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第二十二話 エッチなアンデッドは着せ替え人形 後編

 8つ割りに切られたレモンを持ち、皮を下、実を上にキュッと搾る。


 溢れた汁が小魚のフライにかかり、1匹シャクッと頭から齧る。素のままだと感じていた臭みが消えて、レモンの風味もそれほど感じない。刺激と臭みの中和によって、油を泳いだ魚の味が100%飛沫を上げた。


 唐揚げレモンが苦手な人も、魚フライレモンは試して欲しい。


 特にわかさぎは効果てきめん。あまりの違いに実際驚く。




「アンデッドは臭い、汚い、ただの死体。そういう偏見は他業種に根強く残ってる。服飾デザイナーに娼婦服のオーダー出そうとしたら、アンデッド向けってわかった途端追い出されたこともあったね」


「こうして盛況なのは社会の一部、か? ま、全体で見ればそれが現実か」


「普及に伴う市場拡大に、意識改革が伴ってない。世代を跨げば解決するかもだけど、供給が追い付かないと需要に取り残される。だからこそ、なんとか人員の確保を急ぎたいんだよねぇ……」


「死霊術科は人数少ないからなぁ……」




 椅子の背もたれに腕を置き、身体を捩って店内全体を見回しながらビール。


 今日の宴に参加している、自分含めた8名が科の全員。


 たったこれだけで、現在300体近いエッチなアンデッドをフォローしている。研究、製造、運用、販売、整備に検査にその他色々。魔術学園都市を治める王家からも、遥か遠く温泉地の出張所からも購入依頼が狂い止まない。


 中には、腹上死したメイドをアンデッド化して専属に、とか。


 隠蔽工作の片棒は担ぎたくないんだけど……。




「製造販売とレンタルと、アフターフォローに集中するのが良いのかな……? 服も下着も、スキルのある人が始めてくれるのを期待して……」


「待ってるだけじゃ何もできないよ? 欲しい物を手に入れたければ、自分から動かないと」


「そうは言っても……ねぇ?」


「私に振るなよっ。でもまぁ、熱した鋼も打たねぇと鍛えられねぇ。市場を充実させたいんなら、何だってやってみるのが良いんじゃねぇか?」


「何があるかなぁ…………イゼンナ。新人勧誘に良い手ない?」


「そういうのはサラの担当でしょうっ! 私はエッチなアンデッドに新作を着せて、ホクホク楽しむために在籍してるんですよっ!? 他の皆も似た者同士っ! エッチなアンデッドでエッチなことができればそれで良いんですっ!」


『むしろ事業を広げ過ぎだぞっ? もうちょっとこじんまりやろうぜっ。別にエロアンデッドがあろうがなかろうが、世間もお上も気にしねぇだろっ?』


「まぁ、極論そうなんだけど――――?」




 入り口の鈴がカランカラン鳴り、息切り入店した女性が1人。


 4つの目に4本の腕、下半身は節の細い大型の蜘蛛。アラクネ族であることは一目でわかり、案内を待たずカウンターに向かう。そしてエプロン姿のレアルに小さく、しかし必死に何かを話す。


 …………ちょっと目を惹く、手の中の包み。


 話の中で開けて出して、数着の衣服を広げ見せている。




「――――サラ。ちょっと来て」


「なになに?」


「この前の悪徳商人の件、覚えてる? キャラバン襲わせて、胡椒の価格を釣りあげてたやつ」


「うん。こちらの彼女と関係でもあるの?」


「私から説明します。3日後に毎年開催しているファッションショーがあるんですが、あの商人と組んでいた盗賊残党が街道を封鎖したんです。そのせいでモデル達の旅程が大幅に遅れ、とても間に合わないのでマスターさんのウェイトレスアンデッドをお借りできないかと」


「貸すのはやぶさかでないけど、コレ見て。サイズが足りないんだよね。特に胸の部分が3カップ小さい」


「そういうことね。――ドレトス! 身長176cm、Mカップ、元騎士の素体が2体あったよねっ!? 明後日までに使えるようにできるっ!?」




 比較的距離のあるテーブルへ声を張り、山盛りソーセージに顔を隠す無口陰キャが親指を上げた。


 次いで人差し指を立て、一周回して真下に向ける。意味は『完了予定、明日午後6時』。さすが製造・メンテナンス部門の筆頭研究員で、頼りになる同期同僚。


 …………ん? ちょっと待って。


 3日後のファッションショーって、確か魔術学園も協賛する大規模な奴だったような……?




「ねぇ? モデルが来れないのって貴女達の所だけ?」


「いいえ、参加する3割が間に合わないって話よ。代役を探して、こんな時間でも大勢そこら中走り回ってる。今回デビューするデザイナーの子なんか、憔悴しきって見てられなかったわ……」


「そっかそっか。えぇっと……エッチ目的じゃないから中古にはならないね。在庫のとサイズ合うかは天運ってことで、明日朝一に学園長に突撃しないと……」


「今度は何を企んでるの? 悪い顔してるよ?」




 心外な言葉をレアルに浴びせられ、ワインの一杯を注がせて目の前の彼女に。


 忙しくなるのは確定だが、現状取り得る最高の宣伝が出来そうだ。機会をくれた感謝を伝え、後日のスケジュールをざっくり決める。加えて彼女からモデル急募の職人達に、死霊術科の紹介も頼んだ。


 反響、どのくらいかな?


 新人たくさん発掘したいなぁ……。

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