4 ポイント
1週間くらいすると、ムムニイもミウムも採集のコツが分かって戦果が上がるようになってきた。
その日は朝からマイケルの姿が見えなかった。マイケルは自然保護区の入り口を見に行くのが日課になっていたが、それはだいたい午後からだ。
ソーラー車から放り出されて途方に暮れているサバイバーズベイビー世代の人がいないか、探しに行くのである。
多くの場合、ムムニイたちと同じように「意識のデジタル化」についての知識が乏しいままに肉体側を再覚醒させてしまい、「放棄」を選べないままここまで連れてこられるケースである。
放っておけば、ジョーモン・テクノロジーの知識のない彼らは、1週間と保たずにのたれ死んでしまう可能性があった。
しかし、朝からいないのはムムニイたちがここに来てから初めてのことだ。
「たぶん、資材を漁りに行ったんでしょう。」
とカラムが言った。
「資材?」
「ここからかなり距離はあるんですが、まだ『廃墟』のままで、全ての素材が回収されていない地区があるんです。そこへ、ここで使えそうなモノを探しに行くんですよ。
いずれ全部『回収』されてしまうんですが、まだ今ならポイントをほとんどアップさせないで持ち込める資材があったりするようです。釣り針の材料になる針金や、その他の金属部品なんかです。」
ああ、それで——とムムニイは納得した。あの釣り針はジョーモン・テクノロジーの範疇に入るんだろうか?——と不思議だったのだ。
製鉄技術がジョーモン・テクノロジーに入るとは、とても思えない。それはエネルギーを使いすぎる。
「金属を作るのはポイントが大幅にアップしてしまうので無理なんですが、有るものを利用する分には『廃棄』して環境負荷を与えない限り、アップしないんです。
もともと金属は時間をかけて環境中に還元されてゆくものですから、『廃棄』も十分な期間使用した上でわずかずつするのであれば、ポイント加算には至らないらしいですよ。」
カラムは1ヶ月先輩として、知り得たことをムムニイに教えてくれた。
「要は消費エネルギー量なんです。自然保護区の生態系を維持できる消費範囲に収まっているかどうか——が問題なんであって、ジョーモン・テクノロジーと言っても『技術の種類』じゃないんですね。我々は2万年前の人類と違って、21世紀の『知識』を持っていますからね。」
それからカラムは、ちょっと申し訳なさそうな顔をして言い添えた。
「ただその見極めは、今のところマイケルでなければ無理なんです。これは彼の仕事なんですよ。他の人では、首筋のカウンターの数値を大きくアップさせかねない。」
そのマイケルは夕方頃、片手に妙なものを抱えてコミュニティに帰ってきた。
「いやあ、こんなものがまだ手に入るとは思わなかった♪」
にこにこと上機嫌である。
抱えているのは何やら銀色に輝く雨傘みたいなものだった。皆が興味津々で近づいてくる。
「なんですか、それは?」
「何だと思います。」
マイケルは嬉しそうにそれを広げて組み立ててみせた。
「ソーラークッカーだ!」
「大丈夫なんですか!? そんなもの持ち込んで。」
「お湯が沸かせるから、ティータイムがやりやすくなる。」
「いや、そうじゃなくて——。ポイントですよ!」
クルムがマイケルの首筋を覗き込んだ。
「13ポイントにもなってる!」
それを聞いてマイケルがちょっと苦笑いをした。
「さすがにアルミシートはまずいかな——とは思ったんだけどね。思ったより上がってないね。」
マイケルはよくこうして「資材」を拾ってくるので、いつも他の人たちよりもポイント数が高く、5〜7ポイントあたりで推移している。他の住人は、マイケルの計算のおかげでおおよそ±0前後だ。
エネルギーの使用制限量を大きく下まわればポイントは減りもするから、常に加算され続けるわけではないのだが、それにしたって50ポイントでチップはパチン、といくわけだからプラスポイントはなるべく低い方がいい。
それでなくても、冬場は薪を使うので全員のポイントが上がり続けるのだ。気候のいいうちにマイナスにしておくに越したことはないのである。
「大丈夫。捨てなければポイントは上がらないし、これで調理すれば薪類を使わなくていいから、ポイントは下がっていくよ。それを見越しての拾い物なんだ。」
そう言って、マイケルは笑顔で肩をすくめて見せた。
「しばらくは、私が加熱調理をやらせてもらってもいいかな?」




