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一章 第十二話 第二ステージ(1)

遂に第二ステージスタートです!! 

第一ステージに比べて大分長いかもしれませんが、是非お楽しみください!!


 ── 東貴族街≪イーストアリア≫ フレミア家邸内 ──


 絢爛(けんらん)絵画(アート)に古風な骨董品(アンティーク)が立ち並ぶ邸内の回廊。

 (ばん)の食事を済ませ、リンが自室に戻ろうとすると……。


「待ちなさい、リン! 貴方、また野蛮な(たわむ)れに付き合っているようね。前にあれほど言ったでしょう、私たち純血の魔術師はむやみに血を流すべきではないのです。分かっているの!? それに、貴方のパーティーメンバー、両者揃って下民だそうじゃない? そのせいで貴方が怪我を負う羽目になったのよ! 全く、前にも一度忠告したのですけどね。パーティーの再編成及び担当教員の変更、やはりもう一度……」

「母様、違っ……、彼らは……」

「お黙り!!」


 邸内に響く折檻(せっかん)の声。リンはその恫喝に再び萎縮してしまった。

 ああ、また自分は何も言えないのだろうか……。


「……とにかく、異論は認めません。明日(あす)の競技はわざと負け、もう大会には出場しないこと。パーティーについてはまた後で検討します。いいですね?」

「……はい、母様」


(どうしよう……)

 

 月明りが差す自室。

 燭台(しょくだい)の上の燈火(ともしび)がゆらゆらと(ほの)かに揺れていた。



 ※CHANGE



 後日、≪魔術戦線≫第二(セカンド)ステージ当日。

 見事最初の関門を突破した生徒たち御一行は現在、何故か王都南部の市民街区域に集められていた。


「なあ、司令はまだ来ないのか? もう予定時刻過ぎてんぞ……」

「うーん、何かトラブルでもあったのかな?」

「この様子じゃリンが黙ってねーな、なんせここ南部だし。なあ、リン?」

「……ええ、そうね……」

「「……??」」


 普段の彼女の調子は何処へいったのだろう。

 いつもなら、「この私をこんな場所に待たせるなんて」とか言いそうなものだが、今日はその威勢がまるでない。

 彼女の平然とした態度に、ゼロとライトは若干の違和感を覚えた。

 

(パンッ!!)


 両手を合わせ、一拍。

 多くの生徒が動揺する中、トウカが急ぎ慌てた様子で壇上に現れた。

 よほど忙しかったのだろうか。


「……申し訳ない、生徒諸君。実は≪観戦用魔力モニター≫の設置に少々手こずってしまってね。……それでは気を取り直して、第二(セカンド)ステージの開幕だ!!」


(オオオ──!!)


「司令、()ずはこの場所の説明を。それと、ルール内容の確認もです」


 マリーからの辛辣(しんらつ)で的確な指摘に、司令官様はぐうの音も出ない。


「はーい、承知しました……」



 ※CHANGE



 事は数日前……、トウカの元に奇妙な依頼が舞い込んだ。

 

「南部の十三番街、あそこ一帯は今や無法者の溜まり場となっておってな。魔術とやらを使う危なっかしい連中もおる故、住民が家を(ほう)って(みな)出てっちまったんじゃよ。そこで、奴らを追っ払って欲しいんじゃが……、その際同時に、街も取り壊して欲しいんじゃよ……」


 なるほど、確かにこれは奇妙と言える。


「……よろしいのですか? 住民がいないとはいえ、街を破壊するというのは……」

「構わんよ、元よりあそこは再建予定。創造とは常に破壊から生まれるもの……。建築家として四十と数年、ワシの意匠人(デザイナー)としての腕がなるわい」

「……なるほど、分かりました。では……」


 簡単に言うと、新しく街を作り直したいから悪人を掃討した(のち)、一端全部取り壊してくれとの事。

 それを好都合としたトウカが、本大会の競技種目として昇華させたのだ。

 従来は別の種目だった第二(セカンド)ステージ、その決定は異例も異例だった。

 当然、反対した王都の役人もいたが、不変を嫌うトウカはその決定を押し通した。



 ※CHANGE



「というわけで諸君、存分に壊してくれて結構!! それから、対魔力、物理防壁並びに防音壁を組み込んだ結界はすでに敷かせてもらった。そのまま()ったら迷惑だからね」


「ルールは単純(シンプル)。まずこの競技ではポイントによる加点方式を採用させてもらう。生徒それぞれが最初に所持するポイントは<50pt>、そのポイントがパーティー全体で<1000pt>になった瞬間に君たちの突破は確定する。結界内に放った魔獣を討伐することで見事ポイント獲得だよ。ちなみに魔獣のレベルによってポイントは異なるからそこは注意してね。……まあ無論、生徒同士(・・・・)でポイントの奪い合いをしくれても一向に構わないけど……。魔道具についてだけど、殺傷能力のないものなら基本オーケー、あんまりやりすぎると、監督官に止められて即刻退場となるから、そこら辺は肝に命じておくように……。こんなものかな?」


