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部屋の片付け


ーーー眩しいーーー

 

 閉じたカーテンの隙間から差しこむ日の光に当てられて目が覚める。この暴力的な光量は早朝のものではない。今日もまた貴重な朝の時間を睡眠に費やしてしまったことを確信する。「春眠、暁を覚えず」とはよく言ったものだ。

 寝ぼけ眼を擦りながら時計を見ると、時刻は11時を回っていた。大学生として春休みを満喫している俺の平均起床時刻は午前10時前後である。普段なら母親が痺れを切らし、叩き起こしに来る時刻をとうに過ぎているのだが、今日は様子が違うらしい。低燃費モードなのかもしれない。

 

 体を起こして布団を押入れの中に片付け、寝巻きから着替える。洗面所で顔を洗い、いざブランチを頂こうとリビングのドアを開けた途端、


 「遅い」

テレビを見ていた母親からの叱責が飛んでくる。

「洗い物を済ませた後に食器もってこられるのは嫌だっていつも言ってるでしょう。一郎、あんたが自分で洗うならいいけどね!」

 「分かった、分かってる、ごめんごめん」

 定番のやり取りを繰り返す。

 

 残り一枚になっていた食パンをトーストにして食べることを決める。使う食器を皿一枚にすることで洗い物の負担を減らし、母親の機嫌の悪化を防ぐ作戦だ。

 

 出来上がったトーストにジャムを塗って食べる。最近は、スマホを見ながら食べることが常になった。

「スマホを見ながらご飯を食べるなといつも言ってるでしょう!!」

 

 再び母親の機嫌が急降下しそうになり、慌てて食べかけのトーストをコーヒーで流し込む。さっさと食器を片付け、聖域(自分の部屋)に戻る。スマホでネットサーフィンでもしようかとした矢先、部屋に山積みになっているダンボールの箱が目にとまった。

 

 ーーー時間だけはあるし、片付けるかーーー


 そう思い、箱を開け始める。中には、幼稚園から高校までの教科書やプリント、創作物、テストの結果、集合写真までもが入っている。

 「ゴホッ、ゴホゴホ」

 ホコリを吸い込んでしまったようだ。

マスクをつけ、片付けを再開する。手に取ったもの一つ一つをチェックする度に、当時の記憶がぼんやりと浮かんでくる。しばらく続けていると、あるノートが視界に入る。


「懐かしいなぁ」

そのノートの表紙には、大きく下手くそな文字で

 ーーおもいでちょうーー

と書いてある。所謂、日記だ。幼稚園で日記を書かされた時から高校の途中まで不定期的に書いていたことを思い出す。ダンボール箱を探ると、

 ーーおもい出ちょうーー

 ーー思い出ちょうーー

 同じような日記が出てきた。習ったばかりの漢字をすぐに使いたくて、新しい漢字を覚える度にノートを使い切っていないのにも関わらず、新しいノートにタイトルだけ書いていた気がする。

 俺はどんなことを書いていたのだろう。僅かな興味が湧き、「おもいでちょう」を開いてみた。



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