序章 第一話 端くれの魔術師
この作品、本当は漫画で描きたかったのですが、絵があまり上手ではないので、それならもうこの媒体で投稿しようと思った次第です。ちなみにこの作品第八章まであります。長いです。そんな私の作品に付き合ってくれる読者の方々がいれば幸いです。読者の皆様が面白いと思える作品を創作しますので、これからよろしくお願いします!!!
(──ガチャ)
「ゼロ、お前今どこにいるんだ!?」
「……ん、塔の上だな。うーん、たぶん教会 (ムシャムシャ……)?」
果実を頬張る咀嚼音が受話器越しに聞こえてくる。
「罰当たりな奴め。まあいい、そのお咎めはまた今度だ。早速だが、四番街で事件が起きた。例の連続強盗犯だ。すでに警備隊の何人かを向かわせたが、上手いことまかれてしまってな。悪いが至急現場に向かえるか?」
「……了解」
(──ガチャン)
「街がよく見えるからいいんだけどな、ここ……」
少年の眼前には、石造りの街々が広がっている。
生い茂る緑と運河の先には、王様が住まう白亜の城も見て取れる。
そこに映るは、誰もが認める美しい景色。
赤褐色の髪と透き通った紅の瞳。
青の髪飾りをつけたその少年は、高さ百メートルの塔の上から飛び降りた。
──少年の名はゼロ=ノーベル、魔術師の端くれである。
「おし!! 行くか!!」
※CHANGE
── 王都バルデン 南部 四番街 ──
(公務員、商人だ? 真面目に働けなんて俺たち魔術師には関係のない話だ。常人と違って魔術を扱える俺たちは思うがままに生きられる。衣・食・住に困ったら? 全て力で奪えばいい……)
フードを被った細身の男は、盗んだ金を懐に軽い足取りで歩を進めていた。
男の固有魔術≪入れ替え≫は、同じ重さのもの同士を強制的に入れ替えることができる。
金貨が欲しければ、手元に同じ重さの石ころでも用意すればいい訳だ。
また、多少の重さの誤差は許される。
金貨が無価値な石ころに変わった人々の惨めな顔を連想すると、思わず口元が緩んでしまう。
男はそのまま暗がりの路地へと消えた。
「あーあ……、ほんっと、楽な人生だよ……」
──その時、路地を歩く男の前に一つの影が降り立った。
「よお、お前か? リストにあった連続強盗犯。子どもとお年寄りからも金品を巻き上げるなんざ、賞賛に値するクソヤローだな」
男の額から冷や汗が零れ落ちる。それは、焦りとも恐怖とも違う単純な疑問からだった。
目の前にいるコイツは、一体どこから現れたのか?
尾行であれば魔力感知で気が付くはずだし、なにより待ち伏せはありえない。
なぜなら男は、毎度この路地を通るわけではないからだ。むしろ初めて通ったほどである。
そう、答えは……。
(コイツ……、建物の上を飛び移って来やがった!? どんな神経してんだよ!!?)
だが、男は安堵した。
暗がりの路地に木漏れ日が差し込み、そこにいたのはなんと、成年にも満たない少年だったのだ。
「そうか……、最近警備隊に入ったとかいう魔術師。それがこんなガキとはな」
ゼロは背負っていた剣を引き抜くと、男が身構えるのと同時に駆け出した。
しかし、男には余裕があった。それは確かな経験値と魔術の練度からくる圧倒的な自信。
男は自らの魔術で、横目に映ったゴミ箱と少年の持つ剣を入れ替えることに決めた。
両者はおおよそ同じ重さだ。
(コイツがもたついたら、そのままとんずらこいてやる!)
(パッ!!)
