王都パシュパティ
コゼットはヴェクス王国の王都パシュパティに向けて馬に乗っていた。グランベルンから2〜3時間くらいなので荷物が少ない場合、馬車より普通に馬に乗った方が快適で早いのだ。
天気は快晴で少し肌寒いが澄んだ空気を気持ちよく感じていた。
道幅の広い道路が整備されていて、製品を運送している馬車がたくさん通っていた。
道が平らなので、パシュパティは早くから遠目に見ることが出来た。とは言っても、他の都市より高いグレーの城壁の4隅に塔のような赤い屋根が見えるだけだ。
城内に入るために並ぶ列が凄く長い。馬車で来なくて良かった。コゼットは列の横を馬で駆け抜ける。
城門で勇者の印を見せて、中に入ろうとしたら衛兵から呼び止められた。
「ちょうど目の前にいる馬車にヴェクス王国が誇る勇者デメトリアス様がいらっしゃいます」
親切で教えてくれたんだろうけど、どうしよう?無視はまずいよね。
「エスクバードの勇者コゼットと申します。デメトリアス様にご挨拶の機会をいただけますでしょうか」
コゼットは前の馬車に近づいて、馬車に向けて話しかける。
馬車から茜色の長髪に細身で長身な男性が降りてきた。リアムくらいの年かな?
「エスクバードの勇者が2人になったのは聞いていたが、女性だったとは。デメトリアスだ。リアムとは旧知のなかで何度も一緒に戦ったことがある仲だ」
握手しながら自己紹介してくれた。
「そうでしたか、どうぞよろしくお願いします」
「しばらくはここに滞在するので何かあれば城まで来ればいい」
軽い挨拶で分かれた。トラブルにならず良かった。
グランベルンでオススメされていた宿屋にチェックイン出来た。ベッドでゴロゴロくつろいでいる。馬に乗って疲れた。ゆっくり休憩して、夜から動くことにした。
◆
無性に肉が食べたくなって串焼きの店に入った。
さすがに1人客はいないが気にしない。冷えたビールを片手に食べていると、近くの客の声が聞こえてきた。
「最近、工業都市テクニークに仲間の多くが移って寂しいな」
こんなに栄えてる街なのに出て行く人が多いんだ。
「長雨の影響が農作物に出てて価格が上がって困るよな」
毎日買う物の値上がりは確かに影響がある。
ん?なんかあの角で飲んでる2人組がコソコソしてて怪しい。
アンクレットの力を借りて聞いてみる。
「堤防に細工をして上手く川の水を畑に誘導してくれた。でかしたぞ。奴も素直に畑を売っておけばこんな目に遭わずに済んだものを」
「成功報酬はちゃんと出るんだろうな」
「当然だ。クインシー様は今頃この影響で野菜の価格が上昇してボロ儲けのはずだ」
なんだこの会話は。ご飯がまずくなるじゃないか。
捕まえても証拠がない。仕方ないので聞くのを止めた。
変な話を聞いたので気分良く酔えない。
この街にも寺院があるか散歩することにした。
街の規模はキングエスクバードに似ている。少し横幅が広いかな?大きな劇場があるのは特徴の1つだ。
馬車を止めるスペースがとても大きい。内陸部だからかな?
暗いからか寺院は見つからなかった。
別の酒場に入って、情報収集してからこの日は宿屋に帰ることにした。




