第二十六話 エッチなアンデッドとリビングデッド 後編
「つまりなにかっ!? 生きたまま魔物にして大勢巻き込んで、解決の為には全員殺さないとならないってことかっ!? クソだろっ!?」
「手紙にも書いてあるよ。『感染などの兵器性を持たせるには、術式を一から組み直さないと出来ないようにしてある。意味わかるよね?』って」
「サラの先生はギリギリこっち側ってことで良いのかな……?」
「エリンの感情に沿うと『そうだね』って言いたい。でも、実際は違うと思う」
「あ゛っ? はっきり言えよっ。言えっ」
「ほらここ。『エッチなアンデッドも良いけど、エッチなリビングデッドも凄く良いよっ! 今度自信作を交換しようねっ! 約束だよっ!?』」
「………………」
目の形は睨みのまま、エリンは怒りから軽蔑へ感情を入れ替えた。
周囲の反応もまた同じ。『師弟でエロしか頭にないのか』、『努力の方向性が明後日の明々後日を向いてるよ』、『でもリビングデッドなんて作る状況あるか?』、『オキニの性奴隷リビングデッドって最高じゃね?』、『『『それだっ!』』』。
――――うん、そうだよ。そうなんだよ。
先生はエッチなお気に入りをコレクションする為に、リビングデッドの研究をしてるんだよ……。
「…………はぁ……っ。この変態ドスケベ師弟っ」
「エリンは先生のコレクションを知らないからそんなこと言えるんだよっ。ドラゴンクィーンのエッチなリビングデッドを初体験に宛がわれて、でもなんか違うってアンデッドのマグロ姦にビビッ!と来た僕の感動わかるっ!? 雌に搾り取られるんじゃなく、雄が種付ける気持ち良さって――――わからないよね。女だもん」
「ぁ゛っ? レズ舐めんなっ? そもそもレズってのは女に性欲を抱くかどうかだっ。女を抱いて攻めてる時の心の充足感がわからねぇわけねぇだろっ」
「はいはいはい、喧嘩しないの。で? 聞いてた感じだと、お気に入りのエッチな死体調達で困ってるサラに、エッチな生体って選択肢もあるよって連絡してきたってことね? 方法によってはお巡りさん呼ぶから気を付けて」
「むぅ……ッ! 僕が好きなのはアンデッドであってリビングデッドじゃないのっ!」
エリンに一度差し出したロブスターを、『やっぱり僕のっ!』と奪い返してぷりぷり肉みりみりもりもり。
牛や豚、鶏とは違う弾ける筋繊維。
体組織の組成がどう違うのか、多少の興味はあっても専門外と割り切る。僕の専門は死霊術で、アンデッド系のエッチ型を主としている。もし知りたければ環境魔術科か料理魔術科を訪ね、実際に100尾くらい食べてから理解したい。
エビもロブスターも、いくら食べたって飽きない。
心は飽きても身体が求める。そこにあれば気付けば食べている。それが僕とエビ類の関係で、エッチなアンデッドもそうありたいあって欲しい。
…………でも、マグロ気質なリビングデッドなら良いのかな?
「……次の奴隷市っていつだっけ……?」
「おい、こら、おいっ」
「いやね、先生の助力を無碍には出来ないから。1体だけ、1体だけ」
「あ、もしもし? 君達の旦那様が浮気しようとしてるよ? 早めに確保してあげて」
「なにやってるのっ!? それに浮気じゃないしっ! 3人共僕の理想に理解はしてくれてるからっ!」
「1週間くらい監禁逆レイプで性欲枯らせっ。一歩踏み込む前に頭冷やせっ」
「そ、そんなに興奮してるように見えるっ? 判断力欠いてるように見えるっ?」
少しばかりの緊張から、喉が渇いて水を1杯。
一息入れるつもりだったが、即座に店内の全員が頷いた。驚き咽てゲホゲホ咳き込み、落ち着く間に手紙を仕舞う。このままだと没収されかねず、異次元格納魔術を直接起動して自分基点の亜空間へポイっと。
座標と次元を知り、アクセスできるのは僕しかいない。
僕以外の誰も、エッチなリビングデッドの魔術式を確認できない。
「しんようしてよぉっ」
「エロアンデッドの為に娼館経営したり、疫病発生地に旅行するような奴が今更だろ?」
「一度タガを外したらどうなるかわからないから、ギルドマスターにも話してマークさせてもらうね。友達だから信じてるよ、もちろん」
「感染しない個人用のリビングデッド魔術式って説明してよっ? それと、重傷の冒険者を生かしたり、敵国スパイの拷問前処理にしたり、病弱な人に施して延命したりって用途にも使えるんだからっ。もし必要になったら、こっそりご連絡ください」
「新しい商売始めるなっ! お前は本当に商魂たくましいなっ!?」
「僕だけの最高のエッチなアンデッド手に入れるまでっ! 僕は止まれないんだよ、知ってるでしょっ!?」
何年経っても変わらない僕の目標に、諦めのため息が幾つも漏れる。
ここだけは変えられない。変わってはいけないし、変えようとも思わない。
エッチなアンデッドの為に、僕は僕のできる限りをする。これまでもこれからもたった今も次の瞬間も。ロリで超乳でマグロでクール系で、無表情でエッチに貪られる妊娠可能なアンデッドこそ理想で至高なのだ。
例え次の段階に踏み出すにしても、そこを必ず越えてから。
それまで、僕は僕を見失ったりしない。
「あっ、でも先生と僕の女体の好み、ほぼ同じだからどうしよ……」
「テメェら本当に女の敵だよなっ!」