「バーカ……。誰が剣士なんて言ったんだよ」
ゼロは男の懐に潜り込むと、鳩尾に拳を叩き込んだ。
ゴミ溜めに勢いよく吹き飛んだ男は、なぜだという表情を浮かべている。
それもそのはず、ゼロは最初から剣で攻撃するつもりなど全くなかった。
つまりはフェイントである。
「クソが……」
男の捨て台詞も束の間、警備隊が到着した。
腰脇にピストルと剣を携えた、やたらとガタイのいい男がゼロの方へ近づいてくる。男の名はゼム=ヴォイド、警備隊の隊長だ。
「ゼロ、よくやってくれた。今日こそお前に我が警備隊の誇り高き勲章を……」
「わりーな、ゼムのおっちゃん。今日はおつかい頼まれてんだ。店の手伝いが終わってからだから、夕方にはまた合流するよ」
そう言うとゼムのしょんぼりした顔をしり目に、ゼロは大通りに駆け出した。
※CHANGE
──≪魔術師≫。
それは文字通り魔術を行使し、魔を祓う者たちのことである。
彼らはこの王都バルデンにおいても稀有な存在であり、人口にしておよそ十パーセントにも満たない。
通常魔術師は国に仕え、任務をこなし、生計を立てるものだが、中にはその力を悪用し、人的被害をもたらす厄介者も存在する。
つまりゼロは、後者の悪行を阻止する活動をしているわけだ。
まあゼロの場合、国に仕えているわけではないので、正式な魔術師ではないのだが……。
※CHANGE
「なあー、頼むよおっちゃん!! 俺の剣、もう刃こぼれしてきたんだ! 毎日大切に、ガンガン使ってやってんのによー。だからさ、このかっこいい黒の剣、俺に……」
ろくに手入れもしないで何が大切にだと思いながら、頭に手ぬぐいをまいた老人はゼロの話を聞き流す。
六番街の大通りに位置する鍛冶屋。
ゼロはおつかい帰りに、店の隅に置いてある黒刀をせがんでいた。
その剣に鞘はなく、おまけに少し錆付いている。
しかし、黒の光沢と微かな青光りを放つその剣に、ゼロは何とも言えぬ魅力を感じていた。
ゼロが剣を求めてこの店にやってくるのは、これでもう十一回目のことである。
二か月前に警備隊に入った際、ゼムに「まずは見た目からだ」と言われ、なんとなく剣を背負うことにした。
だが事あるごとにゼロは剣を壊し、今持っている品が折れれば、きりよく十本目の鉄くずの完成というわけである。
「なんど言ってもお前にもう剣はやらんぞ!! 何回目だと思ってんだ!!」
「そこを何とか!! 前に手助けした好みにさー!!」
──結局、剣は譲ってもらえなかった。
※CHANGE
「ただいま……」
剣の新調に失敗し、ゼロは少し重い足取りで酒場の厨房へと足を運んだ。
「あら、お帰りなさい。ずいぶん早かったわね。てっきり帰ってくるのは夕方とばかり……」
「さては、さぼりだなー。お姉ちゃんに会いたかったんだろー。このこのー!」
ディアに胸を押し当てられ、抵抗する間もなくゼロはうずくまってしまった。
周りの飲んだくれは、そんなゼロを見て盛大にからかう。
そう、このやけに騒がしい場所が少年の暮らす家。酒場の名は≪グリーンハット≫。
この店は今、主に二人で切り盛りしている。
店主のルネアはゼロとディアの母親であり、長年この店を支えてきた。
旦那とはすでに他界している未亡人だが、その気前のいい性格と男好きのする豊満な身体のラインから、密かに信者がいるとかいないとか……。
姉のディアは、客を呼び込む売り子だ。
顔立ちは母親そっくりで、白い肌に青の瞳。ブロンドの髪を後ろでお団子結びにしている。無論身体の艶やかさも母親譲りだ。
客からは「六番街の天使」とか言われているが、ゼロからすれば大雑把で無邪気なお姉ちゃんという認識である。
「やめてくれよ、ディア姉。もう子どもじゃねーんだから……」
ディアを押し返し、顔を少し赤らめながらゼロは手元にある物を渡した。
「はい、これ。頼まれてたやつ。少し店の手伝いしたら、また警備隊に戻るよ。そんじゃあ、俺は倉庫から酒樽運んでくる」
憂いの眼差しを向けるルネアに気を使い、ディアはゼロを呼び止めた。
「ねえ、ゼロ。アンタ少し無理してない? 最近帰りも遅いし、お姉ちゃん、心配だな……」
