊り場)。僕のほかに陰キャ仲間の宗助とその彼女である満月さんの姿があった。


「なるほどな。それで今日は妹の手作り弁当か」


 陰キャ仲間の宗助は腕を組んだままの姿勢で南校舎の上に広がる青空を見つめていた。

 目を細め懸命に2枚目を演じようとしている。満月さんに無理やりイケメンキャラを続けさせられ、見ているとなんだか可哀そうになってくる。

 それに少し痩せたように見えるのは気のせいじゃない。


「母親の手作り弁当だけど」


 弁当箱の中身は母さんの味だった。

 断じて妹の作ったものではなかった。見え透いた嘘の意味がわからない。


「髪を切った翌日ってことを考えれば、単純に兄のいる教室の反応が知りたかったんだろう。その口実で弁当を用意したんじゃないのか?」


「めちゃくちゃディスられたんだけど」


「もぐ、もぐ、ごく‥‥‥それはいい兆候ね―――」


 階段に腰掛けて焼きそばパンの麺だけを平らげた満月さんが口を開いた。

 残ったパンを宗助に手渡している。

 言いたくはないけど、焼きそばが食べたかったのなら最初から食堂へ行けばいいのに。


「―――義妹の内面に何かしらの変化が生まれている。そう考えると辻褄が合うわ」


「変化って、どんな?」


「鈍感なお兄ちゃん」


「えっ‥‥‥!?」


「百崎くん、髪を切って良くなったと思うわ。義妹は無意識にあなたのことを雄として見ている可能性があるわね」


「お、雄っ!?」


「そう、雄雌(オスメス)(オス)よ。カッコよくなってフェロモンを振り撒く血の繋がらない義兄。そんな雄と1つ屋根の下に暮らしていて、いよいよ雌の本能が開花しつつある。これなら『寝取り計画』を次の段階へ進めても問題なしね」


「美音、俺にも計画の全容が見えてきたぜ」


 満月さんが立ち上がった。

 手すりに体を預けていた宗助と顔を見合わせ頷き合う。


「過去に数多の国を滅亡へと追いやった人間の(サガ)。男と女の普遍的な負の感情。その名はジェラシー! 寝取り計画成就の日は近いわ。さあ、義妹の嫉妬心をメラメラと煽るのよ~!!」


 叫ぶように言った満月さんが恍惚の表情を浮かべた。

 作戦の意図は理解できるけど、嫉妬という感情を抱え込んでいるのは僕の方なのに。

 

 そもそも論だ。妹がこっちを兄としてしか見ていなかったら‥‥‥勝算はゼロ。

 そう考えると急に噛まれた左腕が疼いた気がした。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも2話以上(毎日が理想(無理です))の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。


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