 単純(シンプル)とは何だったのか。

 その頃、流れ込む情報量の多さにゼロの脳内は紛糾(ふんきゅう)していた。


「……なあ、ライト、マジで何も分かんないから、いつもみたくお前の要約術でなんとかしてくれ」

「了解! 少し待ってね……」


 ── 第二(セカンド)ステージ ルールブック ──


 ①本競技ではポイントによる加算方式を採用。各生徒には初めに<50pt>が支給され、パーティー全体で<1000pt>を達成した瞬間に次のステージへの突破が確定する。


 ②結界内には多くの魔獣が放たれており、彼らを討伐することでポイントを獲得することができるが、魔獣のレベルによってポイント数には上下がある。


 ③必ずパーティーメンバー(三人)揃って出場すること。


 ④スタート地点はランダム(・・・・)であり、お望みであればパーティーと合流する必要がある。


 ⑤直接生徒に危害を加えるような魔道具でない場合は、使用可能。


 ⑥制限時間は一時間!


「もう理解した生徒もいそうだけど、これはチーム戦であり、個人戦だ。第三(ファイナル)ステージへの切符を勝ち取るためにも、存分に競い合ってくれたまえ。……それでは諸君、健闘を祈るよ! テレポート!!」


(パンッ!!)



 ※CHANGE



 我が名は武隠士(ブインシ)。東方より来たりし、武術(・・)を極めし者である。

 私は武術を愛している。故にその多くを知っている。

 柔術や槍術、和の国固有の剣術然り、武術とは長い歴史の中で、脈々と受け継がれてきた覇道を歩む者たちの矜持(きょうじ)の現れ、命を()した者たちの伝統の血漿(けっしょう)!!

 ああ、何という美しさ、まさに惚れ惚れの極致!!

 

 そんな私であったが……、急遽魔術学校への赴任(ふにん)が決まった。我が(ぬし)大望(たいもう)故、それは仕方のない事だと受け止めている。のだが……、一体何なのだ!! 魔術(あれ)は!!!!


 無から有を生み出す蛮行の極み。己の肉体ではなく気(魔力)に問いかけるその(あやま)ち。

 強さとは、血と汗滲む努力の()(すえ)に獲得するもの。

 本来、ああも容易(たやす)く敵と対峙することなどあってはならんのだ……。

 でなければ、恐怖心は薄れ、その先にある本物の強さにたどり着く事など到底不可能!

 魔術(それ)は醜悪、恥を知れ!!


 だが最近、厭々(いやいや)老師(きょうし)の任を引き受けた私の元に、中々骨のある生徒(もの)がやってきた。

 貴族なのに、戦闘狂。奴は事あるごとに私に戦いを挑んできては、返り討ちにしてやった。

 幾度となく叩きのめしても挑んでくる、肝の据わったその闘志。若人(わこうど)とはやはりこうでなくては! 

 奴は私の教えの下、魔術(それ)に頼る事なく、みるみる成長していった。

 この卑小(ひしょう)の地で、私を楽しませたのはいまだ奴くらいの者……。その成果を今日此処で、存分に発揮してくれることだろう。

 

 このような武のない大会に興が乗らないのは周知の事実。

 だが!! 今日見る武術を楽しみに、私は此処(ここ)(たたず)んでいる(ぶっちゃけ監督官とかどーでもいい)!!


 ──さあ、今日はどんな武術が見れようぞ。



 ※CHANGE



「マジでランダムで飛ばされるんだな……。アイツらは近くに居ねーみたいだし、合流するまでしばらくは一人だな……」


 トウカの言伝(ことづて)通り、スタート地点は無作為(ランダム)に決められた。

 見た所付近に魔獣も人も見当たらない。ゼロは一人で周囲を探索してみることにした。


「──そっちじゃないんだション!!」


 その場に木霊(こだま)する喚声(かんせい)。少年の頭上を飛び回る謎の生き物は一体……。


 飛行型アザラシ妖精、その名も≪ルーニション≫。

 この世界に魔獣は多く生息するが、妖精種はごく僅かだ。

 近年の魔獣の大量発生を受け、その数が激減してしまったのである。

 一方で、妖精(かれら)に魔獣のような害はなく、普段は森を住処(すみか)としており、人類とは友好的な関係を築いている。


 中でも≪ルーニション≫は優れた知性を持っており、人と会話もできる聡明な妖精だ。

 なぜ妖精なのにアザラシなのか、そしてなぜアザラシなのに羽があるのかは依然として謎に包まれているが、それらを無視すれば完璧(パーフェクト)な妖精と言っても過言ではない。