ゼロは厨房の奥にいるルネアからの視線に気づき、あえてそっちを見て答えた。
「大丈夫だって! 警備隊、俺にとってはすっげえ楽しいんだ! いろんな所見て回れるし、街の人達ともたくさん関われる。生にあってんだよ、本当!」
それは紛れもなくゼロの本心であった。
しかしやはり一番は……、自分を支えてくれる二人に恩返しをすること。
ゼロにはなぜか幼少期の記憶がない。その記憶は、二人との暮らしから始まっている。
女手一つで自分を育ててくれたルネア、いつも明るく振る舞ってくれるディアのためにも、ゼロは二人の負担を少しでも減らそうと二か月前に警備隊へ入団した。
入団の手続きは思いのほかスムーズだった。
なんでも南部に魔術師はほとんどおらず、いたとしてもそれは地方から流れてきた者らしい。
そういう奴に限って大抵面倒事を起こす。警備隊は日々苦労していた。
貴族街である西部と東部には魔術師の人材が豊富だが、彼らが無償の善意で南部を助けたことなどこれっぽっちもないらしい。よほどの矜持をお持ちのようだ。
──魔術師には魔術師を。
ゼムの人の良さもあり、ゼロはすぐさま警備隊に歓迎された。
とは言ったものの……、ゼロは自分が魔術師だとは思っていない。
なぜなら自身の固有魔術なるものが分からないからである。
──≪固有魔術≫。
それは各魔術師に備わる固有の能力のことであり、その種類は魔術師の数だけ存在する。
また術師には、魔術を発動する際に≪粒刻≫とよばれる刻印が手の甲に浮かび上がるのだが、ゼロにはそれすらもなかった。
確かに幼い頃から運動能力には自信があった。
建物の上を悠々と横断したり、よわい七歳にして重さ百キロの酒樽を持ち上げたりしていたが、それは普通のことだと思っていた。
年を重ねるごとに他人との差異に気づいたが、やはり自分が魔術を使っているとは到底思っていないのである。
※CHANGE
店の手伝いを終え、ゼロは三番街に駐屯する警備隊に合流した。
すぐさま巡回に向かおうとするゼロに、ゼムが一声かけてきた。
「なあ、ゼロ。どうも最近魔術師関連の事件が多くないか? 地方からどんどん無法者共が流れてきやがる。南部が手薄というのはあるが、それにしてもおかしい。お前が警備隊に来てからは特にそうだ。余計なお世話かもしれんが、お前さんも十分注意してくれ……」
そんなゼムからの忠告に、ゼロは拳を胸に当て、力強く返答した。
「任せとけって! どんな奴が来ても俺がぶっ飛ばしてやっからさ!」
「……そうだな。頼んだぜ、超新星!」
「おう!!」
※CHANGE
「……まったく、あの子ったら剣に夢中で晩御飯の食材買い忘れたわね。仕方ない、弟の尻ぬぐいはお姉ちゃんがやりますよっと!」
ディアはゼロの買い忘れの補填のため、一人大通りに来ていた。
もう夕方ということもあり、昼間と比べ人気がない。出店の大半はすでに閉まりかけていた。
──と、その時……!! 食材のメモを見ながら歩くディアの背後に男が忍び寄った。
「…………!!? ────んっ────ん」
「悪いな、姉ちゃん。少し寝んねしてもらうぜ……」
(──ガチャ)
「どうした? ゼムのおっちゃん」
「ゼロ!! 緊急事態だ!! お前の姉ちゃんが人質に取られちまった!! 我々は今標的と交戦中、場所は六……」
(──ガチャン)
ゼロは目を見開くと、一目散に現場へと急行する。
※CHANGE
── 六番街 大通り ──
「よお、警備隊ただ一人の魔術師。待ってたぜ」
そこにいたのは、タンクトップを着た銀髪の男だった。
大柄で、剛腕とも呼ぶべきその腕には、多くの傷跡が見られる。
周りには警備隊の隊員たちが倒れていた。
「ゼロ…………」
ディアは男に首元を抑えられ、苦しそうにこちらを見ている。
「御託はいい。ディア姉を離せ」
「おいおい、せっかく会ったんだからよお、ちょいと談笑しようや。南部じゃ魔術師は希少だからなあ、同胞として聞かせてくれよ。弟をとっちめた感想をよお!!」
その男は、ゼロが朝方に殴り飛ばした強盗犯の兄だった。
