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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

生きている私と空に住む君へ

作者: 雪杜 伊織

死人が出ます、苦手な方はブラバして下さい。

「東日本大震災」

2011年(平成23年)3月11日14時46分、あの日、私の世界は暗転した。

震源は三陸沖の宮城県牡鹿半島付近、深さ約24km。

マグニチュード(M)9.0、1900年以降、世界で4番目。

「 震災関連死」を含めた死者と行方不明者は、あわせて2万2222人。





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当時学生だった私は、

2日後に迫った卒業式に向けて準備に励んでいた。

突然揺れが襲って来た時は驚いた。友人と急いで近くにあったテーブルの下に隠れ、揺れが収まるのを待った。結構長い揺れだったと思う。揺れが止まってすぐに大声で周りに呼びかけた。


「逃げるよ」


あの時は夢中だった。

運動場に出れば、すぐ隣の高校の教師がこちらに手を振っていた。時折り誰か欠けている人がいないか確認しながらも出来るだけ内陸へ、波が来ない方へ逃げた。一緒に逃げた隣の高校の生徒達も急な揺れにびっくりした様子で、「本当に起こった…」「避難訓練役に立った…」と何人かが呟いていた。


それから2日後、家族全員と連絡を取ることができた。

友人と良かったね良かったねとひしひしと抱き合った。




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避難生活から数週間経ったある朝、苦しい事実が私を襲ってきた。


新聞に、幼馴染の名があった。


あの頃は毎日亡くなった人の名前が新聞に並んでいた。


きっと生きている、会えると思っていた。


私は黒くその場所を塗り潰した。

あるわけがない。

いやだ、これは夢だ。

そう言い聞かせて、自分を保った。

幼馴染は、小さい頃から私の隣にいてくれて、帰り道も一緒に帰っていた。

人は誰かが居なくなって初めて、当たり前じゃない日常に気付くのだと思った。


死んだ魚のように寝た次の日の朝、1人茫然と外に出た。

押し込んだ感情は重石を除け、滂沱の如く流れ出した。


大声で泣いた。


友人や他の人がいるのも全部お構いなしに、泣き叫んだ。






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あれから13年

私は今日、幼馴染に会いに行く。


向こうは、喋りもしてくれないけれど。

あいつのお母さんに道を教えてもらった。


「えーと、右に3つ、左に……っと、

よっ久しぶり、元気にしてた?」


彼が好きなマリーゴールドの花を一輪だけ買って、

彼の側にある花瓶に生けさせてもらった。


「おーい、私だけ大人になってどうするんだ〜?」


沢山の話をした。

同窓会の話、大学の話、サークルの話、それから恋の話。



「私さ、この前大学の後輩に告白されたんだ。


結構なイケメン君でね、性格も良いって噂だったんだけど


断った。」


あいつが食いついて来そうな話を並べた。


『律は鈍いから恋とかねーだろ』

その言葉に昔は何も言えなかった。


「私だっていたよ」


彼が聞いたらどんな反応するのだろうか。



「凪」



三浦 凪

私の幼馴染で憧れ

私の好きな人


答えは返ってこない、それでもいい。


幸せな日々はまだ覚えてる。


空に渡る日まで、私はこの記憶と共にいようと思う。

ありがとうございました。

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