八百屋
営業2日目だ。張り切って頑張ろう。
そう思って、黒板を店先に出すとお客が来た。
スキンヘッドで筋肉質なおじさんだ。ちょっと怖い。。
「そこの八百屋だが、商品になるかギリギリの鮮度の物を買取して欲しい」
この店は市場に近い。食堂も多いので食事には困らない。
腐ってしまった野菜を棄てるのに心が痛むらしい。
小学校でフードロスについて習ったがそれのことだろう。
「すぐにそのままお引き取りするのは難しいですが、何か出来ないか考える時間を貰えますか?」
「ああ、出来れば僅かでも金が貰えると嬉しい」
そう言うと去って行った。
「キーラ、何かアイデアはある?」
「思いついたのは孤児院への寄付ですがこれではお金にはなりません」
最悪、食材を無駄にしなくて済むからありだ。
「加工するのはどうかな?漬物とか」
「塩漬けですか?悪くは無いですね。一般的に保存食として利用されてますから。ただ、量が多かった場合は、すべて塩漬けするのは難しそうですね」
私たちが考えることくらいは八百屋さんも考えたはずだ。新しいアイデアが無いか悩む。
そういや、お母さんが毎朝野菜ジュースを飲んでたのを思い出す。健康が大事とか肌に良いって言ってた気がする。余り聞いてなかったけど。
作るならミキサーがいる。この世界にあるのだろうか?キーラに聞いたら見たことはないが作れそうな人は心当たりがあるようだ。
午後はお店をお休みにして、職人のところに出向いた。ドワーフがいた!初めて見るファンタジー世界の住人に驚いた。
「トーマスだ。キーラ久しぶりだな」
キーラは私を紹介して、商品アイデアの説明をしてくれた。
「面白いアイデアだな。これは需要が出そうじゃないか」なんかやる気になってくれている、良かった。
私たちは試作を繰り返して1週間くらいで完成させた。最初の日以外はトーマスさんが店に来てくれた。
動力は魔石で電気と同じ役割を果たしている。
商品の開発特許は3人連名でトーマスさんが手続きしてくれると言っていた。この世界にも特許があるんだ。
代金は試作品だから材料費だけでいいと言われて払った。ミキサーを持ち帰ってレシピを考える。
キーラとの試行錯誤の上、3つを完成させた。
・黄色のジュース キャベツやパイナップルなど
・赤色のジュース にんじんやりんごなど
・緑色のジュース 小松菜やほうれん草など
自信作が出来たので、八百屋さんに来てもらい説明して、ジュースを飲んで貰った。
「嬢ちゃんたち凄いな。客寄せにも使えるよ」
いい評価をいただいた。良かった!
八百屋さんも自分でレパートリーを考えたいと張り切っている。
「このミキサーを譲ってくれないか。もちろん、代金は払う。この3つのジュースのレシピ代も売ってくれ」
最初に相談されたお題がすべて解決したかは分からないが喜んで貰えて何よりだった。買取はできなかったが。。