「弟は優しくてな。盗った金を俺にも分けてくれてたんだよ。無口だが、いい奴だったんだ。そんな俺たちの絆をお前はぶち壊した。今頃は刑務所の中で震えてるだろうぜ!! 弟を返せ、女を解放するのはその後だ……」
ゼロは怒りで今にも斬りかかりそうだった。
だが、ディアに攻撃が当たったらマズイ。怒りを押さえつけ、なんとか理性を保とうとする。
しかし、感情の揺さぶりが片足を一歩前に進ませた。
「ゼロ、来ちゃダメ!! コイツは……」
「うるせえなぁ!!」
男はディアを地面に叩きつけると、右手に杭を打ち込んだ。
身動きを封じられ、ディアは地面にうつ伏せの状態となってしまう。
「っっっあ────!!」
手の甲から血を流し、もがき苦しむその姿を見て、ゼロの理性は完全に途切れた。
怒りで我を失う。気付けば、剣を引き抜き男に斬りかかっていた。
「青二才が……」
『固有魔術≪鉄の剛腕≫』
その瞬間、男の両腕が鋼鉄の鎧を纏った。
先ほどまで首元を捉えていたゼロの刃が砕け散る。
男は右手に力を込めて振りかぶると、その鉄拳をゼロの脇腹に叩き込んだ。
「かはっっ……!!?」
恐ろしい硬度の打撃をもろにうけたゼロは、血反吐を吐きながら屋台の方へと吹き飛んだ。
「俺はこう見えても元軍人でな、それなりに修羅場をくぐってきたもんだ。お前とは年季が違えんだよ」
しかしゼロはすぐに立ち上がると、そのまま男に素手で殴りかかった。
痛みなど忘れ、その眼はすでに充血している。
「ほう……、剣士だと思ったが、素手でここまでやるか。まだまだ楽しませてくれよ、後輩……」
(……っあ??)
対峙した時から感じていた確かな違和感。
男は少年に≪粒刻≫がないことに気がついた。
それを見て、思わず口元が緩む。
「おい、後輩。多少魔力は感じるが、お前魔術師じゃねえぞ。魔術を使えば、必ず≪粒刻≫が現れる。それがねえってことは……、分かるな? お前じゃ俺には勝てねえ。見てみろよ、自分の拳。そりゃあもう使い物になんねえぞ。まあ、魔術師じゃねーのにここまでやったことは誉めてやるがな……」
男は最後と言わんばかりに、間髪入れずに鉄拳を打ち込んだ。
「どうせここに、助けなんざ来ねえからなあ!! 俺がテメエを殺そうと!! 俺を豚箱にぶち込む奴なんざ、もうどこにも居ねえんだよ!!」
一、二、三回……。
全身から血を噴き出しながらゼロの体が宙を舞う。
「惨めだなあ、お前……。弟をただ解放すれば良かったのによお。まあ、どの道この女は殺すけどな。俺から大切なもん奪ったんだ。ならこっちも奪うのが道理だろ? ギブアンドテイクってやつだ」
「…………まだ……だ……」
「……は?」
弱々しいしい声で、何とか片膝をつく。
正直もう戦える体じゃない。自分が一番分かってる。
足はろくに動かず、両手は鉄をなぐったせいでさっきから血が止まらない。
頭に血が回らなくなって、今にも気を失いそうだった。それでも少年は立ち上がる。
「おいおい、マジかよ……。魔術師でもこんなタフな奴はそういねーぞ」
男の足音が近づいて来る。トドメを刺すつもりだ。
「次こそ終いだ、楽にしてやる……」
──だがその時……、後方から聞き覚えのある声がふと耳を打った。
「ゼロ!! やっと鞘が仕上がった。持ってけえ!!」
剣を投げたのは、昼間に会った鍛冶屋の店主だった。
それはゼロめがけて弧を描きながら飛んでくる。
「……ッ!? そんなの俺が黙って見逃すと思ってんのか!!?」
男は腕の鉄片をちぎると、飛んでくる剣に向かって弾いてみせた。
しかしその剣は、まるで意志を持ったかの如く鉄片を避けてゼロの左手に収まった。
「今までお前さんに持たせてた剣、ありゃ全部、ガラクタだ。お前さんが店に訪れた時からその剣に目をつけてたのは知ってたさ。だが鞘がなけりゃ剣じゃねえ。そのまま渡せば俺も鍛冶屋失格ってもんだ。それ使って助けてやんな。姉ちゃん、苦しそうだぜ」
手の甲に十文字の刻印が浮かび上がる。
ゼロは剣を前に、右手で鞘から引き抜いた。
それに呼応するように刃全体がまばゆい光を放った……!
