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第五話 エッチなアンデッドは童貞卒業になりますか? 前編

「『エッチなアンデッドとセックスして、童貞卒業と言えるのか』……」


「おう、飯時に変なこと言うんじゃねぇよ。酒がまずくなるだろ」




 肉汁と茶色のソースが音と湯気を立たせる鉄板。厚めに切られた肉塊にナイフを入れ、僕とエリンは一切れを口に。


 レアルの店のディナー用鉄板カウンターは、食材とソースだけ提供して客に焼かせる。


 最初の頃こそ彼が焼いていたが、焼き加減のこだわりが多種多様すぎて付いていけなかったとか。レア、ミディアム、ウェルダンの基本3つの焼き質に、拗らせた魔術研究者達は更なる理想を探求し続ける。表と裏で温度と時間を分け、3割ミディアム7割レアなんて子供の遊びか?


 端から見ていると楽しめたが、当人に愚痴らせると苦労してるんだなぁ……って。




「んぐ……いやね。死霊術科の先輩の甥っ子がデートするらしいんだけど、事前練習でアンデッドとシたら童貞卒業になるのかならないのか」


「おう、その彼女紹介しろ。しっかり仕込んで、挿入なしに満足できるようにしてやるよ」


「そう言いながら絶対に奪処女するよね…………あれ? 処女は玩具で膜破いても処女だよね?」


「定義上はそうだね。生殖器同士での性行為が卒業の契機。同じ観点からすると、アンデッドとエッチしたら童貞卒業かな?」




 付け合わせの野菜を籠に入れ、レアルは触手に通して横一列に吊るした。


 お祭り飾りのように華やかに、多色の瑞々しさがカウンター上に並ぶ。鉄板からは離し、程良く温められるが熱されはしない。雫滲むスライス玉ねぎを1玉分取り、肉汁の上に乗せてジュワジュワジュワジュワッ。


 新鮮な玉ねぎは、生でもいける。


 独特の辛味に苦手意識はあるも、こってりした味に加えれば味を締める。くどい濃厚にさわやかさをプラスし、表面だけ焦がして肉乗せ一緒に。


 あぁ……コレなのよ、コレ。


 この辛味が、ステーキの分派を宗派級にする。




「待て待て。性行為ってのは生殖行為だろ? 前提に『子作り出産』がある以上、妊娠できないと性行為って言えねぇんじゃねぇか?」


「アンデッドの生殖器は死んでるから機能してない。となると、そもそも『生殖器』って定義名称も合わない? 生殖できないなら、ただ『女性器』って言うべきなのかな?」


「なんだかややこしくなってきたね。整理すると、『生殖器同士での性行為で童貞卒業』、『生殖器で行うのが性行為』、『子作り出産可能なら生殖器、そうでないなら男性器女性器』。あれ? アンデッドのが『男性器』と『女性器』なら、エッチなアンデッドで童貞も処女も卒業できない?」


「随分早い結論で解決だね。先輩には大丈夫って説明しよう」




 野菜籠から半割のピーマンを取り、縦長のステーキを乗せてそのままパクリ。


 シャキシャキの苦みと肉のうま味、コクが合わさりこれもまた良い。


 ピーマンの苦みとえぐみは、熱を加えるとかなり和らぐ。半面、柔らかくなって歯ごたえが損なわれる。どちらが良いのかは個人の主義嗜好に譲るとして、僕は生の苦みをステーキのアクセントに加えたかった。


 良い……コレもまた良い……。


 次はどれにしよう。甘いコーンか酸っぱいパイナップルか。




「でもサラ。この前、妊娠可能なアンデッドの理論が出来たって言ってなかった?」


「ぶっほぉおっ!?」


「ん? まだ理論だけだから、試作して実証実験してちゃんと赤ちゃん産めないとかなぁ? これまで作ったエッチなアンデッドに適用してないし、しばらくは大丈夫だと思う」


「突然変異とか、自然発生の可能性は? 私みたいなテンタクルス族も、元は食虫植物からの突然変異。エッチなアンデッドが偶発的な要因で、妊娠可能になるとかない?」


「夢はあるけど…………んん? あれ? この前の戦地実験場で作った妊婦アンデッド、その後もボテ腹大きくなってた……?」


「おいっ、そのエロアンデッドどうしたっ!?」


「実験場の自爆に巻き込ませたから、廃棄できてると思う…………でも警備も監督もお手付き上等だったし、情を湧かせたのが一緒に脱出ってことも……?」


「アンデッドの子供はアンデッドになるかな?」


「どうだろ? 死霊術式が母体から感染してたとして、新生児の生命力とどっちが勝つか…………人間か半アンデッドかアンデッドか死産か……今度調査員を派遣してみよう」


「それが良いね」




 エリンのグラスにワインを注ぎ、やんわりした笑顔をレアルは浮かべる。


 その所作は自然だが、それとなく警告してくれたのだと何となく思った。


 彼は冒険者ギルドの上層にも顔が利く。どちらかと言えば『法』の側であり、依頼があれば『無法』を罰する。


 ――――おそらく、似たケースがあったのか?


 もしそうなら、少し聞き出すことはできないだろうか?

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