第十七話 エッチなアンデッドで壁尻はいけません 前編
ガラスの円筒容器にマッシュルーム、エビ、唐辛子、ニンニク、ショウガとミニトマトを入れてオリーブオイルでひたひた。
可能な限り上まで注ぎ、蓋をしてから茹だった鍋に。既に投入していた1つを取り出し、熱さに抗いながら深皿に開けた。ぶわっ!と素材のうま味が香りとなって広がって、焼いたバケットと並べてテーブルの上に。
――――今日まで頑張った自分へのご褒美。
まだまだエビは高価ながら、小さな贅沢に収まる味方。
「で? 人手不足でアンデッドの事業縮小? エロアンデッドの娼館と販売は死守したよな?」
「そっちは僕と仲間で勝手にやってることだから。公的な分野で、男性アンデッドは下水関連、女性は公衆浴場の掃除と性奉仕に限定することに決まったよ。素材の供給も安定しないし、まぁ良い所に落ち着いた感じかな?」
「ただでさえ格安な公衆浴場で、エッチなアンデッドの生本番可? 娼館の売り上げ落ちない?」
「メンテナンスローテーションで、使える数を制限してるから大丈夫。でも、あぶれた人が娼館に行けるだけのお金を持ってなくて、不満が溜まるのを何とかしたいんだよね」
「頑張って稼げって言ってやれよ」
「拗らせたのが殺人事件起こしたら? いつかは起こることだけど、何もしないよりは何かした方が良い」
カリカリバゲットに黄緑色のオイルを浸し、食んで香ばしい音を鳴らす。
カリッ、パリッ、ジュワッ! 連続した歯ごたえに続いて熱々の油。肉のソレと違う青々しい香りが、溶け込んだエビやキノコの味を纏う。海鮮の臭みは唐辛子とニンニクが抑え込み、濃厚すぎて辛口の白で流し洗い残り香が鼻腔に。
あぁ……これでお風呂入ったら絶対気持ち良い。
「何か案はあるの?」
「個人的には嫌なんだけどね。下半身だけのアンデッドを壁に埋めて、性処理用具として浴場に設置するって。つまりは全身アンデッドの下位互換。ただ挿入して腰振って、射精してスッキリするだけの壁尻」
「前に言ってたダルマ棺と変わんねぇだろ?」
「全然違うよ。女性の特徴が多ければ多いほど、使ってる時に『好みの女を犯してる』って性欲求を満足できる。顔、髪、胸、腹、尻――ダルマはコレだけの数を残してる。でも壁尻は尻以外に何もない」
「あっ、脚も落とすんだね。確かに、それじゃ『女』じゃなくて単に『穴』かな」
「エリンだって、股間だけで女扱いはできないでしょ?」
「まぁなぁ…………首裏舐めながらおっぱい揉んで、脚絡ませて太腿の柔らかさと弾力感じながら素股して……最低それだな」
「加えて淫魔術科のホール型魔具。アレの上位互換扱いにしたくない。ホールはホールで良いモノなんだからっ」
オイルを吸ったマッシュルームの『くっ、ぷしゅっ!』。程良い煮加減のエビが『みりっ、ぷりんっ!』。
直火オイルならこうはいかない、湯煎オイルの熱の入り具合。人によって好みは変わるが、僕は湯煎の方を圧倒的に推す。
キノコと海鮮は、熱が入り過ぎると小さく固くなる。
ぷりぷりの食感を楽しみたいなら、茹でか蒸しが一番良い。腕の良い料理人は炒めや揚げでやってくれるも、自分でやろうとすると非常に難しい。より簡単にできるからこそ、ボイルは僕達素人の味方だ。
――――食べかけのバゲットに乗せ、大口で齧る。
エビ、キノコ、バゲット、オイル。強すぎる味のパンチが味覚を叩いた。
「サラって淫魔術科と仲良いよなぁ~? どの娘が好みなんだ?」
「ビジネスパートナーなだけですぅっ。肉体関係はありません~っ」
『エッチなアンデッドじゃなく、生身に溺れそうだから遠慮するんだってっ! 一晩くらい付き合ってくれてもいいのにねぇ~っ!』
『アンタがゴムに穴開けて、既成事実にしようとしたのを警戒してんのよ』
『エッチは孕んでこそエッチですぅ~っ。それにぃ~っ、サラくんってロリショタっぽく見えておっきぃんだよぉ~っ? 生であの形を味わいたいじゃ~んッ!』
『サラっ、今度型取りするからオナ禁3日っ! 良いなっ!? わかったなっ!?』
「モテモテじゃねぇかっ。妬けるねぇ~っ」
「勘弁してよ……」
離れたテーブルで肉肉肉肉更に肉を喰い散らかす3人娘の熱視線。
現役の娼婦でもある彼女達は、若々しく瑞々しい肉体を性欲のまま奮わせる。襲われかけたのは両手両足の指より多く、媚薬を盛られたのも100回以上。豊満な乳房に何度も屈しかけ、その度に踏みとどまって耐えてきた。
僕が欲しいのは、専用のエッチな女体。
信念が陰りかねないので、手に入れるまで生身エッチはなしです。