※CHANGE
──二人には心配掛けたくなかったから黙ってたけど……、本当は覚えているんだ。
背筋も凍る冬の空、その日は吹雪に見舞われて、通りに人の気配もなかった。
腹が鳴って、行く宛てもなくて、今にも倒れそうだった。
そんな俺の元に現れたのがディア姉とルネアさんだった。
親の顔は今でも思い出せねーけど、それだけはちゃんと覚えてる。
二人が俺に手を差し伸べてくれたこと。
血も繋がっていない俺を本当の家族のように迎え入れてくれたこと。
みんなと過ごしたあの日々を、そしてこれからの日々も、俺は俺を支えてくれる人たちには笑っていて欲しいんだ。
……だから、今だけ力を貸してくれ。
悲しみも、怒りも、執念さえも、全部まとめて……、己の身体に魔を宿せ。
──だってお前は、魔術師なんだろ?
※CHANGE
「たかが武器が変わったからってなんだってんだ!! お前が瀕死なことに変わりはねえ!! 次こそ息の根止めてやるよ!!」
男は他に目もくれず、一直線にゼロに向かって駆け出した。
(フー……)
呼吸を整え、冷静に前方へ剣を構える。
すると、大気中の粒気が剣に向かって一点に収束し始めた。
ありえない、男は困惑していた。
≪粒気≫とは、大気中の魔力の残滓のことである。
魔術を使えば、魔術師の体内の魔力残量は減る。
そして、魔力を補給するには大気中の≪粒気≫を体内に取り込み、時間をかけて魔力に変換する必要があるのだ。
だがゼロは、その工程を時間を掛けずに行っていた。それに伴う莫大な魔力量。
「ク──ソ──ガあキいがああ──!!」
刃全体が光に包まれ、周囲には溢れんばかりの魔力の色彩が飛び交う。
柄の重さに手がきしむ。でも絶対に離さない。
この身体が、やるべき事を知っているから……。
ゼロは片足を後ろに、重心を安定させ、両手で剣を振り上げた。
『粒気収束 百パーセント!! 貫通剣!!!!』
ゼロはその刃を、男めがけて目一杯振りかざした。
莫大な魔力とともに放たれた青白く輝く光の斬撃。
男は瞬く間に光に飲まれ、やがて視界から消えていった。
日が沈む寸前の夕刻。
紅色の空に一筋の青が対を成した。
※CHANGE
「ねえ、ゼロ、アンタ今日は暇なんでしょ? だったら切り盛り手伝いなさい。毎度昼間から飲んだくれで溢れてこちとら大変なんだから!」
「……ハハッ」
「ちょっと、何笑ってんのよ?」
「いや、何でもねーよ……」
ゼロはディアに連れられ、今日も店の扉を開く。
チリンと鈴の音が鳴り扉が閉まると、そこに掛かった木の板が揺れた。
──さあ、そろそろ開店だ。
読んで下さりありがとうございました。
コメントやいいね是非ともお願いします!!
どんな感想でも大歓迎です。それが小説初心者の私の糧になります!!