 今回はポイント数や魔獣、仲間の位置を把握するための補佐として、各パーティーに一匹(あて)がわれることとなった。

 そしてその内の一匹が、少年の元についてきたという訳である。


「君が今いるのは結界内のBブロック、まずは仲間との合流を優先した方がいいんだション!!」

「アイツらは今どこにいるんだ?」

「二人共同じFブロックだション!!」

「同じか……、なら問題はねーな。ライトがいれば、きっとリンも大丈夫だろ。おい、アザラシ!」

「何だション?」

「俺はこのまま一人でポイントを稼ぎに行く! 魔獣の所へ案内しろ!」

「そ、それは危険だション!! 魔獣のみならず、他の生徒たちもいるんだション! 彼らがもしすでに合流していれば、君は格好の的になるション!!」

「(うーん……) ま、問題なし! 俺一人で<1000pt>稼いでやんよ!!」


 ──その時、ゼロの目先を小型の猪魔獣が横切った。

 まずは一頭。ゼロは剣を引き抜き、勢いよく駆け出して行く。


(ッ!!?)


「やあ、お騒がせ下男(ボーイ)。待ってたぜ!」

「待ち伏せして正解だったな、兄貴!」

「ああ、お前のような下民(ゴミ)には早々に退場してもらうぞ!」


 三つ子の絆というやつだろうか。その三人は、偶然にも同じ場所に転移していた。


(だから言ったション……。どんなに威勢()いても、三人がかりじゃもう打つ手は……)

(三人か……、こっちとしては束になってくれた方がありがたいな)


『粒気収束……』


 ゼロは背負っていた剣の(さや)ごと引き抜くと、身を(かが)め、それを腰脇に抱えた。

 ──簡単な事だ。一つの技しか使えないのであれば、(かた)を変えてやればいい。


『……三十パーセント 貫通剣(ペネトレイト)旋回粒(せんかいりゅう)!!』


 ゼロは抜刀と同時に飛び出すと、しなやかに身を(ひるがえ)した。

 回転する斬撃の渦に、為す術なく弾け飛ぶ三名の生徒。


 ──ゼロは見事、単騎での勝利を収めた。


「よし、次!」


(……凄い。凄いション! 本当に一人で三人を……。コイツ、中々やるんだション!)

「<150pt>獲得……、合計<200pt>だション!!」


「あれは!! 和国(・・)由来の抜刀術!? だが、なぜ……この学校に()(もと)出身の生徒などいたか?」


 武隠士は魅せられていた。抜刀術だけではない。

 あの身体のしなやかさ、重心の置き方に至るまでその全てに無駄がない。

 あの少年は一体……。


「ゼロ=ノーベル……。なるほど、ようやく興が乗ってきたな……」



 ※CHANGE



「な! だから言っただろ、問題ねえって!」


 結界内Bブロック。開始してから僅か五分で、ゼロは早々に<200pt>を獲得していた。


「ぐぬぬ……、確かに君は強いション。だけどあまり調子に乗ると……」

「……おい、どうした?」


 なんだろう。先程まで饒舌(じょうぜつ)だった妖精が急に黙り込んでしまった。


「……大変だション。君の仲間の一人……、ライト君の魔力反応が消失したション……」


(……アイツが!? そんな事、あり得るのか? 信じたくはねーが……)

「予定変更だ! おい! アザラシ、俺をアイツらの場所に……」


「ゼエ──ロオ──ノオ────べル────!!!!」


(ドッッゴオオオ────ン!!!!)


 結界内に鳴り響く轟音。爆風を突き抜け、ゼロは勢いよく家々に突貫(とっかん)した。


(一体、何が起こったション……?)


(あぶねー……、もろに食らってたら完全にアウトだった……)


 手の指先がビリビリと痛む。間一髪、ゼロはその一撃を(つるぎ)(はら)で防いでいた。

 再度(つか)を握りしめ、よろめきながらもゆっくりと立ち上がる。

 見上げると、上空に差す影が一つ。先ほどの重い一撃の出どころは……。


「僕ちゃんの名はウィット!! 上げてけよ、ゼロ!! 死闘(バトル)の時間だ!!」


 ── 同刻 結界内Fブロック ───


 相対(あいたい)すは、()のローブを身に纏った青紫髪の男。

 金色(こんじき)の青年は、すでに気を失っていた。

 

「おやすみ、ライト=ウィリアムズ。白昼(はくちゅう)で会おう……」


(────キンッ)



 



 








 


 

 

 

 









 




読んで下さりありがとうございました。

いいねやブックマーク、是非よろしくお願いいたします!!


── 本話のおまけ キャラクター紹介 Part1 ──


①ゼロ=ノーベル:本作の主人公。好奇心旺盛の無邪気な少年。身体機能が抜群に優れており、剣術と体術を併用して戦う魔術師見習い。

※固有魔術:魔力を帯びた斬撃の発散?


②ディア:ゼロの姉。ゼロの主屋でもある南部六番街の酒場≪グリーンハット≫の売り子。めちゃスタイルいい。


③ルネア:ゼロとディアの母親。≪グリーンハット≫の女店主。旦那とはすでに他界している未亡人だが、その艶やかな肉体にファンがいるとかいないとか……。




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