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陰キャな僕は義妹を寝取ることに決めた。  作者: リンゴと蜂ミッツ
第1章 陰キャな兄とギャルな妹
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第15話 アシンメトリーな僕

 カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 10万字を目指して(完結目指して)頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

「おはよ」


「おはよう」


「兄貴、昨日はなんで遅かったん」


 テーブルに着くと隣に座った妹が聞いてきた。

 遅いと言われて駅での井上さんとの会話を思い出す。


 昨日の夜に聞いてくれれば正直に答えたんだけど、朝はなにかと忙しい。とりあえず曖昧に答えることにした。


「え、遅かったかなぁ?」


「電車一本分は遅い」


「‥‥‥」

 

 近頃の妹はやたらと僕の行動に敏感な気がする。

 鋭すぎる指摘に思わず返す言葉を失った。


 

 学校最寄りの駅を出ると正門まで延びる緩やかな上り坂の途中で、昨日とまったく同じ光景に出くわした。長身の背中の隣には丈の短いスカートを履いた妹の背中がぴたりと寄り添っている。  

 

 王子様と称される人気者の男子と超絶美少女新入生と噂の女子。だれが見てもお似合いの2人は周りの生徒たちの視線を集めていた。

 

  頻繁に妹の顔が隣を歩く魔王へと向けられ、その度に後ろを歩いている僕に眩しい笑顔を晒す。遠目にも親し気な雰囲気が伝わってきて、そわそわと落ち着かない気持ちになった。

 

 不意に妹の腕が魔王の腕に絡みついた。

 少し驚いたように魔王の顔が横を向く。


 2人は見つめ合う形でその場に立ち止まり、聞こえはしないけど口の動きで短く言葉を交わしたのがわかった。

 魔王の手が妹の頭に触れた。そのままよしよしをするように僕の大切な妹の頭を撫でる。心臓が痛いほど動悸を打っていた。

 そんな僕の気も知らない彼女は頬を染め少し照れた様子で俯いていた。 


 この時、わかってしまったんだ。僕の心に宿る感情の正体に―――。


 妹の絡まった腕が離れると魔王が前を向いてそのまま歩きだした。

 遅れた妹は慌てた様子で魔王の背中を追いかけ隣に並ぶ。


 それは、つい昨日の出来事だった。満月さんが僕の体に鼻を寄せ香水の匂いを間近で嗅いだ。あの時に宗助が浮かべた表情を思い出す。


 ―――間違いない。僕は強い嫉妬を覚えている


 心配する気持と同じくらいか、もしかしたらそれよりも大きな感情なのかもしれない。

 心を締め付けてくるものの正体にこんな場面で気づいてしまった。それでも冷静な自分が俯瞰していて、抱いた強い感情が兄として妹に向けていい感情なんかじゃないってことは理解できたんだ。

 拳を強く握りしめ遠ざかる2つの背中を見つめ続けた。


 

 夕食後。

 父さんは少し帰りが遅くなるみたいで、妹は入浴中。夜の外出には都合のいい条件が揃っていた。

 僕はリビングにいる母さんに理由を言ってから家を出た。


 服装は先週末に妹が選んでくれたもの。普段から無頓着な僕でも、さすがに着古したもので陽キャのフィールドに立ち入る勇気はなかった。


 最寄り駅から電車に揺られること20分。

 クラスメイトの池山くんが紹介してくれた店は、池山くんのお姉さんが働いている美容室だった。


「いらっしゃ~い」


 緊張しながら『close』サインの掛かったドアを開けると、中にいた女性が笑顔で出迎えてくれた。

 お洒落な雰囲気の店内に他の人の姿はない。笑顔の女性は白いシャツに濃い色のジーンズを履いていて、胸に『池山』と書いてあるネームプレートを付けていた。


「話は愚弟から聞いてるよ。高校2年生デビューだって? ちょっと遅いけど、うん、素材は良さげかも」


「よ、よろしくお願いします」


「美人なお姉さんに緊張してる?」


「あ、はぁ~」


「なにその反応。可愛い~~~。って言うか、実験台だけど大丈夫?」


 実験台って‥‥‥練習台、だよね?

 池山くんのお姉さんはガチガチに固まった僕に気さくな感じで話しかけてくれた。

 こういうフランクな感じも接客業のテクニックなんだろうか? かなり緊張がほぐれた気がする。


「よ、よろしくお願いします」


 妹を寝取るための作戦の1つ。髪形を変えることは陰キャな見た目から陽キャな男子へと生まれ変わるステップなんだ。

 少し池山くんに似ている美容師のお姉さんに大きく頭を下げた。


「まだ緊張してる?」


「大丈夫です。でも美容室って来たことなくて」


「じゃあ、お姉さんが君の初めてなんだ」


 揶揄うように言った池山くんのお姉さん。

 冗談だろうけど流し目でこっちを見てきた。女性耐性の低い僕の顔は冗談だとわかっていてもすぐに火照ってしまう。

 そんな僕の様子に池山くんのお姉さんはペロリと舌なめずりしてから顔を近づける。


「百崎くんだっけ? 安心して年上のお姉さんに任せなさい」


「は、はい」


 逆らう雰囲気ではなかった。

 言われるまま大きな鏡の前に座ると、池山くんのお姉さんはブツブツと何やら呟いて―――真剣な表情になった。


「両目が前髪で隠れてるけど、全体的に重いわね‥‥‥ガラリと印象を変えるより、今の髪型を活かしてアシンメトリーに―――」


 気がつくと目の前にはハサミを手にしたプロの美容師さんがいた。

 雰囲気がガラリと変わり、ついさっきまで冗談を言っていたのが嘘のようで。

 

 自分とあまり年の違わない人の実際に働いている姿を身近で見るのはすごく新鮮な感覚だった。

 井上さんのアルバイト姿を見た時にも感じたことだけど―――そろそろ自分の進路について真剣に考えないといけない。


「―――これ、僕なんですか‥‥‥」


 出来上がった鏡に映る自分を見て、自然と間抜けなセリフを吐いてしまった。

 長さはそんなに変わらないように見える。それなのに全体的なボリュームが抑えらた感じで、スッキリと清潔感があった。

 

 両目にかかっていた陰キャを象徴するかのような前髪は、片側に流れるように寄せられて、ぎりぎり左目だけにかかっていた。


「気に入った? 朝はワックスをほんの少しだけ手に取って、()()()でいいからね」


 池山くんのお姉さんはまだ見習いだと聞いていた。でも彼女は今夜僕にとってのカリスマ美容師になった。


「あ、ありがとうございました。すごく気に入りました」


「じゃあ今度は、お客さんとしていらっしゃい。美里花(みりか)―――池山美里花って名前だから指名よろしく」


 椅子から立ち上がると、全身を映す姿見の前に立たされた。

 横から肩を触られたり、あれ? やたらとボディタッチが多いような。


「カッコいい」


「えっ‥‥‥!?」


 鏡に映るぼーっとした表情の池山くんのお姉さんがポツリと零した。

 褒めてくれるのは嬉しいけど、面と向かって言われるとめちゃくちゃ恥ずかしい。


 今の格好は、先週末に妹が選んでくれたお洒落なもの。

 鏡の中の自分がなんだか別人に見えてしまって―――、『寝取り作戦』の第2段階は無事にクリアできたと思う。


 改めてお礼を言い、店を出る直前だった。


「あ、ちょっと待って百崎くん―――お姉さんと連絡先交換しましょ」


 池山くんのお姉さん―――美里花(みりか)さんがにっこり笑って言ってきた。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも2話以上(毎日が理想(無理です))の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。


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